インターネットとの整合 

ご存知の通りインターネットが生活の一部にまでなりつつある今日、アマチュア無線もインターネットとの親和性が必要です。インターネットのTCP/IPのプロトコルがそのまま使えるようにすれば、多くの興味ある情報ソースが使用できます。インターネットと同等にしておけば仮に改良やバージョンアップがあってもインターネットに追従したシステムが使用でき、アマチュア無線独自にプロトコル等メインテナンスをかける必要がありません。

無線通信そのものはアマチュア無線であり、この部分でのやり取りを決めるプロトコルは必要最小限のできるだけ簡単にすべきで、仮にアマチュア無線独自の高度で複雑なプロトコルを考えても、このようなものは必ずバージョンアップのメインテナンスが必要となり、継続したメインテナンスは困難を伴うものです。

システムの概要図で示すように、ネットワーク内にインターネット網を接続するとインターネットが使えますし、サーバーに接続すればサーバーを通した通信が可能です。インターネットと同様に画像通信も可能ですが、動画を送るとスムーズに送るためには高速の伝送路が必要となり、システム全体としては少し制限を受けると思います。しかし、静止画は問題なく通信できるものと思われます。

また、音声通信でもデジタル化した音声データをサーバーに記憶しておいて、後からアクセスすると留守番電話のような使い方のボイスメッセージもできると思います。従来より使われているアナログFM通信や、パケット通信、RTTY、SSTV等もレピータにインターフェースをつけることで技術的に通信可能です。

音声通信のリアルタイム性

インターネットが使用できれば音声通信も一緒に使える筈ですが、音声通信は基本的にリアルタイム性が必要で、データ通信と一緒に扱うとリアルタイム性を保持することが困難となり、図1のように音声の途中でデータ信号が入ると音声が分離されます。また、リアルタイム性を保持するとデータ信号に時間的制限が加わるため全体的な効率が悪くなり、音声信号とデータ信号を別に扱った方が有利になります。

インターネットの技術でVoIPと言う方法があり、インターネットを使いながら普通の電話と変わらない方法ですが、これはアマチュア無線のように通信する二つの端末の間に通信路が一つしかないような場合は適用が困難と思われます。

図1 音声のリアルタイム性

リアルタイム性とは、こちらの呼び出しに対してすぐに返事が返ってくることで、テレビ等で海外からの中継の時、こちらからの呼び出しにすぐに応答できず一拍して返事をするようなのはリアルタイム性が悪い例で、古くはアメリカのアポロ計画で月と交信した時、呼び出した後、返事が返るまでに2秒以上もかかっていました。このため送信の終わりが分かり易いように「ピッ」と言う音を入れていて、アマチュア無線でも暫くこの「スタンバイピッ」が流行りました。音声信号とデータ信号を一緒に送ると、ちょうど長いデータ信号を送り始めた時には、そのデータを送り終えるまで音声信号を送ることができず、呼び出しに対する応答が遅れることになります。

音声通信はデジタル化してもデータ通信に比べて狭帯域にすることができます。音声通信とデータ通信では通信の仕方も少し異なるので、音声信号とデータ信号を別に送るとリアルタイム性の問題も解決でき、この方が効率よく送れます。また、インターネットのプロトコルを使って音声通信もしたい人はリアルタイム性を我慢すれば通信ができる、これを使っては通信することもできます。

中継方法

デジタル化した通信は携帯電話とは異なり、端末-端末間のレピータを経由しない通信ももちろん可能です。

システムの概要図に示すRepeater Siteはそのレピータの中継範囲であるローカルエリア向けとして、音声通信用に音声系端末用中継局、データ通信用にデータ系端末用中継局があります。また、Repeater Site間を接続する幹線系中継用中継局(Main stream、backboneとも言う)があり、図2のようにこの3系統の中継装置でRepeater Siteは構成されています。もちろん、必ずしもRepeater Site間を接続しなければならない訳ではなく、単独に山上に中継局を上げることは可能です。

図2 Repeater Siteの構成

Repeater Siteは山上の有線の通信回線が引き難い場合も多く、このような場合は、通信回線またはサーバーを設置した場所と幹線系の通信で繋ぐこともできます。また、山上では電力線(AC 100V)も引き難い場合もあり、太陽電池での運用もできるのではないかと思います。