RCAがVictor High Fidelity Recordingを発表してからHi-Fi化競争に
ハイレゾオーディオ(ハイレゾ)が登場するまでの経緯を大ざっぱに見ると、電蓄が普及するにともないレコードをより高音質で再生したいという要求が出て来た。そしてRCAがVictor High Fidelity Recordingを発表してから「High Fidelity」(Hi-Fi)と言う言葉が一般化した。さらにレコード会社やオーディオ機器メーカーがHi-Fi(原音により忠実)を自社製品の音の良さを宣伝するのに使うようになった。時代が進んで1982年にデジタル技術を応用したCD(コンパクトディスク)が登場し、オーディオ界は一気にデジタル化に向かった。しかし、オーディオ市場の成長・規模は徐々に低迷し始めた。このためオーディオ業界としては、オーディオ復活に向けて何らかの施策が必要とされてきた。

CDの音質を上回る究極のHi-Fiとしてハイレゾが登場
Hi-Fi(原音により忠実)とは何をもってそう呼ぶのかとなると、その要素は4つある。まず、ノイズが少ないこと、歪みが少ないこと、録音・再生の周波数帯域がより広いこと、ダイナミックレンジがより広いことである。これら4つの要素をさらに高めCDの音質を上回る録音・再生技術の開発が求められるようになり、究極のHi-Fiとしてハイレゾ製品が2013年にソニーから登場する。しかし、日本オーディオ協会や電子情報技術産業協会(JEITA)がハイレゾの定義や規格などを決めるのは翌2014年になる。

2013年年末にソニーがハイレゾ対応の新商品を発売
ソニーは2013年年末の国内市場に向けて、CDを上回る情報量を持つハイレゾリューション・オーディオ(ハイレゾ)に対応したホーム用途からポータブル用途まで幅広い新商品を発売した。新製品のアピールポイントとして「ハイレゾ音源は、レコーディングスタジオやコンサートホールで聴いているかのような空気感や臨場感を体感できる音源です。ソニーがこれまで培ってきた独自のオーディオ技術により、アーティストやクリエーターが追求するサウンドを忠実に再現するとともに、様々な視聴環境やお好みの機器構成に合わせて快適に楽しめる高品位なオーディオ体験を提供してまいります」と謳っている。そして、これらの高いクォリティを、音響設計などハードウェアの性能面でも十分に再現できる商品に「Hi-Res Audio」のロゴを貼付して、高付加価値商品として推奨した。

音楽業界各社との連携を深めハイレゾ音源を手軽に楽しむための環境整備
同時に、音楽業界各社との連携を深めることで、ハイレゾ音源を手軽に楽しむための環境整備とプロモーションを進め、ハイレゾ音源の配信サービスでは、レーベルゲートが運営する音楽ダウンロードサービス、ウォークマン公式ミュージックストア「mora」において、同年10月よりハイレゾ音源の販売を開始。約600タイトル(アルバム)からスタートした。また、ソニーマーケティングが開設するナビゲーションサイト「ハイレゾリューション・オーディオサイト」 において、「mora」をはじめ、すでに実績のあるハイレゾ音源配信サイト「e-onkyo music」(運営:オンキヨーエンターテイメントテクノロジー)、「OTOTOY」(運営:オトトイ)とも連携し、ハイレゾに興味を持つ人達に様々な音源購入への案内やハイレゾ機器の紹介を行った。

ハイレゾコンテンツの拡充では、ユニバーサルミュージック、ワーナーミュージック・ジャパン、ソニー・ミュージックエンタテインメントなどの主要音楽会社の賛同を得てハイレゾ音源のカテゴリー、曲数ともに拡大していくこととなった。市場では、データ容量の小さい圧縮音源をインターネットからダウンロードしたりストリーミングしたりして聴くスタイルが広く普及していた。しかし、データ容量の大きなハイレゾ音源のダウンロードには困難はあるものの、技術の進化や情報インフラ整備によって普及が始まりつつあり、ハイレゾ音源のダウンロード環境も整っていくことになる。

2014年に日本オーディオ協会がハイレゾの普及拡大を事業計画の中心に位置付ける
こうした流れの中で、オーディオ市場復活を目指していた日本オーディオ協会では、ハイレゾを広く普及する必要があると判断し、オーディオ業界を挙げて普及拡大させる取り組みを同総会で2014年の事業計画の中心に位置付け①ハイレゾの基本的な考え方②ハイレゾの基本定義について③ハイレゾ推奨ロゴに関しての3つの取組みを決定した。ハイレゾの定義は、JEITA公告「(25JEITA‐CP第42号)を踏襲している。さらに協会が独自に追加した項目として「アナログ信号に関わること」「デジタル信号に関わること」「聴感に関わること」の3つを決定した。また「ハイレゾオーディオロゴ」はソニーが2013年にハイレゾ製品を発売した時に使用していたロゴをそのまま使用することになった。そして、2014年開催の秋の「オーディオ・ホームシアター展2014」や各地でのセミナーやシンポジウム、試聴会でハイレゾに対する認知向上に努めるとともに、国内オーディオ市場活性化と拡大に向けて動いた。

ハイレゾに関する具体的なスペックをJEITAが公告
ハイレゾに関するJEITA公告では次のようになっている。具体的には、CDスペックがサンプリング周波数44.1kHz/量子化ビット数16bit及びサンプリング周波数48kHz/量子化ビット数16bitであるのに対し、ハイレゾは①サンプリング周波数44.1kHz/量子化ビット数24bit(量子化ビット数がCDスペックより高い)、サンプリング周波数48kHz/量子化ビット数24bit(量子化ビット数がCDスペックより高い)、サンプリング周波数96kHz/量子化ビット数16bit(サンプリング周波数がCDスペックより高い)、 サンプリング周波数96kHz/量子化ビット数24bit(CDスペックより両方が高い)と具体的に定義している。これに対しサンプリング周波数96kHz/量子化ビット数12bit及びサンプリング周波数32kHz/量子化ビット数24bitはハイレゾには含まれないと定義している。

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音展では毎年Hi-Fiに関する試聴会やセミナーが開催されている

参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか