これまでアマチュア無線のデジタル化、D-STARの主要な部分の説明を進めてきて最終回になりました。今まで説明してきた部分を振り返り少し整理をしてみたいと思います。

図1はそのブロックダイヤグラムでx)印は今まで説明してきた項目番号です。従ってその番号の項目を改めて読み直していただくと分かりやすいかも知れません。

図1 D-STAR構成図

この図1は幹線系中継局を通して二つの端末局が通信する場合を想定したものです。黄色く塗ったブロックがこれまで説明してきたデジタル化に特に関係の深い部分で、灰色に塗ったブロックは従来のアナログ通信でも使われている部分になります。

この図1のCODEC/インターフェースブロックは表示の都合上同じブロックに表示していますが、音声系通信は場合はCODECとして働き、データ系通信の場合は、パソコンより入力した信号はインターフェースを通して変調部でデジタル変調されます。また、実際の端末局は音声系とデータ系通信の両方可能なID-1のような形になり、将来的には図2のようなハンディ機や固定機も出てくると思います。

図2 端末の一例

基本的なレピータサイトは、幹線系レピータ、データ系レピータ、音声系レピータで構成されます。もちろん、データ系または音声系レピータ一つでも動作可能であり、音声系またはデータ系と合わせて最大4台の組み合わせが可能です。

図3にレピータサイトの一例を示しますが、山上の電源の引けない所では図のような太陽電池での運用も可能です。

図3 レピーターサイトの例

このようなレピータシステムが設置できても実際の運用ではどのようなアプリケーションが使えるかで便利さや楽しさが変わってきます。データ通信ではインターネットのアクセスが可能なことは既に述べた通りですが、サーバーをおいて、電波伝播の情報や技術的データ等アマチュア無線に必要なデータベースを構築することもできます。また、どこかにカメラを設置して自然現象の定点観測等も面白いかも知れません。アマチュア無線専用の健全な出会い系サイトも考えられます。

音声系通信で、CODECがG723.1の8Kbpsの場合は音声情報以外にデータも送れるようになっているため、音声通信をしながらメモなどのメールを送ったり、静止画なら喋りながら送れるかも知れません。アマチュア無線の留守番電話的使い方や相手局が応答できる状態かまたは電源を切っているのかの確認等色々な応用も考えられます。

無線ヘッダーのフラグの中に緊急通信と言うのがあり、これは電波法上の緊急通信ではなく、例えば、交通事故の現場に遭遇して救急車を急いで呼びたい時等、このフラグを立てて送信すると受信している全ての局のスケルチが開き、音量も上がって通信内容が全員に分かるようにすることもできます。

元々TCP/IPのプロトコルで動作するようになっているため、基本的にはインターネットでのソースはそのまま通信できるようになっていて、静止画、動画、VoIPによる音声等実験はできると思います。

アプリケーションについては逆にユーザーである皆さんのアイディアを出していただきより楽しいアマチュア無線ができることを希望します。

アマチュア無線のデジタル化について、D-STARシステムを中心に技術的な説明を進めてきました。説明不足など多々あったのではないかと思いますが、最後までおつきあい頂いた読者に感謝申し上げます。