ポータブルデジタルオーディオプレーヤーとスマートフォンが競合

ポータブルデジタルオーディオプレーヤーとスマートフォンは音楽をアウトドアで手軽に楽しむことが出来るという点で共通点があるだけに、両者の関係は競合するところがある。スマートフォンがあればわざわざ別にポータブルオーディオプレーヤーを買う必要が無いという考え方も出来る。それだけにスマートフォンの普及動向がポータブルデジタルオーディオプレーヤーの販売にも大きな影響があるので少しスマートフォンの動向を見てみたい。事実、アップルが2007年にスマートフォンiPhoneを発売して以降、ポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場は従来と様相が変わって行った。おそらくアップル自身は、iPhoneとポータブルデジタルオーディオプレーヤーのiPodやiPod touch、iPod nanoなど一連のiPodシリーズとも市場で共存し、それぞれが発展拡大していくと予想していたようだ。ただiPhoneと双子のようなiPod touchは、マルチタッチパネルを活かしたゲーム機としての使い方でiPhoneや他のiPodシリーズと棲み分けできると予想していたのだろう。

iPhone3G に標準3.5mmイヤホンジャック採用でポータブルデジタルオーディオプレーヤーとしての機能強化

日本国内におけるiPhoneの発売は、2008年にソフトバンクから次世代モデルであるiPhone3Gが発売されてからだ。このiPhone3Gは、米国や欧州をはじめ日本など世界22地域で発売され3日間で100万台販売されたとも言われ大ヒット商品となった。そして2011年にはauが、2013年にはNTTドコモもiPhoneの販売を開始したことで日本においてもスマートフォン市場をリードする存在となった。なおiPhone3Gは、第一世代のiPhoneとは違い標準の3.5mmイヤホンジャックが採用された。これでアップル以外の市販のイヤホン、ヘッドホンが使用可能となりポータブルデジタルオーディオプレーヤーとしてより良い音質で音楽を楽しめるようになった。3.5インチのマルチタッチパネルディスプレイ搭載によるスムーズな操作性。1150mAhリチウムイオン電池内蔵で25時間の音楽再生が可能だった。さらに、翌年にはソフトウエアのバージョンアップでBluetoothにも対応可能となり、他のBluetooth機器と繋がることで、ワイヤレスで音楽を楽しめるようになり使い勝手が向上し、音楽の楽しみ方の幅を広げている。

通信機能と音楽プレーヤーの機能を併せ持つスマートフォンと、音楽プレーヤー専用機としてのデジタルオーディオプレーヤーが市場においてどのような棲み分けをしていくのか、まだ2007年~2008年あたりでは読みきれない状態だった。したがってアップルも毎年iPhoneの新製品発売やバージョンアップを行って行くが、デジタルオーディオプレーヤーのiPodシリーズにおいても毎年新製品を発売し両者を平行して力を入れている。

ソニーもスマートフォン市場に参入

一方、デジタルオーディオプレーヤーに力を入れてきたソニーは、2008年以降もウォークマンシリーズに一層力を入れている。しかし、ライバルのアップルがiPhoneの発売で大ヒットしたことを受けて、やがてソニーもスマートフォン市場に参入することになる。ソニーは、以前から携帯端末ではエリクソン社と合弁のソニーモバイルコミュニケーションズ(旧ソニー・エリクソン)を設立しグローバル展開していた。そして現在のソニーのスマートフォンに使用しているブランド「Xperia」を初めて使った製品を2008年に欧米を中心に発売した。OS(オペレーティングシステム)にはWindows Mobileを採用していた。しかし、本格的にスマートフォンに参入していくのは2010年あたりからでOSをWindows MobileからAndroidに切換えてからになる。ソニーはテレビやビデオカメラも販売する総合エレクトロニクスメーカーであり、同時にCMOSセンサーなど撮像素子のトップメーカーでもあることから、2010年に「Cyber-shotケータイ」を開発、KDDIや沖縄セルラー電話から発売している。有効画素数1209万画素CMOSセンサー搭載で高画質な映像を撮影でき、高い防水性能も備えていた。さらに、同年10月には同社のテレビのブランド「BRAVIA」を冠した「BRAVIA Phone U1」を発表。同社のブルーディスクプレーヤーから携帯電話に高画質な映像を転送できるのが特徴だった。

iPhone対Android搭載スマートフォン、ポータブルデジタルオーディオプレーヤーの三つ巴の戦いに

そして、ソニーが国内で本格的にスマートフォンに参入したのは2011年にauとNTTドコモから発売した「Xperia acro」からで、4.2インチ大型ディスプレイを採用したモデル。また同年にはQriocityによる音楽配信サービス「Music Unlimited powered by Qriocity("キュリオシテイ"ミュージックアンリミティッド)」に対応したAndroid搭載携帯電話用アプリケーションをAndroidマーケット経由でアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど9カ国で提供を開始、Xperiaの販売を支援している。このサービスはクラウドベースでどこでも音楽を楽しめるストリーミング型配信サービスで、ユニバーサルミュージック、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナーミュージック、EMIミュージックなどの許諾を受けた楽曲を含め幅広いジャンルから700万曲以上を揃えている。Xperia arc以外にもAndroidを採用する携帯機器でサービスを受けることが可能で、ネットワーク対応の液晶テレビ「ブラビア」やブルーレイディスクプレーヤー、プレイステーション3、PSP(プレイステーション・ポータブル)、パソコン「VAIO」などのでもサービスを楽しめる。ソニーとしては、ホームエンタテインメント機器やポータブル機器を通じて、幅広いバリエーションの楽曲を手軽に楽しめることでAndroidを採用した機器の魅力をアップし、市場で優位に展開するのが狙いだった。そしてソニー以外の各社も2010年頃からAndroid搭載のスマートフォンの発売が相次ぎ、アップルのiPhone対Android搭載のスマートフォン、それにポータブルデジタルオーディオプレーヤーの三つ巴の激しいバトルが展開させて行くことになる。

アップル ソニー
ポータブルデジタル
オーディプレーヤー

iPod、iPod touch、iPod nano

ウォークマンAシリーズ、Eシリーズ、
Sシリーズ、Xシリーズ

スマートフォン

iPhoneシリーズ

Xperiaシリーズ

アップル、ソニーの主なスマートフォンとポータブルデジタルオーディオプレーヤー

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか