トップメッセージ

無線機でなければならないコミュニケーションを支える

携帯電話が普及した現代にあっても、私たちが生み出す「無線機」に対するニーズはなくなりません。役割が異なるからです。
電話は、1対1の通話にはたいへん便利なツールです。しかし、一度に多くの人に音声で情報を伝えることはできません。無線機なら、一瞬です。おたがいの電波が届くエリア内なら、たとえ1万人であってもすぐに声を伝えられます。
また、2011年の東日本大震災では、あらゆるものが失われました。携帯回線をはじめとする通信インフラも例外ではありません。見渡す限りの「圏外」のなかで、命をつなぐ情報のやりとりを支えたのは中継局も電線もいらない、無線機でした。
必ず無線機でなければならない。私たちは、そういう場面のコミュニケーションを支える製品をつくっているのです。

無線機もビジネスも、進化する


もちろん、必要だからそのままでいいわけではなく、携帯電話が進化するように、無線機も進化しなければなりません。アイコムは、IoTという言葉が一般的でなかった1990年代から無線LANにまつわる製品を手掛けています。ネットワークやIP技術に対する知見はそのころからの蓄積です。アイコムの中核技術であるRF(高周波)技術を芯に、これらの新しい技術をどん欲に取り入れ、これまでにない製品を生み出しています。たとえば、携帯電話の通信網を使ったLTEトランシーバー、衛星回線で通話する衛星通信トランシーバーを開発し、混信や通話範囲の問題を解決しました。
急速に進むデジタルトランスフォーメーションの流れやIoT化の波は、事業環境も大きく変えてきています。アイコムでも、MVNOとしてLTEトランシーバーなどのサブスクリプションサービスを提供する新しいビジネスが、収益の柱のひとつとなりました。

アイコムの強みは、卓越したRF技術とMade in Japan。

アイコムの技術的な中核要素はRF技術です。RF技術の粋であるアマチュア無線もそのひとつです。アマチュア無線では、デジタル通信をD-STARという規格でほかに先駆けて実現しました。その技術は、じつは業務用無線機の進化にも大きく貢献しています。たとえば、業務用無線のIP化実現に役立ったのは、D-STARの開発で得られた技術や発見でした。製品ジャンルの垣根を超えて技術を応用することは、当社の強みのひとつです。

その一方で、当社は無線機専業メーカーであることにこだわっています。家電メーカーのように、多領域・多品種に渡る製品は扱いません。無線機のエンドユーザーとの対話を欠かさず、業界の本当のニーズを知り新しい製品につなげる。RF技術に特化したものづくりにリソースを集中することが、成長につながると考えています。

また、創業時から約60年にわたり、Made in Japanを堅持していることも強みです。開発者、生産技術、生産現場のスタッフが、同じ言語で、同じ国内で、出荷にいたるまでの最初から最後まですべての工程を完結させています。高品質で精度の高いものづくりができる秘訣です。

ものづくりのあり方も進化させる

また、ものづくりのあり方も進化させます。将来の労働人口の減少や高齢化を見据え、工場にロボット生産の仕組みを導入しました。すでに、100万台以上の無線機がロボットラインで生み出されています。また、自社で5Gゲートウェイを開発し、IoT化を進めたスマートファクトリーの構築にも取り組んでいます。 新しい工場モデルを確立し、生産を自動化するノウハウを販売するようなビジネスの可能性も 模索しています。

さらに大きく羽ばたくために

商品戦略としては、現状、陸上業務用無線の売り上げがもっとも大きいですが、多様なジャンルでの展開を考えています。とくに、IP製品への取り組みをより強化し収益の拡大につなげたいと考えています。そのため、人材面においても、ソフトウェアエンジニアの増員は不可欠です。しかし、優秀な人材の獲得競争はますます激しくなっています。そこで、通常の採用活動に加え、海外の子会社を含めた人材の活用や、M&A 活動も検討しています。また、世界戦略としては、アメリカ・ドイツ・スペイン・オーストラリアなどを起点とした近隣諸国への拡大も考えています。
無線機そのものに対する市場は、ほかのコミュニケーションツールの登場によって縮小していることは確かです。しかし、それは必ずしもマイナス材料ではなく、競合の淘汰にもつながっています。必要とされるシーンのニーズに応える製品を供給し続けることができるアイコムは、このような状況下でも成長しつづけることができると考え、中期経営計画では、380億円という売上目標を立てています。

アイコムをひとつに。「One Team, One Plan, One Goal」。

私は「One Team, One Plan, One Goal」というコンセプトを推し進めています。アイコムアメリカがあるシアトルに駐在していたころの友人で、フォード社の元社長兼CEOのアラン・ムラーリー氏が掲げた「ONE FORD」にヒントを得たものです。企業理念「コミュニケーションで創る楽しい未来・愉快な技術」の実現に向け、あらゆる垣根を越え、国内外のアイコムを支えるすべての人々をひとつの思いのもとにまとめること。それが私のミッションだと考えています。