選択肢が広がり、アウトドアで手軽に音楽を楽しめる環境が整う

音楽愛好家にとっては、スマートフォンやポータブルデジタルオーディオプレーヤーと選択肢が広がり、アウトドアで手軽に音楽を楽しめる環境が整ってきた。ただ、通信機能に加えミュージックプレーヤー機能を持つスマートフォンには、バッテリーの持ちが悪い、月々の契約料金が高い、などの課題もあり、拒否感を抱いている層も存在していた。iPhone3Gは1150mAhの二次電池を内蔵しているが、Wi-Fiのブラウジングで6時間、3G通信で5時間、音楽の再生では25時間使用可能としていたが電池は交換不能だった。この他、OSのバージョンアップによる問題も発生していた。iPhone3GのOSにはiOSが採用されていたが、2010年にバージョンアップされたiOS4にアップデートするとバッテリーの持ち時間が短くなったり、加熱したりする問題が出た。

スマートフォンではバッテリーの持ち時間不足や加熱・発火の問題が

このバッテリーの持ち時間不足や加熱・発火する問題はアップルに限らず、サムスンなどのスマートフォンにおいても後々まで問題を引きずることになる。ディスプレイの画面サイズをアップしていく大画面化競争、小型化・薄型化競争が激しくなるにつれバッテリーの負担も大きくなる。大画面化で消費電流も大きくなる一方、小型化・薄型化で機器内部の高密度化が進み放熱性でしわ寄せが来る。二次電池もこうした要望にマッチするようニッケル水素電池から、より軽量・大容量のリチウムイオン電池が主流となっていく。しかし、リチウムイオン電池は構造が複雑で、製造工程に少しでも不備があると発熱、発火などのトラブルを起こしてしまうからだ。

スマートフォン、ポータブルデジタルオーディオプレーヤー両方に力を入れる

スマートフォン市場では、こうした問題をかかえながら、アップルやソニーなどは、ポータブルデジタルオーディオプレーヤーに引き続き力を入れている。スマートフォン市場が本格的に立ち上がった2008年に、ソニーはウォークマンの主力モデルとして「NW-A820シリーズ」を発売した。ワイヤレスでも音楽を楽しめるBluetooth機能の内蔵と、2.4型液晶を搭載によるビデオ再生にも対応したモデル。この頃、ヘッドホン、スピーカー、パソコン、車載機器などにBluetooth機能を搭載した機器が増えており、音楽をワイヤレスで快適に楽しみたいというニーズに応えたモデルだった。

オーディオ機器へのBluetooth機能搭載が進み出す

Bluetooth機能を搭載したことで、外ではBluetooth機能対応ヘッドホンでコードを気にすることなく音楽を楽しめ、家では"ウォークマン"をリモコンのように使ってBluetooth機能対応スピーカーで再生することが出来た。また、Bluetooth機能対応のカーステレオと組みあわせて"ウォークマン"の音楽をドライブ中にでも楽しむことが出来た。ヘッドホンコードや接続ケーブルに制限されない自由なリスニングスタイルを提案したモデルで、16GBフラッシュメモリー内蔵の「NW-A829」と、8GBフラッシュメモリー内蔵の「NW-A828」の2機種が有る。電池持続時間は、音楽で約36時間、ビデオ再生で約10時間の連続再生が可能だった。(なお、Bluetooth機能はその後のオーディオ市場において本格的に普及していくことになるので、後の連載で、あらためてBluetooth機能に触れて行きたい。)

機能、性能に加えファッショナブルなデザインを訴求する製品が登場

この他、「NW-A820シリーズ」には、CDプレーヤーやMDプレーヤーなどから音楽を直接録音できる「ダイレクトエンコーディング機能」を搭載していた。パソコンを使わなくてもCDやMDなどのポータブルオーディオプレーヤーやコンポから、"ウォークマン"本体で音楽を直接録音できる機能で、パソコンを使いこなせていないユーザーには有り難い機能だった。さらに、「NW-A820シリーズ」とほぼ同時に、多彩な着せかえが楽しめるファッショナブルな感覚を意識した「NW-E020Fシリーズ」を発売している。外形寸法は、幅81.9 × 高さ22.1 × 奥行13.8 mmで、コンパクトなボディにUSB端子を搭載しており、パソコンやHDDコンポと直接接続して手軽に楽曲の転送や充電ができた。また、小さなボディながらわずか3分間の充電で3時間の再生が出来た。また、1時間の充電では約30時間の連続再生が可能だった。このシリーズは性能、機能面より、豊富なカラーバリエーションやオプションをラインアップすることで、ファッションや気分などに合わせて"ウォークマン"を着せかえて楽しむことができる新たな提案のシリーズだった。

アップルはiPod classic、iPod touch、iPod nanoの3シリーズの連合軍で臨む

これに対してアップルは、2007年あたりからの主力モデルiPodをiPod classicと呼ぶようになっていたが、2008年にはiPod classicの120GBメモリ搭載モデルを発売した。音楽再生が36時間、ビデオ再生が6時間の連続再生が可能だった。また、同時にiPod touchの第二世代モデルと、iPod nanoの第四世代モデルを発売、3つのシリーズ展開で臨んでいる。iPod touchの第二世代モデルは、従来モデルには無かった内蔵スピーカーやボリューム調整ボタンを搭載している。Bluetooth機能は搭載していたがiPhone OS 3.0以降にアップデートしないと使用出来ない。iPod nanoの第四世代モデルは、8GB、16GBの2モデルで、9色のカラーバリエーションを持つ。縦型デザインでクリックホィールが下にあり、iPodの典型的なデザインを踏襲していた。バッテリー持続時間は、音楽再生24時間、ビデオ再生が4時間となっている。アップルは、スマートフォンiPhoneに加え、ポータブルデジタルオーディオプレーヤーのiPod classic、iPod touch、iPod nanoの3シリーズの連合軍で臨んでいる。

2008年

・ソニー(ウォークマンA820シリーズ)

8GB/16GBフラッシュメモリー内蔵。Bluetooth機能、ビデオ再生対応


・ソニー(ウォークマンNW-E020シリーズ)

1GB/2GB/4GBフラッシュメモリー内蔵。USB端子接続可能


・ソニー(ウォークマンSシリーズ)

4GB/8GB/16GBフラッシュメモリー内蔵、スピーカー付属


・アップル(iPod Classic 120GB)


・アップル(iPod touch 第二世代モデル)


・アップル(iPod nano 第四世代モデル)

2008年

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか