共同で設立された新会社エニーミュージックでは、ホームオーディオ機器向けポータル、顧客管理・認証、課金、決済システムの開発とシステム運用(音楽配信はレーベルゲートと提携)、各種サービスとの接続・運用、共通端末仕様、インターフェース仕様などの各仕様書の作成、管理、共通デバイス開発を行った。この他、マーケティング、プロモーション、ライセンス管理、カスタマーサポートなど一連の業務も担当することとなった。

「A&Vフェスタ2003」(日本オーディオ協会主催)会場でサンプル展示

そして、エニーミュージック対応ホームオーディオ機器が発売される前年の2003年10月23日からパシフィコ横浜で開催された「A&Vフェスタ2003」(日本オーディオ協会主催)会場の「次世代オーディオ&ソフト」コーナーにおいてソニー、パイオニア、ケンウッド、シャープのオーディオ機器メーカー4社がエニーミュージック対応ホームオーディオ機器をサンプル展示して来場者に体験してもらうことでPRした。

エニーミュージック対応機器には、エニーミュージックボタンと専用画面が搭載された。ユーザーは、エニーミュージックに登録(登録手数料315円)し、月額利用料315円を払えば、リモコンの手軽な操作で次のようなサービスを利用できた。

 ・高音質の楽曲試聴

 ・検索機能を利用した楽曲のダウンロード購入

 ・ランキング、アーティスト一覧など様々な関連情報の閲覧

 ・放送中のラジオ番組のオンエアリスト(楽曲情報)等の閲覧メニューからCDのオンライン購入

 ・ダウンロード購入した楽曲のポータブル機器への転送・持ち出し

2004年にソニー、パイオニア、ケンウッド、シャープがエニーミュージック対応機器を発売

実際にエニーミュージック対応ホームオーディオ機器が発売されたのは2004年5月からで、ソニーは"NET JUKE(ネットジューク)"「NAS-A1」と専用5V型液晶モニター「AUDP-A1」を発売した。40GBのハードディスク(HDD)を搭載、ダウンロードした音楽やデジタルスチルカメラで撮影した静止画などを蓄積し、家庭で豊富なコンテンツを楽しむことが可能なほか、Webブラウザを搭載、電子メールやインターネットを楽しむこともできた。操作はテレビや別売の専用液晶モニターを接続することで画面上に表示されるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)によって簡単に操作できた。

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ソニーの"NET JUKE"「NAS-A1」と専用液晶モニター「AUDP-A1」

画面上のGUIを使用し気に入った楽曲をHDDへダウンロード

ユーザーは、画面上のGUIを使用して"エニーミュージック"のサービスにアクセスし、曲のタイトルやアーティスト名から楽曲を検索・試聴して、気に入った楽曲をHDDへダウンロードできた。この他、ヒット曲やラジオ番組のオンエアリスト等、音楽情報も閲覧できた。そしてHDDに音楽ダウンロードした楽曲や音楽CDからの録音やラジオ番組のエアチェックを最大1,170時間収録できた。

また、蓄積した音楽をメモリースティックやUSB接続によってNet MD対応のポータブル機器に転送して外に持ち出すこともできた。音質面では、「S-master」フルデジタルアンプを搭載しクリアで迫力のあるサウンドを実現した。音楽以外でもデジタルカメラで撮影した写真をHDDに保存でき、メモリースティックやCD-Rの静止画もHDDに保存できた。

パイオニアがエニーミュージック対応「X-AM1」を発売

このほかパイオニアも同年5月にエニーミュージック対応のHDDネットワークミュージックシステム「X-AM1」を発売している。機能的にはソニーの「NAS-A1」と同じで40GBのHDDにCDアルバム約1,170枚分のストックが可能で、CDを最速8倍速でHDDへダビングできた。HDDに取り込んだ楽曲はパソコンと同様に、フォルダ/アルバム/トラックの階層で分かりやすく管理することも可能だった。またHDDに取り込んだ楽曲は、搭載されているメモリースティックスロットからメモリースティックへ転送可能なほか、USB端子を搭載、NetMD対応のMD機器を接続してNet MDへ転送できた。

ケンウッドもエニーミュージックに対応「NZ-07」を発売

同年5月に、ケンウッドから発売されたエニーミュージックに対応「NZ-07」は、40GBのHDDを内蔵しATRAC3、またはPCMでの音楽データの保存が可能なほか、JPEG、TIFF、PNG、GIF形式の画像ファイルも保存できた。また、マジックゲート対応メモリースティックスロットを搭載し、メモリースティック経由でポータブルオーディオへ音楽や画像データの転送が可能なほか、NetMD対応のポータブルMDプレーヤーをUSB接続することで、NetMDへの転送も可能。そのほか、Gracenote社の音楽CDデータベース「CDDB」に対応した楽曲情報の取得機能、Webブラウザやメールソフトを搭載。付属の5.6型TFTモニターは、VHF/UHFのTVチューナーを内蔵していた。

シャープは1ビットデジタルアンプ搭載モデルを発売

同年5月に、シャープもエニーミュージック対応の「SD-AN1-S」を発売した。基本的仕様は、各社の対応機器と同様で40GBのHDD内蔵、マジックゲート対応メモリースティックスロットを搭載、USB接続によるNetMDへの音楽データ転送などが可能だった。ただ、この頃にシャープが力を入れていた1ビットデジタルアンプを搭載し、約280万回/秒の高速サンプリングによる音質の良さをセールスポイントとしていた。また、これら4社のエニーミュージック対応機器は、いずれもオープン価格となっていた。

メーカー 機種
ソニー "NET JUKE(ネットジューク)"「NAS-A1」
パイオニア ネットワークミュージックシステム「X-AM1」
ケンウッド エニーミュージック対応「NZ-07」
シャープ エニーミュージック対応「SD-AN1-S」

各社のエニーミュージック対応モデル(各オープン価格)

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか