エニーミュージックによる新しいリスニングスタイルを提案

エニーミュージックが、実際にブロードバンドネットワークを使った新しい総合音楽サービスを開始したのは2004年5月20日からで、これに合わせて大手オーディオ機器メーカーのエニーミュージック対応モデルも発売された。そして、同年9月22日~25日の4日間、みなとみらいのパシフィコ横浜で行われたA&Vフェスタ2004の会場でエニーミュージック対応オーディオ機器が展示され来場者の関心を集めた。また、エニーミュージックのブースでは音楽ダウンロードをはじめ各種サービスの体験や楽曲の試聴とともに、エニーミュージックが提案するリスニングスタイル等も体験でき、エニーミュージックによる新しい音楽の楽しみ方や、次世代モデルなどが紹介された。

この頃は、低迷していたオーディオ市場を復活させる決め手としてネットワークオーディオへの期待が高まりつつある時期だった。さらに、アップルのiPodが発売されLPレコードやCDなど既存のメディアを使うオーディオ機器販売への影響を恐れたオーディオ機器メーカーでは、有線LANや無線LAN、インターネットなど何らかの手段によるネットワーク接続の重要性を認識していた。

2004年に家電、コンピューターメーカーによるDLNAが活動開始

ネットワークを構築するためには、機器間の接続をスムーズに行う必要があり、業界で接続のための規格を標準化してメーカーが違っても接続に支障をきたさないようにしなければならない。標準化を目指した中の一つにDHWG(Digital Home Working Group)があり、2003年に米国でモバイル機器やパーソナルコンピューターの異メーカー間での機器の相互接続を容易にするために結成された。そして、2004年にDLNA(Digital Living Network Alliance)の名称に変更され活動を開始した。モバイル機器、パーソナルコンピューターだけでなく家電品も含め、異なるメーカー間での機器の相互接続を容易にするためのガイドラインを策定した。

日本の企業ほか海外の有力企業がDLNAに加盟

ガイドラインでは、Media Formatや機器間が通信する際の手順(UPnP)、ユーザインタフェースなどを定めている。2005年にはDLNAガイドラインに沿って作られた機器に対するデバイスの認証・ロゴプログラムが開始された。PCソフト、HDDレコーダー、薄型テレビ、セットトップボックス、スマートフォンなどが認証されている。DLNAに参加したのは、ソニー、パナソニック、パイオニア、東芝、シャープの日本企業のほか、海外の企業ではコンピューター関連でマイクロソフト、インテル、ヒューレット・パッカード、フィリップス、サムスン電子、ノキア、モトローラ、エイサーなどが加盟している。

主なDLNA加盟企業
ソニー
パナソニック
東芝
シャープ
フィリップス
インテル
マイクロソフト
サムスン電子
モトローラ
ヒューレット・パッカード
ノキア
ACCESS
マーベル・テクノロジー・グループ

DLNA加盟企業

DLNA対応の液晶テレビやパソコン、BDレコーダーなどが発売される

DLNAガイドラインに沿って作られた機器としては、ソニーでは「ソニールームリンク」の機能名称で液晶テレビ「BRAVIA」、HDDレコーダー「コクーン」、DVDレコーダー「スゴ録」、パソコン「VAIO」、ミニコンポ「NETJUKE」、BDレコーダー、タブレット端末、ソニー・コンピュータエンタテインメントのゲーム機「プレイステーション3」などがある。パナソニックでは「お部屋ジャンプリンク」機能との名称をつけた液晶テレビ「VIERA」、BDレコーダー「DIGA」など。東芝はDVDレコーダー「RDシリーズ」、液晶テレビ「REGZA」、パソコン「dynabook」のほか、BDレコーダー、タブレット端末などがある。日立製作所では、液晶テレビ「Wooo」、シャープではBDレコーダー「AQUOSブルーレイ」などがある。

このほかでは、パイオニアはDLNA対応で、iPodなどの携帯オーディオやパソコンの音楽データ、インターネットラジオなどを高音質に楽しめるマルチミュージックレシーバー「PDX-Z10」を発売している。USB端子を装備しており、PM3、WMA、AACを始めとする様々な音楽ファイルを収録したUSBメモリ、iPodなどの携帯オーディオを接続して再生できた。

2017年にDLNAが解散、混乱の時代が長く続く

しかし、DLNAは規格のバージョンアップやプレイリストの問題などもあって加盟していたメーカー間にも温度差が出てきたことで行き詰まって行った。ソニーがDLNA非対応の製品を発売したり、他のオーディオ機器メーカーも独自のネットワークオーディオを発売したりするようになる。結局、2017年にDLNAは解散してしまうが、混乱の時代が長く続いた。

DLNA以外にも様々な規格が登場

また、オーディオ業界にはDLNA以外にも、スーパーオーディオCD(SACD)や、ホームシアター、DVD-Audio、さらには、後に登場するハイレゾリューションオーディオ(ハイレゾ)などへの取り組みにも力を入れる必要があった。つまり、オーディオ市場の復活には何が本命であるのか、それが見通せない為に一つのテーマだけに取り組むのは無理だった背景もあった。SACDは、1999年にソニーとフィリップスにより規格化(Scarlet Book)された次世代CD規格の一つで、CDと同サイズの光ディスクにCD以上の高音質で記録したもの。2層分の記録領域があり、1層を通常のCDとすることもできるSACD/CDハイブリッド仕様となっている。1層のみSACDに、または2層ともSACDで製作できる。SACD層の1層あたりの容量は4.7GBと大容量。記録はリニアPCMではなく、ΔΣ変調による低bit高速標本化方式を採用している。ステレオ2.0chと5.1chサラウンドも可能といった仕様。

DVD-Audioは、1999年にDVDフォーラムにより規格化された、次世代オーディオディスク規格でハイレゾリューションオーディオのはしりとなるもの。CDでは不可能だった5.1chサラウンドの記録が可能だったが、期待に反してあまり普及しなかった。そんな訳でオーディオ市場は、しばらくの間再浮上へ向けての模索が続くことになる。

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか