D-STARシステムの音声をデジタル化するCODECについて説明します。CODECは図のような色々な方式がありますが、ID-1のCODECはアメリカのDVSI社で開発されたAMBE規格のものを採用しています。当初はITU勧告G723.1の規格のものを検討していましたが、超ナローのAMBE方式を採用することになりました。

DVSI社で開発されたAMBE方式のCODECは2.4Kbpsと言う非常に低い変換速度で、ビットレートが低くても音質は良好です。D-STARでは音声の2.4Kbpsと同時に送れる短いデータ2.4Kbpsを合わせて4.8Kbpsで送ることになっています。

AMBE CODECIC

このCODECを使うと変換速度2.4Kbpsのビットレートの時には、GMSK変調でも占有周波数帯幅が約2.6KHzとSSB並の狭帯域にすることができ、HF帯でもデジタル音声系通信が可能です。

従来のアナログFM無線機をD-STARのシステムに接続する場合は専用のアダプタを取り付けて通信を行います。このアダプタは一般的に無線機のマイク端子に接続され、マイクはこのアダプタに接続します。またマイク端子に受信出力のあるものは、スピーカはそのままにし、受信出力のないものはスピーカ端子からアダプタに接続してスピーカはこのアダプタに接続します。これは従来から行われているパケット通信のターミナルと接続する方法とほとんど同様です。


従来のアナログFMとの通信方法について
・アナログFM無線機にIDを送受するアダプターをつける。
・アダプターはマイク端子等のアナログI/Oへ接続する。
・音声送信を始める前にこのIDパケットを送出する。
・アナログレピーターはIDを検出してD-STARのフレームに構成する。
・アナログレピーターからアナログ無線機に送信する時は先にIDパケットを送る。
・アナログ無線機はIDパケットで自局を認識する。


アナログ無線機の送信は予め設定した自局、相手局、レピータ等のコールサインをデジタル化してマイク端子よりモデムの信号として送信します。アナログ音声信号はIDパケットを送った後から送ります。また、受信時には、受信出力より入ってきたID信号を解読して自局の認識と表示等を行います。

レピータサイトではアナログFMレピータにCODECとID処理機能が追加され、アナログFM無線機から送られてきたIDの処理とアナログ音声をCODECでデジタル化して、その後ビットレート変換、プロトコル変換等を行ってD-STARシステムに取り込みます。

これらの動作により、従来のアナログFM無線機をD-STARの音声系として動作させることができます。

D-STARシステムは、無線部とインターネットを組み合わせた統合的なシステムとして動作します。インターネットを経由する信号はIPアドレスが必要で、全体として10.××.××.××で始まるローカルのIPアドレスをJARLより固定アドレスとして割り振ります。従ってシステム全体がイントラネット的に動作することになりますが、インターネット網を通る時には所謂トンネリングによるVPNとして動作します。

D-STARシステム

システムのインフラストラクチャーができあがれば、将来的に面白いアプリケーションが増えていきアマチュア無線に有効なシステムとして発展して行くことを希望しています。