熊本高等専門学校の学術研究をアイコムが無線通信機器でサポート

アイコムは、「高専ワイヤレスIoTコンテスト2022(WiCON2022)」にエントリーしている熊本高等専門学校(以下、熊本高専)を無線通信機器でサポートしています。

「高専ワイヤレスIoTコンテスト2022(WiCON2022)」とは、全国の高等専門学校の学生を対象に、独創的なアイデアにより、地域における電波の有効利用促進に取り組み、地域課題の解決や新たなサービス創出を図るアイデアを公募するものです。

熊本高専では入江教授と、主要メンバーの学生4名+サポートメンバー4名が「防災杭・漂流ブイ用の極低速データ伝送デジタル無線通信装置の開発」をテーマに、アマチュア無線の低速デジタル伝送方式FT8を使った通信実証実験に取り組まれています。

学生の皆さんは、「WiCON2022は外部へ自分たちを研究成果の発表できる、さらに他の学校の研究についても学べる良い機会。きちんと発表ができる成果を上げて、受賞もできるよう頑張ります」と力強くおっしゃっています。

FT8を応用した極低速データ伝送デジタル無線通信システム

きっかけは2016年の熊本地震。当時、強い揺れにより地すべりが多発し、多くの危険な斜面が生じました。そこで、環境モニタリングIoT機器(斜面にセンサー)を設置し、そのデータを収集・分析する「斜面監視型の防災情報システム」の開発に企業と協力して取り組まれたそうです。しかし、十分なS/N比が確保できない環境におけるデータ通信に、いくつかの問題があることを発見。S/N比が悪くても環境IoT情報が伝送できる通信方式の必要性に気づかれました。

そこで、入江教授が着目されたのが、アマチュア無線で人気の低速デジタル伝送方式FT8。低速ではあるものの、S/N比が悪くても通信が可能なFT8は環境モニタリングIoTへの応用ができると考え、今回の提案に至ったそうです。環境モニタリングIoT機器からのデータを限定することで、FT8のような低ビットレートデータ通信でも、問題を解消できます。

IC-705を活用した通信実証実験

アイコムでは、多くの熊本高専の卒業生が、技術者として働いています。その関係もあり、今回の通信実証実験での機器の提供が実現しました。実験は様々な周波数、環境で実施する必要があります。そのため、HF~430MHz帯をカバーし、軽量&コンパクトで充電池の使用ができる、機動力の高いIC-705が選ばれました。

当初、アマチュア無線の免許を所有していたのは入江教授のみで、他の学生たちはアマチュア無線やFT8についての知識が無かったそうです。そこで、まずFT8についての調査を始めました。その後、ソフトウェア<WSJT-X>のインストール、IC-705との接続を行い、Raspberry Piを使った環境の構築を実施。現在は、アマチュア無線の免許を取得できていないメンバーも多いため、電波暗室での通信実験を中心に取り組まれています。また、メンバー全員が、アマチュア無線の免許取得を目指しているそうです。

減災・防災に役立つ新たな無線通信システムの開発を目指して

今後の通信実証実験では、FT8で極低速デジタル通信の可能性と問題点を探り、ソフトウェアのソースコード改良を重ねていく予定とのことです。十分なS/N比が確保できない状況下でも安定した通信ができる、減災・防災に役立つ新たな無線通信システムを開発することで、社会に貢献したい、という想いのもと通信実証実験は続いていきます。

なお、2023年2月末まで実証実験が行われ、同年3月に表彰審査(プレゼン大会)、5月に成果発表・展示会が開催されます。

技術の発展には、柔軟な発想に基づいた多彩な研究が不可欠であり、それらを支援することは弊社の重要な使命の1つだと考えています。未来を担う若い技術者の育成、研究開発の活性化を図るため、アイコムは、教育機関における学術研究を支援し続けます。

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