1992年に通信カラオケが初めて登場

今ではカラオケと言えば、通信カラオケがあたりまえになっているが、タイトーが通信カラオケ「X-2000」を発売してからだ。そして、同年にはエクシングも通信カラオケ「JOYSOUND JS-1」を発売し追従している。さらに、日本映像システムも通信カラオケ「K-シス」を発売した。このころはまだLDやVHD、CDなどのディスクメディア使った動画カラオケ全盛期で、パイオニアの「レーザーディスクカラオケ」がカラオケ市場をリードしていた時期だった。

1993年には通信カラオケ市場に新規参入企業が相次ぐ

そして、翌年の1993年になるとギガネットワークスが通信カラオケ「マイステージ-MSシリーズ」を発売しカラオケ事業に参入した。先発のエクシングでは通信カラオケの第二弾「JOYSOUND JS-2」と集中管理システム「JS-1000L」を発売し製品ラインアップを強化している。この時には通信カラオケの収容曲数は5,000曲に達している。また、エクシングが直営のカラオケ店“ソルフア”事業を開始したほか、大阪有線放送が直営カラオケルームを始めカラオケ市場に参入している。

1994年に第一興商が通信カラオケ「DAM」を発売

さらに、1994年に入ると第一興商も通信カラオケ「DAM」と集中管理システム「DAMNET」を発売した。また、セガ、タイカン、クラリオングループでは通信カラオケ「プロローグ」を発売している。そして大阪有線放送社では通信カラオケ「U-kara-CO01」を発売した。このほか、シーティエーが通信カラオケ「NET-7000」を発売するなど、新規参入が相次いでいる。むろん通信カラオケ市場で先行していたタイトーは「X2000PRO」を、エクシングも「JS-20」を発売し相次いで新製品を投入、通信カラオケ市場はヒートアップして来る。

また、日光堂も集中管理システム「M1」と赤外線ワイヤレスマイクシステム「WT-5000」を発売し注目される。一方、レーザーカラオケでカラオケ市場をリードしていたパイオニアは、CDサイズの動画カラオケ“アルファビジョン”「AAC-V6」を発売、これに対応してソフト面では東映がマルチカラオケソフトと多機能な集中管理システム「C3」を発売した。こうしたカラオケ市場の動きに対して、パイオニアはレーザーカラオケでカラオケ市場をリードしていただけに、通信カラオケ市場に参入するのが遅れることになった。

1995年にパイオニアや日本ビクターも通信カラオケ市場に参入

1995年に入っても通信カラオケ市場は新製品ラッシュとなった。セガ、タイカン、クラリオングループが通信カラオケ「スーパープロローグ21」を発売した。さらに、エクシングはナイト市場向けの通信カラオケ「MJ-10」や、ホテル向けの通信カラオケ「JS-200L」、宴会場向け移動式カラオケシステムを発売するなど個別のユーザー向けの製品を発売し、きめ細かな市場対応を行っている。通信カラオケ市場への参入が遅れていたパイオニアや日本ビクターもついに重い腰を上げることになる。VHDカラオケやCD動画カラオケといったパッケージ系のカラオケに力を入れていた日本ビクターは、傘下のビクターレジャーシステムが通信カラオケ“孫悟空”「MK-T100」を発売し、通信カラオケ市場に参入した。さらに、レーザーカラオケでカラオケ市場において圧倒的なシェアを誇っていたパイオニアも、ようやくJHCや東映ビデオ、日光堂と共同で通信カラオケ市場に参入し“ビーマックス”「MCO-V3」を発売した。

パイオニア、日本ビクターの参入で通信カラオケ全盛時代に

パイオニアや日本ビクターといったパッケージ系メディアでカラオケ市場をリードしてきた企業が通信カラオケ市場に参入したこともあって1995年には通信カラオケ全盛時代を迎えた。このほかの動きとしては、ワキタが通信カラオケ「SynCom」を発売。また、エクシングではカラオケ画面の背景動画を再生するプレーヤー「JV-2」を発売している。ビデオCD(VCD)4枚が入っており、曲に応じた背景を映し出すことができた。この時、通信カラオケ収容曲数は1万曲を達成した。
 

CATVやパソコンを使ったカラオケサービスが始まる

この年、新しい動きとしてCATVやパソコンを使ったカラオケサービスも注目され、カラオケ市場は多様性に富んできた。エクシングはCATV局向けのカラオケチャンネルを開発し、四日市ケーブルテレビで放送を開始している。一方、パソコンを使ったカラオケサービスにおいては、通信機やコンピューター、パソコンの大手である富士通がパソコンを使ってカラオケが楽しめるCD-ROMソフト「CDシングル大集合」を発売した。このほか、マスターネットもパソコン通信でカラオケの配信サービスを開始しており、カラオケ市場のすそ野は広がり大きな産業と言えるまでに成長してきた。証券業界においてもカラオケ市場への参入企業が増え、大きな市場となってきたことに注目しており、1993年にはタイトーが東証二部に株式上場、1995年には第一興商が株式の店頭公開を行っている。

参考資料:一般社団法人 全国カラオケ事業者協会HP、レジャー白書、JASRAC(一般社団法人 日本音楽著作権協会)、カラオケを発明した男(大下英治著 河出書房新社)、カラオケ秘史(烏賀陽弘道著 新潮社)、カラオケの科学(中村泰士著 はまの出版)、カラオケ王国の誕生(朝倉喬司著 宝島社)、笑う科学イグ・ノーベル賞(志村幸雄著 PHP研究所)、外国語になった日本語の事典、白鵬大学論集(柳川高行氏)、文化庁HP、日本ビクターの60年(日本ビクター編)、「SOUND CREATOR」(パイオニア編)、他