ハードが先行しておりソフト分野の遅れが目立つハイレゾ

オーディオ業界でハイレゾへの期待は非常に大きいものがあるが、本格的なハイレゾオーディオ時代を迎えるためにはパッケージソフトがCDショップやレンタルショップに数多く出回り、CDのように誰でも簡単に入手することが出来るようになる必要がある。しかし、現状ではハードが先行しておりソフト分野の遅れが目立つ。家電量販店のオーディオ売り場にはハイレゾ対応コンポやデジタルポータブルプレーヤー、イヤホン、ヘッドホンなどがあふれんばかりに並んでいるがパッケージソフトは全く見られない。このため現時点ではハイレゾソフトを入手するためには音楽配信サービスを利用することになる。

様々な障害があるハイレゾ音源の入手環境

音楽配信サービスを利用するには、パソコンやスマートホンが必要になり誰でも簡単にハイレゾ音源を入手できる環境とはいえない。パソコンを使わずにハイレゾ音源を入手できる環境を整えて行くことが必要になる。さらに、ハイレゾ音源のファイル形式が複数混在していることもオーディオ初心者にとって難しさを与えている。また、サンプリング周波数や量子化ビット数の数値へのこだわりが必要以上に強調されていることも幅広くオーディオファンに受け入れづらくさせている。ハイレゾ音源として販売されているものの中には、アナログマスターからデジタルマスタリングされた音源やCD規格で収録した音源をハイレゾ化したものも含まれている。

クラッシック界からハイレゾオーディオ時代へ広がる可能性が

一方、クラッシック界ではベルリンフィルが定期演奏会において96kHz/24bitのPCM録音を行っておりハイレゾで収録している。これをCDとしている他、ハイレゾによる配信も予定されている。これが他のオーケストラへも広がる可能性があり、クラッシック界からハイレゾオーディオ時代へと広がる可能性もある。さらにテレビ放送においては4K、8K放送が始まり映像のハイレゾ化が進んでいる。映像だけが進化しても音声は従来のままでは本当の臨場感が得られない。このため国際標準MPEG-4ALSによるハイレゾ音源ロスレス伝送の検討、実験がなされている。

音楽ソフト総生産で前年を下回り、音楽配信売上は前年を上回る

日本レコード協会では毎年音楽ソフトの生産・音楽配信数を集計しているが2019年の統計ではまだハイレゾに関する項目は設けられていない。パッケージ系ではオーディオレコードと音楽ビデオがあり、音楽配信においてはダウンロード、ストリーミングに分けて調査されているので、この中にハイレゾ音源の配信も含まれている可能性はある。それによると最新の2019年は、オーディオレコードは下回り、音楽ビデオを含む音楽ソフトの総生産は、数量では前年比93%の1億8,067万枚/巻、金額で同95%の2,291億円と共に前年を下回っている。これに対して音楽配信売上は前年比110%の706億円と6年連続で増加している。

音楽ソフトはCDなどのパッケージ系から音楽配信へと移行

この統計結果を分析してみると、音楽ソフトがCDなどのパッケージ系から音楽配信へと移行していることがわかる。さらに、音楽配信の中でもダウンロードが9.429万ダウンロードで前年比88%と下降傾向にあり、ストリーミングは金額で465億円、前年比133%となっている。音楽配信金額シェアでは、ダウンロード32%、ストリーミング66%となっておりダウンロードからストリーミングへと移行しつつあるのが分かる。

音楽配信の影響を受けCDレンタル店の減少続く

この傾向はCDレンタル店の経営にも大きな影響を与えている。日本レコード協会では、CDレンタル店調査を毎年実施しているが、2019年度の調査結果によるとCDレンタルの店舗数は、1989年末の6,213店をピークに減少しており、2019年は前年比7.9%減の1,882店となっている。ピークだった1989年末と比較すると30.3%の水準まで減少している。また、2009年のCDレンタル店数は2,893店であったのが、その後の10年間で1,000店以上減少している。

CD、ビデオレンタル以外のサービスを拡大するCDレンタル店

CDレンタル店数の減少要因は、やはりCDレンタルの利用者数の減少である。2000年代のCDレンタル店の開業数は年間平均300店程度だが、閉店数は平均400店と、実に年間約100店の減少となっている。さらに2010年代に入ると開業数はさらに少なくなり100店以下の年もある。閉店数は年間平均200店ほどになったが、開業数と閉店数の差は年平均100店もあり、CDレンタル店数の減少傾向は続いている。こうした状況を打破するため、CDレンタル客の減少対策として書籍・コミックのレンタル・販売、ゲーム販売、文具販売などで売上減をカバーする動きが出ている。CDレンタル店ではCD・ビデオレンタル以外のサービスを拡大することで経営の安定を目指しているのが現状だ。 
 

写真:CDレンタル店数は音楽配信サービスの影響を受け減少。本や文具などの販売で売上確保へ 

参考資料:日本レコード協会統計資料、JASjournal(日本オーディオ協会編)