技術トピックス:好奇心や探求心から生まれる新技術

アイコムは、なぜ画期的な新技術、ユニークな製品を継続的に生み出すことができるのでしょうか。それは、売れる製品だけを追求するのではなく、時には技術的興味や好奇心、探求心から研究、開発を進めているからです。

企業は、日々、売れる商品を生み出すために技術開発を続けています。アイコムは、それだけではありません。時には目先の利益へのこだわりを捨て、将来を見据え、興味や好奇心、探求心から技術開発を突き進めることがあります。その結果、数々の要素技術を獲得し、画期的な新技術が生まれ、アイコムならではのユニークな製品が次々と誕生しています。

このようにして生まれた製品は単体では、開発費を含めた収支がマイナスとなることもあります。しかし、そこで生まれた技術やノウハウは、確実に他の製品へと展開されます。

アイコムはアマチュア無線機器、陸上用無線機器から、海上/航空用無線機器、ネットワーク機器まで製造する、世界に例を見ない無線通信機器の総合メーカーです。ある分野で生まれた新技術を、他の分野へ効果的に展開できるのが、アイコムならではの特長です。製品単体で利益を追求するのではなく、1つの要素技術/新技術を多角的に展開することで、トータルで収益へつなげることができる。これこそが技術集団、アイコムの最大の強みなのです。
 

アマチュア無線から広がるビジネスチャンス

ここでは、アイコムが世界に誇るアマチュア無線機の開発から生まれた要素技術/新技術が、業務用無線機に展開された例を中心にご紹介します。

今やアマチュア無線のデジタル通信の世界標準となっているD-STAR。その始まりは、平成10年(1998年)。郵政省(現在の総務省)から、日本アマチュア無線連盟(JARL)が技術の調査についての委託を受けたことからスタートしました。

この技術調査に必要な機材の入札は国が主導しており、どのメーカーでも公平に参加できるものでした。しかし、入札に参加したのはアイコムだけでした。その理由は、明確で、莫大な開発費を考えると、採算が合わないのは目に見えていたからです。

採算が合わないことがわかっているプロジェクトにアイコムが投資した理由。それはアマチュア無線だけでなく、無線通信の未来を見据えていたからです。加えて、デジタル化という新しい世界に、技術集団としての興味や好奇心、探求心が掻き立てられたことも大きな理由の1つでした。

この採算を度外視したD-STAR開発の取り組みから得られた信号処理技術でありアナログ回路のデジタル化の要素技術とノウハウは、のちに訪れる業務用無線機の本格的なデジタル化において、アイコムの大きなアドバンテージとなりました。そして、ご存じの通り、デジタル簡易無線機、IP無線機等の分野において、アイコムは業界をリードする存在となりました。
 

ID-1(2004年)

JARL(日本アマチュア無線連盟)推奨のデジタル通信方式D-STAR対応を実現した初代モデル。インターネットと同じプロトコルによりやりとりできる新しい形の通信方式を採用。

|D400(2006年)

業界初、LAN/VPN接続して通信する、新しいコンセプトのデジタル無線システム。
IPネットワークに接続した通話エリア拡張方式。従来の特定小電力トランシーバーでは考えられなかった広域ネットワークを実現した。

|DU55C(2008年)

業務用無線機デジタル時代の幕開けを告げる、国内初の携帯型デジタル簡易無線機。
 

その他、アマチュア無線機IC-77/707のPLL回路に採用されたDDSをHFマリン機IC-M710へ展開。同じくアマチュア無線機IC-7300に採用されたダイレクトサンプリング方式をHFマリン無線機IC-M803に搭載しました。さらに、アマチュア無線の1200MHz帯における通信技術とノウハウを、無線LANのビル間通信にも展開するなど、多くのアマチュア無線発祥の技術が、業務用通信機器に転用されています。

2023年、世界初のSHF帯をカバーするアマチュア無線機IC-905を発売しました。SHF帯は技術的にも未知の世界であり、ユーザーは少なく、製品化しても採算がとれる保障は全くありませんでした。しかし、高周波数への興味と探求心からIC-905の開発は進められました。発売後も、24GHz帯のトランスバーターの開発など、SHF帯の研究と探求は続いています。

スマートフォンやタブレット、無線LANの普及、サービスの多様化により、現在も、無線利用のトラフィックは増大し続けています。その結果、増大するトラフィックを収容するため、新しい周波数帯を開拓していく必要に迫られています。第5世代移動通信システム(5G)や衛星通信/HAPS、無線LAN、IoT、次世代モビリティを対象とした新たな無線性能の実現には、新しい周波数帯を活かす技術が必要なのです。

アイコムは、この新しい周波数帯において、アマチュア無線機IC-905の開発で培った技術とノウハウを、業務分野における次世代通信への転用を進めています。その1つがSHF帯を利用する機器を開発する際、必須となる24GHz帯用キャビティ型バンドパスフィルターです。すでに、SHF帯のビジネス利用を展開する企業から注目を集めるなど、SHF帯トランシーバーIC-905の製品化、24GHz帯用キャビティ型バンドパスフィルターの開発により、高周波技術のアイコムの名は従来の枠を越えて多くの企業に浸透し始めています。アマチュア無線機IC-905の開発から生まれた高周波技術は、第5世代移動通信システム(5G)や衛星通信/HAPS、無線LAN、IoT、次世代モビリティをはじめ、多くの高周波数活用においてビジネスチャンスの拡大につながっていくことが期待されています。