[20mクランクアップタワー]

熊本市清水町新地の賃貸住宅に住んでいた時代は、立石鋼管製の15m2段クランクアップタワーにTA-33jrを乗せてDX通信を楽しんでいたが、1972年に近くの楡木にマイホームを新築し引っ越しをした。その際、全長20mの3段クランクアップタワーを新築したマイホームの庭先に再建した。そのタワーは、地元熊本の鉄工所が作ったオリジナルタワーで、アマチュア無線ショップの熊電総業がクマデンタワーという名前で販売していたものであった。

浅井さんはこのタワーを1992年までの20年間使用した。それまでの成果は、連載第7回でも紹介したとおり、DXCC現存全エンティティとの交信を達成するなど、めざましいものであった。しかし、20年も使用すると各部に錆が目立ち、危険を感じるようになってきたため、浅井さんは亜鉛ドブ漬けメッキのタワーに建て替えることを検討した。

photo

アンテナの載せ替え作業中。左端にクランクアップタワーの一部が見える。

[亜鉛ドブ漬けメッキ]

次のタワーも高さは同じ20mで、今度は亜鉛ドブ漬けメッキの3段クランクアップタワーにした。またタワーの場所を変更したため、古いタワーの基礎を撤去する必要があった。地中から基礎を引き抜く際、クレーン車でコンクリートの塊ごとつり上げだが、「予想以上の重量でクレーン車がひっくり返りそうになり、危なかったです」と浅井さんは話す。

亜鉛ドブ漬けメッキの新しいクランクアップタワーに建て替えた後、まずは14MHzの4エレメントフルサイズ八木(ハイゲインの204BA)を載せた。このアンテナは大変良く飛び、大きな成果を上げたという。その後、21/28MHzのデュアルバンド4エレメント八木(クリエイト218A)を追加で載せて、3バンド体制とした。この頃は7MHzには出ていなかったが、当時はサイクル22の最盛期を少し過ぎた頃で、コンディションも良く、3バンドで十分に楽しめた。

[さらなる建て替えは断念]

このタワーを4年間使用した後、1996年にはさらに強度のあるFTIのクランクアップタワーへの建て替えを検討し、Tri-Exの21m4段のクランクアップタワーを購入した。タワーの建柱位置は、使用中のタワーと同じところを予定していたため、基礎を流用しようと考え、まずはアンテナを一旦すべて下ろし、クレーン車でタワーを撤去する予定を組んだ。

アンテナ下ろし終え、いざタワーを撤去しようとしたところ、基礎アンカーとタワーの最下段を接続するボルトの一部まで、基礎のコンクリートで埋まっていた。そのため、すべてのボルトを外すことができず、基礎のコンクリートの一部をはつるしか方法がなかった。しかし、コンクリートを削岩機で砕く際に大きな音がするため、近所に迷惑がかかるとして家族からの大反対があり、大喧嘩となって浅井さんは立て替えを断念し、Tri-Exは庭の片隅で寝かせて置かざるを得なかった。

[タワー売却]

しばらくの間はせっかく購入したニュータワーの建柱をあきらめきれなかったが、2年も経つと「もう売ってしまおう」と思うようになった。1998年の九州DXersミーティングの席上で、購入希望者が居ないか、事情を説明したという。ミーティングの席上では手が上がらなかったものの、数日後に福岡の局から問い合わせの電話がかかってきた。価格の折り合いも付いたため交渉が成立し、その局に引き取ってもらうことにした。

Tri-Exのタワーも亜鉛ドブ漬けメッキのため錆も皆無で、さらに未使用だったため、まさに新品同様であった。さらに、浅井さんが購入した2年前とくらべると、タワーの価格が上がっていたため、ほとんど目減りもなく、購入した価格とほぼ同じの価格で引き取ってもらえたという。

結局浅井さんは、1992年から2010年に現在に至るまで、現用のクランクアップタワーを使い続けている。18年間の間にワイヤーは3回交換したが、本体に錆は出ていないという。ワイヤー交換については、「3回目はステンレスワイヤーに交換したため、当分交換の必要はありません」と話す。

[アンテナ載せ替え]

アンテナは、204BAと218Aを使って3バンドの運用を楽しんでいたが、サンスポットサイクル22が終盤となり、ハイバンドのコンディションが落ちてきたことを契機に218Aを下ろして、7MHzの2エレメント八木(クリエイトのAFA40)を上げ、従来の204BAと組み合わせて7/14MHzの2バンド体制とし、サンポットボトム機を運用した。

その後、サンスポットサイクル23が始まると、再び21/28MHzに出るため、一旦全部下ろして、14/21/28MHz5エレメント八木(ナガラのTA-351)を上げた。しかし、AFA40を下ろして7MHzに出られなくなってしまったため、3.8/7MHz用デュアルバンドバーチカル(クリエイトのCV48)を上げた。短縮型とはいえ2エレメント八木からバーチカルへの変更は、相当なグレードダウンとなり、結果的に、「全然飛ばず話になりませんでした。ラジアルを十分に張らなかったのも原因かも知れません」と、浅井さんは話す。

その後は、TA-351を、ミニマルチの6エレメントトライバンド八木に載せ替えたものの、期待した飛びではなかったため、数ヶ月でこのアンテナを下ろして、再びTA-351を復活させた。しかし、今回はラジエーターを7MHz付きのものに変更し、7MHzがダイポール動作、14/21/28MHzが5エレメント動作となる、TA-351-40として上げた。

その後は、WARCバンドにも出るため、10/18/24MHz用ロータリーダイポールアンテナ(ナガラのTD-1230)を追加し、7〜28MHzの7バンドに出られるようにした。さらに、後年、タワートップに50MHz用5エレメント八木を追加し、2010年の今に至っている。

photo

2010年現在の浅井さんのアンテナシステム。