デジタル化の背景 

アマチュア無線のデジタル化である「D-STAR」は、音声通信とデータ通信をデジタル化して通信するもので、今までのアナログ通信よりアプリケーションの面でも柔軟性に富み、技術的にも興味あるシステムです。概要を図1に示します。

図1 システムの概要

このシステム特徴を挙げてみますと次のようになります。

データ通信はインターネットとの整合性があってインターネットやサーバーに接続でき、インターネットで使えるソースがそのまま使えます。

音声通信はリアルタイム性があり、従来のアナログ無線機と同様な通信ができます。音声と同時に短いデータも載せることができます。

データ信号と音声信号を多重化して幹線系で他のレピータに中継できます。このため、従来の中継エリアを越えた通信が可能です。

アマチュア無線のデジタル化の方向 

世の中全体的にデジタル化が進み、ほとんどの製品やシステムがデジタル化を目指しているのはよくご存知の通りです。このような状況で新たな技術を取り入れ、今までと変わったアプリケーションが使えるようなアマチュア無線のデジタル化が今回ご紹介するシステムです。

最初に、このようなシステムに必要な技術をできるだけ分かり易く解説し、システム全体の概要を紹介したいと思います。

まず、アマチュア無線のデジタル化に関して、どのようなことを目標とするのか整理したいと思います。

通信システム 

デジタル化した無線システムと言うと一番身近にある携帯電話のシステムがありますが、このようなシステムはアマチュア無線にふさわしいでしょうか。

一般的にデジタル化したシステムはアナログ通信と比べてコントロールしやすい関係で効率よく無線局を並べることができます。単純に言うと時間的に並べる方法をTDMA(Time Division Multiple Access) と言い、周波数的に並べる方法をFDMA(Frequency Division Multiple Access) と言います。また、少し異なる方式として携帯電話で有名になったCDMA(Code Division Multiple Access) と言う方式もあります。これらの方式はユーザーが使用する端末側から呼び出したり、応答したりする場合に必ず予め設定されたタイミングや周波数に載せる必要があります。もし、そのような手続きに従わないと既に行われている通信に混信を与え、システムとしての動作ができなくなります。

TDMD方式

FDMA方式

携帯電話やMCAのようなシステムでは、予め購入時にその端末の識別符号等必要な項目を登録してシステムの中に組み入れるようになっています。従って、システムより端末を見た場合には全てがコントロールされたシステムと言えますが、携帯電話等では通信目的が決まっていてこの方が便利であると言えると思います。

アマチュア無線でこのように完全にシステムに組み入れたものがふさわしいでしょうか。アマチュア無線では、製造メーカーしかできないような難しいものではなく、一般のアマチュア無線家が製作可能であることも必要な条件と思われ、また、インフラの整備が整わなければ実用的に使用できない電話のシステムのように、インフラの整備を一斉にすること等困難と思われます。

また、周波数もユーザーが任意に変えることができないような完全に組み込まれたシステムではアマチュア無線として面白くなく、既にパーソナル無線でそのような不具合は経験済みと思います。従って、アマチュア無線として柔軟性に富み、その上システムとして動作するような方向を考えるべきだと思います。

まとめ

    ・一般のアマチュア無線家でも製作可能なこと
    ・端末がシステムに厳しく拘束されないこと
    ・インターネットとの整合性があること
    ・単独の1システムでも動作し、インフラが順次増設可能なシステムであること
    ・アナログ系等従来のシステムとも通信の可能性があること