ID-1には下記に示すソフトウェアーとプロトコルが関係しています。

ソフトウェアーとプロトコル

・D-STARプロトコル
  データ通信プロトコル
  音声通信プロトコル
  幹線通信プロトコル
・ID-1のUSBコントロールソフト
・アプリケーションソフト

プロトコルはD-STARの通信システムに必要なものであり、ID-1のUSB端子を使用するものはプロトコルと呼ばず、コントロールコマンドと表現します。このようにID-1のUSBでのやり取りは本来通信のプロトコルではありませんので注意が必要です。

また、ID-1に接続したパソコンでの通信は、このままでは単にローカルレピータや幹線系通信接続しただけのものであり、実際には色々なアプリケーションが必要です。有線回線に接続してインターネットにアクセスしたり、付加したサーバーへのアクセスはこのアプリケーションの一部になりますが、どのように使うと面白いか興味あるアプリケーションの提案をユーザーよりお待ちします。

D-STARのプロトコルでデータ系通信に使うパケットの構成は図1のようになっています。

図1 データ通信プロトコル

無線ヘッダ部は無線通信で相手方と接続するために使用する部分です。この無線ヘッダ部以降は後で説明しますイーサネットパケットで構成されています。

無線ヘッダ部は次のようになっています。

ビット同期
入力信号に同期をとるためのビット同期信号。

フレーム同期
これより信号であることを表すフレーム同期信号。

フラグ
このヘッダの意味づけをしています。
レピータ経由通信/直接通信、レピータ制御信号等。

送り先レピータコールサイン
幹線系通信で中継したとき、最終目的地のレピータコールサイン。

送る元レピータコールサイン
その端末が属しているレピータのコールサイン。

相手局
相手方のコールサイン

自局コールサイン
自局のコールサイン

P-FCS
この無線ヘッダ部が有効かどうかのフレームチェックシーケンス。

図2はデジタルデータ系通信でメッセージを送る課程を表しています。左側のユーザーAより右側のユーザーBにメッセージを送ります。作られたメッセージに有線部でそれぞれTCP、IP、Ethernetのヘッダがつきます。これは接続しているパソコンで自動的に処理されます。

図2 メッセージの転送

10Base-Tより出てきたこのイーサネットバケットに前ページで説明した無線ヘッダをつけて無線で送り出します。

受信側では、この無線ヘッダを解読し、ヘッダを取り外して10Base-Tより接続しているパソコンへイーサネットパケットとして渡します。後はパソコンが自動的に処理してメッセージがユーザーBのパソコン画面に現れることになります。

次に音声系通信のプロトコルを説明します。音声系通信のパケットは図3のようになっていますが、無線ヘッダ部はデータ系通信と全く同じです。

図3 音声通信のプロトコル

無線ヘッダの後のData部は、CODECで30mS毎にデジタル化された48bitの音声信号がVoice Frameです。その後の48bitのData Frameは小さな静止画やメモ等音声信号と同時に送ることができます。ID-1にはこの機能は反映されておらず、全体のCPUの容量等から後で変更することが困難であり、次世代の機器より対応する予定になっています。

送信の最後にLast Frameを付加して送信の終わりが分かるようになっています。また、このData Frameは20回に1回同期信号を入れることになっています。これはフェージング等によって通信の途中で信号が途切れると受信側で同期が取れなくなって再生不可能になることを防ぐものです。

レピータサイト間を接続する幹線系通信のプロトコルはATM方式によってデータ信号と音声信号を多重化して送っています。ATMパケットは図4のようにヘッダ部が5バイト、信号部が48バイトの53バイトの短いパケットで構成されています。

図4 幹線通信のプロトコル

このヘッダ部で優先度の指定ができるため、リアルタイム性を必要とする音声信号に優先度をつけて送り、到着時にはリアルタイム性を確保できるようになっています。ATM方式はレピータサイト毎に置かれたATMスイッチにより予め設定したリストに従ってATMパケットの送り先へ送るようになっています。詳しくはATMの専門書をご覧ください。