ドックコンポなどを含むアクセサリーの充実に力を入れる

ソニーは2010年以降ウォークマンのシリーズ強化だけでなくドックコンポなどを含むアクセサリーの充実に力を入れている。スマートフォンが音楽プレーヤーとしての機能を持つなら、ウォークマンは、音楽専用プレーヤーならではの魅力をいかに訴求していくかが生き残りをかけた重要な戦略となる。専用機ならではの優れた操作性や、長時間再生、高音質による差別化、コンポなど他のオーディオ機器との接続性の良さ等が重要となる。

ドックコンポやドックスピーカーの国内市場が急拡大

これには自社だけでなく他のメーカーも含めオーディオ業界全体で取組んでいかなければならない。特に高音質化では2014年頃から普及し始める「ハイレゾ」対応のハード、ソフトを含めた普及拡大。コンポやアンプスピーカーなど他のオーディオ機器との接続によるアウトドアだけでなく家庭内での楽しみ方の拡大などが必要となる。中でも、ドックコンポやドックスピーカーの国内市場は、2007年以降拡大を続け、2009年度には前年比約180%と急拡大した。業界では、今後も成長が見込めるとの予測がなされていた。

インターネットへの接続で使い勝手が向上

そんなわけで、ソニーは2010年の4月にウォークマンと簡単につないで音楽を楽しめる「WM-PORT(ダブリューエムポート)」を搭載したウォークマンドックスピーカー2機種を発売した。さらに、6月にはウォークマンドックコンポ2機種を発売した。ウォークマンドックコンポ「NAS-V7M」「NAS-V5」は、インターネットに接続すれば、CDのタイトル情報を自動で取得でき、ワンタッチボタンを押すだけで、CDの音楽を曲タイトル付きで"ウォークマン"に録音できた。「NAS-V7M」には、内蔵メモリーに、CD約300枚の音楽をためられる「ジュークボックス」機能を搭載。お気に入りのラジオ番組や外部入力端子に接続した機器の音楽を「ジュークボックス」に録音して一括管理することもできた。有線LANポートと無線LANも内蔵しており、設置場所を気にせず手軽にインターネットに接続できた。

一方、ウォークマンドックスピーカー「RDP-NWV500」は、500mlのペットボトルとほぼ同等の質量/本体サイズで、360度に広がるサウンドと重低音の再生や車内でも使いやすいようドリンクホルダーに入る新しい形状と使いやすい操作性を実現していた。デジタルアンプと32ビットDSPを搭載し、豊かな低音、伸びやかな中高音を楽しめた。

楽しさを広げる歌詞表示機能「歌詞ピタ」や「カラオケモード」も

さらに、同年10月にはウォークマンAシリーズ3機種、Sシリーズ5機種、Eシリーズ4機種の3シリーズ12機種に加えドックコンポなど5機種を含むアクセサリーを発売し、さらに攻勢の度を強めている。ウォークマン全機種に、音楽の進行にあわせて歌詞を自動的にスクロール表示する歌詞表示機能「歌詞ピタ」を搭載。「カラオケモード」や、自動的にお勧めの楽曲を選曲する「おまかせチャンネル」、さらにメジャーアーティストなども含む楽曲の試聴曲が楽しめる「ちょい聴きmora」機能など、音楽の楽しみを広げる機能を新たに搭載した。

アップルに対抗しソニーも音楽配信サービスには力を入れる

これら一連の新製品は、手軽に音楽DVDを視聴したり、防水保護等級IPX7/IPX4相当の性能で風呂でもいい音で音楽を聴くことができたりするなど、ユーザーの好きなスタイルで音楽を楽しむというニーズに応えた製品となっている。「ちょい聴きmora」サービスは、レーベルゲート社がサービスしており、アーティスト/ジャンル/人気ランキングなど特定のテーマにもとづいて選曲・編成された10曲からなる試聴曲をウォークマンへ転送して楽しむことができた。そして、ウォークマンに付属しているパソコン用アプリケーション「X-アプリ」でウォークマンへ自動転送が可能だった。こうした機能は、アップルも音楽配信サービスには力を入れており、ソニーとしてもハードウエアだけでなくソフトウエア面でもユーザーサポートに力を入れる必要が有ったからだ。

ウォークマンAシリーズにステレオアンプに搭載のフルデジタルアンプ「S-Master」などの高音質技術を採用

ウォークマンAシリーズは、スリムな本体に同社の高級ステレオアンプなどにも搭載しているフルデジタルアンプ「S-Master」をはじめとする高音質技術、2.8型ワイド有機ELディスプレイ、最大64GBの大容量フラッシュメモリーを内蔵するなど、高音質・高画質・大容量を凝縮したハイエンドモデルだった。そして、このAシリーズとSシリーズには、周囲の騒音を約98.0%カットでき、「電車・バス」「航空機」「室内」モードの中から環境に応じて選択可能な「デジタルノイズキャンセリング機能」を搭載し乗り物の中でも快適に音楽を楽しめるようになった。

アップル

・iPod nano

8GB/16GBフラッシュメモリー、Mac/WinXP対応。

USB端子接続。21.1gの小型・軽量タイプ。

本体背面にクリップがあり、服に挟んで音楽を楽しめる。


・iPod touch

8GB/32GB/64GBの3モデル、Mac/WinXPまたはVista、7に対応。

USB端子接続。3.5型ディスプレイ。


・iPod shuffle

2GBモデルのみ。

市販ヘッドホン使用可能。最大再生時間15時間。

ソニー

・ウォークマンWシリーズ「NWD-W253」

4GBモデル。

ヘッドホン一体型。防水仕様。スポーツしながら楽しめる。


・ウォークマンAシリーズ「NW-A855シリーズ」

16GB/32GB/64BGフラッシュメモリー内蔵、多彩なカラーバリエーション、歌詞表示機能。


・ウォークマンSシリーズ「NW-S750/Kシリーズ」

8GB/16GB/32GB。


・ウォークマンEシリーズ「NW-E050/Kシリーズ」

2GB/4GB。専用スピーカー付属モデルKシリーズ。

2010年発売のアップルとソニーの新製品

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか