ポータブルデジタルオーディオプレーヤーの国内市場、2010年頃にピークを迎える

ソニーの新製品攻勢に対して、スマートフォン「iPhone」にシフトしつつあったアップルだが、ポータブルデジタルオーディオプレーヤー分野を完全にあきらめていたわけではなかった。2010年頃はポータブルデジタルオーディオプレーヤーの国内市場はピークを迎えていた時期で、アップルも新製品をiPodシリーズの3シリーズ、iPod nano、iPod touch、iPod shuffleそれぞれに新製品を投入している。iPod nanoシリーズには8GB/16GBフラッシュメモリーを搭載し、USB端子に接続できる21.1gの小型・軽量タイプ。iPod touchでは、8GB/32GB/64GBの3.5型ディスプレイを搭載した3モデルを発売した。iPod shuffleでは、2GBで市販のヘッドホンが使用可能なモデルを発売。最大再生時間は15時間だった。

2011年以降、アップルとソニーのシェアは逆転

2011年に入るとポータブルデジタルオーディオプレーヤーの国内市場は減少に転じている。そして、アップルとソニーのシェアも逆転し、以後ソニーのトップシェアが続いていくことになる。業界団体であるJEITA(電子情報技術産業協会)の統計発表には、すでにポータブルデジタルオーディオプレーヤーの項目は無くなっており、メーカー各社のトータル出荷台数は把握できないが調査会社BCNの「BCNランキング」によると、2011年以降は年率10%~20%は減少し、2014年にはピーク時の半分程度に縮小している。

音楽を楽しむツールの多様化が進む

この原因として、BCNではスマートフォンで音楽を楽しむ傾向が強まってきているためと分析している。ソニーもポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場の縮小は認めているものの、スマートフォンで音楽を楽しむユーザーは増えており、トータルでは増加していると見ており、携帯オーディオ市場は依然として増えつつあるとの考えから2011年も新製品を相次いで投入している。これに対してアップルはiPodの3シリーズで新製品の投入は少なくなり、価格を下げたり、本体のカラーバリエーションを増やしたりで対応した。このためアップルとソニーのシェアの差は、ますます拡大していくことになった。

ポータブルデジタルオーディオプレーヤーのターゲットを若い世代に絞ったソニー

2011年から2012年にかけてのソニーとアップルの動きを見てみよう。ソニーは、ポータブルデジタルオーディオプレーヤーのターゲットを若い世代に絞って来ており、2011年9月13日にウォークマンの新製品発表会を開催したが、この発表会を「YouTube」でライブ配信するとともに、発表会場では"ウォークマン"キャンペーン「Play You.」のアーティストを登場させるなど若者に強くアピールする内容だった。

ワイヤレスで快適なリスニングスタイルを提供する新製品群を投入

新製品は、ウォークマン3シリーズ12機種とウォークマンの音楽を手軽に楽しめるドックスピーカー&ドックコンポ6機種で、高音質技術を結集しAndroidを搭載したZシリーズが新しく登場した。

Zシリーズは、独自の高音質技術を結集するとともに、Androidプラットフォーム上で音楽プレーヤーならではの機能やアプリケーションを搭載し、進化した新しい楽しみ方が可能だった。さらに、ウォークマンZ/A/S全シリーズとウォークマンドックスピーカー3機種はBluetoothに対応しており、ワイヤレスで、快適なリスニングスタイルを可能としていた。

音楽専用プレーヤーならではの機能を充実したZシリーズ

Zシリーズは、ウォークマン史上最高音質を実現しており、音楽・映像・多彩なアプリケーションを高音質で楽しめるAndroid搭載の新シリーズ。S-Master MXなどの高音質技術を進化させたほか、アルバムのジャケット写真を触りながら直感的な操作で選曲できる新アプリケーション「W.ミュージック」、画面状態に関わらずいつでも音楽再生の操作が可能な「W.ボタン」など音楽専用プレーヤーならではの機能を充実させている。また、アプリケーションへ簡単にアクセスできるSelect-Appなどを通じて音楽から広がる新たな楽しみを提供することで若者に魅力ある製品としている。

AシリーズにもS-Master MXなどの高音質技術採用でウォークマン史上最高音質を実現

ウォークマンAシリーズも、S-Master MXなどの高音質技術によりウォークマン史上最高音質を実現したほか、新たにタッチパネル方式を採用している。2.8型ワイド液晶ディスプレイ上でタッチパネルによる直感的な操作が可能となった。さらに、Bluetooth対応機器とワイヤレスで接続し、ウォークマンに保存した音楽を手もとの操作で再生することが出来るようになった。Sシリーズも全機種Bluetoothに対応。ワイヤレスで快適に音楽を楽しめるとともにファイル送受信機能で携帯電話やスマートフォンで撮影した写真をウォークマンとワイヤレスでやりとりすることもできた。そして、ウォークマンの新製品とセットで楽しめるドックスピーカーやドックコンポを6機種発売した。Bluetooth対応ウォークマンの特長を生かすことを狙っての発売だった。

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ウォークマンAシリーズ

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか