オーディオ業界に大きな影響を与えた出来事、新技術は何?
これまで我国のオーディオ業界の課題と対策、イベントなど業界挙げて取組んできた経緯を紹介してきたが、その中でもオーディオ業界に大きなインパクトをもたらした出来事や新技術をもう少し詳しく見てみたい。これまで紹介してきたように最大の出来事はCDの登場によって本格的なデジタルオーディオ時代がもたらされたことであるが、加えてインターネット環境の普及、アップルのiPodの登場などによって音楽を楽しむスタイルが一変してしまったことである。

ポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場を食いつぶしたスマートフォン
しかし、隆盛を誇ったポータブルデジタルオーディオプレーヤーだったが、スマートフォンの登場によって徐々に衰退に向かって行った。何も音楽専用プレーヤーでなくてもスマートフォンで音楽も楽しめるようになったからである。調査会社BCNの調べによるとポータブルデジタルオーディオプレーヤー市場は2009年から2010年あたりに約220万台の出荷台数があったが2011年ころから減少に転じ、2013年には131万台と半減、2016年には63万台まで減少し、その後も低迷を続けている。

2016年4月のJEITA統計から「ポータブルオーディオシステム」消える
国内電機メーカーの団体であるJEITA(電子情報技術産業協会)の統計によると「ポータブルオーディオシステム」との調査項目が設けられ、出荷統計が開始されたのは2012年からで、同年は105.9万台、2013年は105.7万台、2014年は112.3万台、2015年が102.5万台となっている。しかし2016年の統計からは「ポータブルオーディオシステム」との項目があるものの1~3月まででそれ以降は削除されている。それは、「ポータブルオーディオシステム」の国内メーカーが実質的にソニー1社となり業界全体の出荷台数とは言えなくなってきたためだと推測される。さらに、BCNとJEITAの調査台数を比較するとJEITAの台数はBCNの約半分であるが、JEITAにはアップルが含まれていないので、アップルのシェアが約50%、ソニー及びその他が約50%と市場を二分していたと推定される。

2017年にアップルのiPod nano とiPod shuffleの販売も中止となる
それだけ高いシェアを誇っていたアップルだったがアップルと言えども、スマートフォンの勢いには逆らえないほどだった。というよりむしろアップルは音楽専用機iPodから、音楽再生機能も合わせ持つスマートフォンiPhoneをベースとした営業体制にシフトさせていく戦略だったのだろう。そうしたこともあって2001年から販売を始めたiPod classicは2014年で販売を終了している。 さらに、 2017年にはiPod nano とiPod shuffleの販売も終了した。それでもまだiPod touchは継続販売となったが、全盛時ほどの勢いはなかった。そして実に4年ぶりの2019年になってiPod touchの第7世代モデルとなる新製品が発売された。しかし、音楽専用機としてよりゲーム機能、カメラ搭載などスマートフォンiPhoneに近いモデル。年々大画面化しサイズも大きくなってきつつあるスマートフォンにはない薄型、胸のポケットに納まる小型などを特徴としている。しかし、どこまでスマートフォンに対抗して行けるのかは疑問である。

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2019年に4年ぶりに発売されたiPod touchの第7世代モデル

ブラックホールのように何でも飲み込んでいくスマートフォン
一方、スマートフォンは本体価格の高騰や、割高な利用料金などの問題をかかえながらも需要は健在だ。通信機能以外にも音楽プレーヤー、ゲーム機能、デジタルカメラ機能、カーナビ機能を始めとする多彩な機能を併せ持ち、提供されるソフトウェアも豊富だ。その影響は、当然ながら音楽プレーヤー、ゲーム機、カメラなどの業界に大きなダメージをもたらしている。ゲーム機の中でも携帯型ゲーム機は深刻でピーク時の半分以下の市場規模になっている。コンパクトデジタルカメラも同様でスマートフォンに喰われた形となっている。さらに大きな影響を受けたのが音楽プレーヤーで壊滅的な影響と言っても過言で無い。まるでブラックホールのように何でも飲み込んでいるのがスマートフォンだ。

ピュアオーディオ業界が救世主と期待するハイレゾだがスマートフォンもハイレゾに
前回のフェア(オーディオ機器の展示会)の歴史の中でも触れてはいるが、こうした流を止めるわけには行かなくとも、ポータブルデジタルオーディオプレーヤーを始めとするピュアオーディオ市場を盛り上げて行く手掛かりとしてハイレゾ・オーディオに期待が集まっており救世主的な存在となっている。2015年以降、毎年開催されるフェア会場においてハイレゾ・オーディオをメインテーマとして訴求してきた。しかし、スマートフォンにおいてもハイレゾ・オーディオ対応の動きが進んで来ておりピュアオーディオ機器メーカーとしてはアンプからスピーカーまでトータルシステムとしてのハイレゾへの取組みが求められている。ではハイレゾ・オーディオとはどんなものであるのか。そしてオーディオ愛好家に評価されオーディオ復活の起爆剤になりうるだろうかが注目されている。

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか