エレクトロニクス立国の源流を探る
No.160 電蓄からデジタルオーディオまで 第62回
21世紀に入り新しいオーディオ・ビジュアルの楽しみ方が広がる
1982年にCD (Compact Disc) が登場したことでデジタルオーディオ時代の幕が明けた。その後も1987年のDAT、1991年のMDとデジタルオーディオにおいて新しいメディアが相次いで登場し、オーディオ界はアナログからデジタルへと舵をきる。そして放送界でも2000年にBSデジタル放送が開始された。また、音と映像(オーディオ&ビジュアル)の融合も90年代後半からDVDの登場やホームシアター、カーAVの提案などが盛んになり、2000年代に入るとオーディオ・ビジュアルの楽しみ方が一層広がってきた。
テレビ放送のデジタル化を反映した展示に
日本オーディオ協会が主催するオーディオエキスポにもこうした流れが反映されている。2000年に開催されたオーディオエキスポでは特別展示としてテレビ放送事業者8社による「BSデジタルプラザ」が設けられた。そして、オーディオ界ではインターネットを使った音楽配信や、デジタル記録メディアを使ったポータブルオーディオなど使い勝手の良い便利なツールが相次いで登場してきた。むろんピュアオーディオにおいてもDVDオーディオやスーパーオーディオCDが登場し、より高音質を追究する動きも疎かにされていたわけではない。
通算50回目となるオーディオエキスポ2001開催
2001年には、初回の全日本オーディオフェアから数えて通算50回目となるオーディオエキスポ2001が開催された。サブタイトルとして「オーディオ・ビジュアル・コミュニケーション」が掲げられ、IT時代の音と映像の楽しみ方が提案された。会場は東京ビッグサイトで80社が出展したものの、エレクトロニクス、通信、コンピューターなどの総合展「CEATEC」の開催直後と言うこともあって来場者数も伸びなかった。
2002年は休止、2003年にA&Vフェスタ2003として再開
結局、この年のオーディオエキスポ2001が最後となり、翌年のオーディオエキスポは開催されなかった。そして、この1年間の休止期間を使って21世紀にふさわしい新しいコンセプトで「AVエンターテインメント型」イベントとして再スタートを切る準備を進めた。その結果、2003年に"音楽と映像の新世界を体感"A&Vフェスタ2003を開催した。会場も東京ビッグサイトから横浜のパシフィコ横浜に変更した。
楽器フェアと同時開催。「音楽」と「音」を総合的に集約
展示内容は、来場者に音と映像の楽しみ方を体感してもらうことで、体感を通じて次世代の音や映像を理解してもらう内容に変えている。さらに、集客力をアップするため、日本楽器フェア協会が主催してきた楽器フェアと同時開催。「音楽」と「音」を総合的に集約した新しい展示会を目指している。パソコンが「ソフトが無ければただの箱」と言われたように、オーディオ機器も「音楽ソフトが無ければただの箱」に過ぎないわけで両者の接近は必然のことだった。
また、パシフィコ横浜の特徴を生かしてハイエンドオーディオをリスニングルームで体験できるよう6つのリスニングルームを設け高級オーディオ機器が奏でる繊細な表現を体感できるようにした。このほか、ホームシアターエリア、カーAVコーナーでの音と映像の融合、次世代オーディオ&ソフトエリアではスーパーオーディオCD、DVDオーディオなど高音質化へのフォーマットの紹介、エニーミュージックなどの音楽配信による楽しみ方などが紹介されている。
A&Vフェスタ2004から入場料無料とし来場者数増を狙う
この頃、オーディオ機器メーカーや日本オーディオ協会では、オーディオ市場をいかに上昇カーブに向かわせるかが最大の課題であり、その一環であるA&Vフェスタへの来場者数を伸ばすことに力を入れていた。そのためA&Vフェスタ2003では入場料1,000円(前売券800円)だったものを、A&Vフェスタ2004からは入場料を無料とした。その効果もあって入場者数は目標の8万人に及ばなかったものの前回の62,842人から65,948人に増加した。開催期間は9月22日から25日だったが、この週には東京国際フォーラムで「インターナショナルオーディオショウ」が、東京交通会館で「ハイエンドオーディオショウ東京」が、損保会館で「真空管オーディオフェア」が相次いで開催され、まさにオーディオウィークとなったことも遠方からの来場客を集めやすく相乗効果もあった。
大画面・薄型テレビやDVDレコーダー普及がホームシアター普及の追風に
また、この頃は大画面・薄型テレビやDVDレコーダーが普及し始めたこと、さらにはアテネオリンピックを控えこれらの製品の普及に加速すると期待されていた背景がある。これらの製品とAVアンプを組み合わせれば業界あげて普及を推進してきたホームシアター普及の追風となると期待された。
主婦などの一般客の来場を狙ったAVを楽しむ生活提案型のフェアに
A&Vフェスタ2005では"オーディオとビジュアルのある生活提案"をキャッチフレーズにマニア向けのフェアから、主婦などの一般客の来場を狙ったAVを楽しむ生活提案型のフェアとすることで需要層の拡大を目指した。マニア向けには専門性、趣味性の高い「アドバンスステージ」を、一般客向けには生活提案型の「グランドステージ」とし、マニア・一般客のどちらでも楽しめるイベントとしている。そこには、米国を中心に世界で普及してきているホームシアターを日本国内でもマニアだけでなく、一般家庭に普及させるためには主婦層に関心を持ってもらうことが不可欠との考えがあった。
開催年 | 会場、名称 | 話題の製品・技術など |
---|---|---|
2000年 | 東京、オーディオエキスポ | 特別展示「BSデジタルプラザ」 |
2001年 | 東京、オーディオエキスポ (通算50回目のフェア) | IT時代の音と映像の楽しみ方を紹介 |
2002年 | 休止 | |
2003年 | 横浜、 A&Vフェスタ2003として再スタート。 会場をパシフィコ横浜に変更 | 名称を変更した通り、オーディオとビジュアル両方の最新技術、楽しみ方を提案。楽器フェアと同時開催。地上デジタル放送開始 |
2004年 | 横浜、A&Vフェスタ2004 | この年から入場無料に。ホームシアター |
2005年 | 横浜、A&Vフェスタ2005 | 薄型大画面テレビ、ホームシアター、ブルーレイDVDの試作機 |
2000年代前半のフェアの歩み:JAS journal(日本オーディオ協会編)から
参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか