国内市場では週間シェアでウォークマンが首位となることも

2009年におけるソニーとアップルの新製品投入の力の入れ具合は、そのまま国内の台数ベースのマーケットシェアにも現れて行く。むろん欧米市場ではアップルのiPodシリーズが圧倒的なシェアを維持してはいるが、国内市場では月間及び年間のシェアでは依然としてiPodシリーズが首位をキープするものの、週間シェアではウォークマンが首位となることもあり、徐々にその差は縮まって来た。ソニーとしてはMDウォークマンがほぼ終焉に近づいて来た時期でもあり、半導体メモリのウォークマンに全力を入れて取組む必要に迫られていた。

2010年になると月間シェアでもウォークマンが首位となることも

2010年に入ると、前年に投入したフラグシップモデルの「Xシリーズ」や、エントリーモデルの「Eシリーズ」、語学学習機能を搭載した「Sシリーズ」などの新シリーズや新製品効果が現れ、月間シェアでもiPodシリーズを抜き首位を確保する月も出るようになった。国内のポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場は2010年にピークを迎えるが、調査会社BCNの台数ベースでのランキングによると、2009年から2010年にかけての週間ランキングではソニーのウォークマンが首位となることがあっても、年間ランキングではアップルのiPodシリーズが首位となっている。そして、ソニーがアップルを年間ランキングで逆転するのは2011年となる。

2011年以降はiPodシリーズを逆転しウォークマンが首位に

しかし、ポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場は2011年に入ると次第に減少して行く。ソニーは新製品効果で2011年に入っても台数ベースで前年を上回っているが、アップルはスマートフォンに軸足が向いていることもあってiPodシリーズは前年を下回った。このため国内市場トータルで前年を下回った。さらに、2012年に入るとソニーのウォークマンも出荷台数で前年を下回るようになる。アップルのiPodシリーズを逆転し首位をキープしたとしてもメーカーとしてはマーケットシェアで収益を生み出すわけではない。何としても地滑り的なポータブルデジタルオーディオプレーヤー需要の減少を食い止めなければならない。それがトップメーカーとなったソニーの使命でもある。

ホームステレオ、ハイファイステレオとの連携で音楽の楽しみ方を拡大

アップルがiPodシリーズからスマートフォンiPhoneに軸足をシフトした結果、ソニーのウォークマンがポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場で首位になれたというだけのことであれば、AV総合メーカーとしてのプライドが保てない。むろんソニーもスマートフォンXPERIAを発売し、スマートフォンでウォークマンの落ち込み分をカバーできればアップルと同じようにトータルでは売上を伸ばすこともできる。しかし、まだポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場の成長をあきらめるわけには行かないし、ホームステレオ、ハイファイステレオへの影響も考えて行かねばならない。

ポータブルデジタルオーディオプレーヤーとホームステレオ、ハイファイステレオとのドッキングで、アウトドアと家庭内での音楽の楽しみ方を広げていこうとする動きもあったからである。

米グーグルのOS「Android」搭載スマートフォンがiPhoneの対抗馬として登場

一方、アップルはiPodシリーズからスマートフォンiPhoneに軸足をシフトし、スマートフォンで世界トップシェアを確保していたが、米グーグルが開発したOS「Android」を搭載したスマートフォンがiPhoneの対抗馬として登場してきた。グーグルはAndroidを無償で開放したので、急速にAndroid搭載のスマートフォンはシェアを伸ばして行く。ソニーもAndroidを搭載したスマートフォンXPERIAを発売し、スマートフォン市場でもシェアアップを目指した。

デジタルポータブルオーディオ スマートフォン
デジタルポータブルオーディオ対スマートフォンの戦い
アップル
iPod
ソニー
ウォークマン
アップル
iPhone
Android搭載
スマートフォン
アップル、ソニー2強の戦い アップル対Android連合軍の戦い

2007年以降の市場動向

日本国内は世界市場とはちょっと異質な携帯電話市場だった

そんなわけで2007年から2010年は、ポータブルデジタルオーディオプレーヤーとスマートフォンとの主導権争いに加え、スマートフォン市場においても、アップルのスマートフォンiPhone対、米グーグルのAndroidを搭載したスマートフォンとのシェア争いが激しくなっていた。さらに、このころ日本国内では世界市場とはちょっと異質な携帯電話市場となっていた。いわゆるガラパゴス携帯と呼ばれた日本独自の携帯電話市場となっていた。テレビのワンセグ視聴や、電子マネー決済、高性能カメラの搭載など様々な機能を搭載した携帯電話が人気を呼んでいた。やがて日本の国内市場もスマートフォンが主流となって行くのだが、ガラパゴス携帯電話も"ガラ携"と呼ばれるほど根強い支持があった。

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか