アナログ信号にかかわる部分におけるハイレゾを定義

サンプリング周波数や量子化ビット数といったデジタル化におけるハイレゾの定義は決まってもそれだけでは十分とはいえない。録音のためのマイクロホンをはじめ、ハイレゾ再生に対応した性能のアンプ、スピーカー、ヘッドホンなどアナログ信号にかかわる部分の定義も必要になる。さらには、オーディオ機器の無線接続によるワイヤレス化にも対応していかねばならない。日本オーディオ協会では、これらに関しても独自に定義している。それによると、アナログ信号にかかわることとして、録音マイクの高域周波数性能として40kHz以上が可能であること。また、アンプの高域再生性能は、40kHz以上が可能であること。そしてスピーカー、ヘッドホンでは高域再生性能として40kHz以上が可能であることと定義している。

数値だけでなく聴感に関する面も重視

デジタル信号に関しては、録音フォーマット:FLAC or WAVファイル96kHz/24bitが可能であること。入出力I/F: 96kHz/24bitが可能であること。ファイル再生:FLAC/WAVファイル96kHz/24bitに対応可能であることとし、自己録再機は、FLACまたはWAVのどちらかのみで可となっている。信号処理においては、96kHz/24bitの信号処理性能が可能であることや、デジタル・アナログ変換は96kHz/24bitが可能であることと定義されている。さらに、これらの定義に加えて、聴感に関する面も重視しており、生産もしくは販売責任において聴感評価が確実に行われていることを求めている。したがって、各社の評価基準に基づき、聴感評価を行い「ハイレゾ」に相応しい商品と最終判断されていることが条件となる。

無線接続機器に関するハイレゾオーディオワイヤレスロゴの使用許諾条件として、ハイレゾオーディオ機器またはハイレゾオーディオワイヤレス機器間を接続し、デジタルオーディオ信号を伝送するものであることとし、別途定めたコーデックを用いたオーディオ信号を伝送できることが必要となっている。

ソフトウェアは日本レコード協会と情報交換や告知活動で連携

一方、ソフトウェアに対する基本的な考え方として、日本オーディオ協会は本来ハード機器の開発・生産・販売企業の集まりであることから、ソフトウェア業界に対しては「ニュートラルかつオープンスタンス」という姿勢をとっている。したがってソフトウェアについては一般社団法人日本レコード協会が所管していることから相互にハイレゾソフト・ハードに関わる情報交換や告知活動を連携しながら「ハイレゾ」市場の拡大を目指す方針を貫いている。

家電量販店のオーディオ売り場はハイレゾ製品が中心となってきた

現在のオーディオ市場を見ると家電量販店のオーディオ売り場はコンポーネントオーディオからポータブルオーディオ、ヘッドホン、イヤホンなどのオーディオアクセサリーまでハイレゾ製品が中心となっており、オーディオ業界をあげてハイレゾに力を入れてきた成果が現れている。さらに、スマートホンで音楽を楽しむ人が増えてきており、ハイレゾ対応のスマートホンが登場したこともハイレゾ対応のヘッドホンやイヤホンの需要拡大に結び付いている。

写真:家電量販店のオーディオ売り場はハイレゾ製品が中心となっている

他社に先行して2013年からハイレゾオーディオ機器を発売したソニーがリード

中でも、他社に先行して2013年からハイレゾオーディオ機器を発売したソニーはウォークマンを中心に一歩リードしている。同社が2013年に発売したハイレゾ製品は、HDDオーディオプレーヤー 「HAP-Z1ES」とHDDオーディオプレーヤーシステム「HAP-S1」で、パソコン(PC)内の音源を高音質で楽しめるHDDオーディオプレーヤー2機種。「HAP-Z1ES」はセパレート型プレーヤーで、「HAP-S1」は、最大出力40W+40WのL/R独立型広帯域パワーアンプを内蔵した一体型プレーヤーシステムだ。両機とも本体にHDDを内蔵し、専用のPCアプリケーションを使ってPC内の音源を本機のHDDに自動でコピーでき、コピー後はPCを起動せずにハイレゾ音源の再生を楽しむことができる。また、ダイレクトストリームデジタル(DSD)を含むハイレゾ音源から圧縮音源まで高音質で再生するD/A変換技術やDSEE技術などの信号処理技術を搭載している。

また、USB DACアンプ「UDA-1」は、PCとUSBケーブルで接続して、DSDを含むハイレゾ音源から圧縮音源まで、簡単に高音質で再生できる。ステレオインテグレートアンプ 「TA-A1ES」やスピーカーシステム「SS-HA1」「SS-HA3」も発売した。広指向性をもつ「WDスーパートゥイーター」を前面・上面の2箇所に搭載。左右に加え上方向にも広いリスニングエリアで広音域の再生を実現。聴く位置や高さが変化しても音色の変化が少なく、広いエリアでハイレゾ音源など高音質の広音域音楽を楽しめる。

ソニーがポータブル用途のハイレゾ対応機器12機種を一気に発売

また、ポータブル用途のハイレゾ対応機器も12機種を一気に発売した。ウォークマン「NW-ZX1」は、モバイル機器に向けて最適化した独自開発のフルデジタルアンプ「S-Master MX」をさらに進化させ、ハイレゾ音源の再生に対応した「S-Master HX」や、圧縮音源を最大192kHz/24bit相当まで拡張し、CD以上の音質に変換する「DSEE HX」を搭載している。これによりヘッドホンのドライブ能力やチャンネルセパレーションを向上させ、切れのある力強い低音や広がりのある音場を実現している。さらに、オーディオ基板をアルミ削り出しによる高剛性モノコックボディに精密に組み込み、音質に影響を与える電気的なノイズなどの不要な外乱に対して強い構造にしている。128GBの大容量メモリーを内蔵し約800曲分のハイレゾコンテンツの保存が可能。

最上位機の「NW-ZX1」と同様に、「S-Master HX」、「DSEE HX」などの高音質技術を搭載し、FLACやApple Losslessなどの高音質コーデックに対応したFシリーズや、リニアPCMレコーダー 「PCM-D100」、ヘッドバンド型ヘッドホン「MDR-10」シリーズ3機種。「MDR-1」シリーズ2機種、密閉型インナーイヤーレシーバー「XBA-H3」、ポータブルヘッドホンアンプ「PHA-2」などを発売している。


参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、BCN RETAIL、JEITA・HPほか