幹線系のレピータは音声通信とデータ通信の両方の信号を多重化して一緒に送らなければなりません。また、音声通信もデータ通信も周波数を変えた複数のレピータを増設できるようになっているため、図1のようにこの増設分全ての信号を多重化する必要があります。

図1 レピーターサイトの構成

音声通信はリアルタイム性の確保が必要な条件であることは既に説明した通りですが、このリアルタイム性を保つためには、幹線系でも多重化した音声信号は一定周期で送り出す必要があります。

一方データ信号は必ずしもリアルタイム性を必要としないため、一定周期で送っている音声信号の間に挿入すればいいことになります。図2のように音声信号は、G723.1方式のCODECでは30mS毎に送ることになっていて、その間にデータ信号を挿入できます。

図2 音声信号とデータ信号の多重化

音声信号が1局の場合はこの図のような多重方式でも問題ないのですが、データ信号はデータフレーム長が46~1500バイトと可変長であり、音声通信が多数になるとデータ信号の挿入する場所に制限を受けたり、音声信号を挿入できなくなったりしてしまいます。

つまりこのような方法で多重化すると、結果的には時間的に無駄な隙間の多い中継信号になってしまいます。これを改善するため、D-STARではATM (Asynchronous Transfer Mode) 方式を採用しています。

ATMは図3に示すように5バイトのヘッダと48バイトのデータ構成の短いパケットとなっていて、ヘッダ部で優先度を指定できるため、一定周期で送らなければならない音声信号も優先度をつけて無駄なく送ることが可能です。長いデータ信号でもATMの短いパケットに載せ替えて送り、優先度の高い音声信号を割り込ませて先に送ることができます。

図3 ATMのパケット構成

このATMのパケットの送り方は結構複雑で詳しく説明すると長くなってしまいますのでその概略を図4に示します。このような形で送られて来たATMのパケット信号は受信側で元に戻され、優先度のある音声信号では一定間隔になるよう配置されるため、リアルタイム性のある音声信号を復元できます。

図4 ATM方式の送り方

一つのレピータサイトは図5のように音声系とデータ系のような端末系のレピータは最大4台まで増設できることは既に述べた通りです。

また、幹線系のレピータは最大2回線接続することができます。幹線系は10GHzや5.6GHz帯のように周波数が高く、パラボラアンテナのような指向性の鋭いアンテナが使えるため、回線間のアイソレーションは比較的簡単に得られます。

図5 レピーターサイトの構成と接続

図5の青色枠は必要最小限の基本的構成を示しています。