29)愛・地球博(2)

[JA2AC愛・地球博を行く]

村松さんは交信した国のQSLカード、パビリオンのパンフレット、館長のサインを台紙に張リ85ヶ国を揃えた。写真はその一部

博覧会会場で村松さんは、もう一つ村松さんらしい活動を行った。開幕前にPR交信をして受け取ったQSLカードをもって、交信相手国のパビリオン(出展館)を回り、挨拶することを企画したのである。村松さんらしいのは単に挨拶して回るだけではないことである。QSLカードとその国のパビリオンのパンフレットを同一台紙に張り、来館記念のスタンプを押してもらい、なおかつパビリオン館長のサインをもらっている。

館長が留守の場合もあり外国館への訪問は延べ約250回。300人以上の外国人に会った。そして、7月下旬にようやく展示ブースがオープンした南アフリカのチャド共和国を最後に85ヶ国の訪問が終了した。その結果について村松さんは「残念なことに、QSLカードを見せて、アマチュア無線の話しをしても最初はほとんど理解できないことである」とがっかりしている。

「アマチュア無線を知っていた館長やアテンダントは、85ヶ国中、ただ一人。アジアの1ヶ国のみだった」と言う。時間をかけて説明した揚げ句、返ってきたのは「ああ、放送局の番組交換ですね。ご苦労様」という国もあった。「愛・地球博」を通して村松さんの心境は「悲観9割のどん底。限りなくハムの世界の未来は暗い。社会の底辺に沈み込んでいくのでは」と、寂しげである。

[ぜひ来てください]
「それでも楽しいこともなくはなかった」という。QSLカードに写っている風景を見て「あつ、これは私の住んでいる家の近くです」と急にホームシックにかかってしまうサモアの女性ガイドもいる。カードに書かれている土地名を話しても「そんな場所は無い」と言い張るイタリアのコンパニオンもいた。村松さんが後で調べてみると、通常の地図には出ていない無人島であることが分った。「知らなかったのも無理が無い」と得心したと言う。

ネパール館では「ぜひネパールに来てください」と言われた。いくつかのパビリオンではアマチュア無線の説明を聞き「面白そう。免許をとったらできるんですね。国に帰ったら早速勉強して免許を取ります」という職員やコンパニオンも少なくなかった。「そう言うことを聞くとうれしいですね」と村松さん。


ロボットステーションで案内するアテンダントの女性ロボット

村松さんのこの活動のキ―ワードは「われ等地球人」である。世界の多くの国と交信し、そのカードを持参して交友を深める。「国という境は無い。皆一つの地球の一員という考え」と説明する。この活動の目的は、博覧会閉幕後に名古屋市内や周辺で作り上げた台紙を並べた展示会を行うことにある。「会場に出かけた人が,閉幕後にこれを見て懐かしく思ってくれたら楽しいでしょう」と言う。

[ロボットシアター]
今回の「愛・地球博」では、ロシアで掘り出されたマンモスとロボットが人気を二分している。6月に開催された「ロボット週間」には65種類のロボットが競演した。2020年の実用化を目指し、各産業界が緻密に連携を取りながら開発に取り組んでいる様子がわかる。

村松さんはその開発の方向について「相手の画像、音声を認識し、一緒に会話をしたり、歌を歌ったり、ゲームをしたり、つまり人間とロボットの共存する社会生活の実現にある。しかも、通信技術を利用することによりその範囲は飛躍的に広がるだろう」と分析している。会場入り口にある3人娘と、ロボットステーションにいるアクトロイドの4体のロボットの人気が高いと言う村松さんは「2020年はもう私の世界ではないが、世の中がどんな風に変るのか楽しみよりもむしろ恐ろしい」と感想を語る。


グローバル・コモン5建物内を案内する「WAKAMARU」君。ちなみに左右の子供は本物です

[村松さんの感慨]
JARLの記念局8J2AIのすぐ隣りにもロボットシアターがある。昭和45年(1970年)に大阪で開催された「大阪万博」に出展されたロボットー当時は時代の最先端の技術で作られ、故手塚治虫さんのアイディアを生かしたロボットー6体が生き永らえて、元気に演奏している。「あまりにも古典的であり、縦、横、上下、左右の直線的な動きは見る人を大昔に帰させるに十分である」と村松さんは感じた。

そして「35年前のハム生活に重ねてしまった」と言う。そのころ村松さんは「スワンSSB」の無線機と八木アンテナでQSOしていた。「今、私にどれほどの進歩があるだろうか。少なくともQSOだけについていえば10年1日の如く単なる繰り返しの日々でしかなかったか。もはや、私自身過去の遺物にしか過ぎないのだろうか」と村松さんはロボットの劇的な進歩を目の当たりにして感慨にふけってしまった。

会場内のJARL記念局コーナーでは子供たちのための科学実験工作教室も行われている。また、月に1回ではあるが「小型サッカーロボット体験教室」も開催され、子供達の関心も高い。交信では南極にあるアマチュア局との交信や、小中学生による国際宇宙ステーションとの交信「ARISSスクールコンタクト」などはマスコミにとって格好の話題である。