[提案]

1998年10月にKH0/N3JJの運用を行った時の印象が良かったこと、KH0と言えども結構なパイル捌きを楽しめたこと、レンタルシャックのあるホテルの施設は家族連れでも楽しめること、そして何よりも無線機やアンテナなどが現地に準備されていることなどを理由に、海老原さんは、1999年1月の京都クラブ新年会で、「KH0へ行きませんか」と提案した。

その時は、個人的な海外運用として同行者を募る程度の気持ちで提案したつもりだったが、4月の京都クラブ総会で、クラブの正式行事として実施することに決定した。そのため、さっそくクラブのメーリングリストや会報で参加者を募集したところ、続々と連絡があり、最終的にJH3QNH山下さんファミリー3名、JA3AJ小川さん、JA3RR坂口さん、JA3KWZ黒塚さん、JH3TXR山本さん、JF3PLF杉浦さんと海老原さんの9名で実行することに決まった。

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参加者全員でのスナップ。

[旅行の手配]

旅行とレンタルシャックの手配は、前回の懸賞旅行を取り扱ってくれた東京の旅行社に依頼した。日程について自分たちの希望日を伝えたところ、レンタルシャックは大人気で、7月28日までは岩手の盛岡クラブが既に予約済とのことで、7月29日から8月2日までの4泊5日の旅行として予約を入れた。幸運にも盛岡クラブが使った状態をそのまま京都クラブが引き継いで使用する日程が確保できたことで、アンテナの設置やリグなどをセットアップする必要がなかった。

最終的な参加者が決まった段階で具体的な打ち合わせに入ったが、無線設備のほとんどは現地のレンタルシャックにあるので、自炊用食器や殺虫剤など、日常生活用品の割り当てくらいであったという。ただし、山下さんだけはファミリーでの参加のため、レンタルシャックのコテージではなく、通常の部屋を予約したため、その部屋からオンエアすべく自前のリニアアンプを持参することになった。

海老原さんは前回の経験で、ダウンタウンへの買い物や観光で外出した場合に、連絡用のトランシーバーがあったらベターと感じていたため、430MHz用のグラウンドプレーンアンテナ(最終的に寄付して帰国)と430MHzのハンディトランシーバー3台を持ち込むことにした。旅行とレンタルシャックの手配以外に、旅行傷害保険の手配等も発起人である海老原さんが連絡役となってすべてを担当した。全員分の無線局免許のコピー、レンタルシャック利用申込書、レンタルシャック利用に関する誓約書、旅行傷害保険の書類作成、パスポートのコピーなどを漏れなく揃える必要があったという。

[出発]

前年の1回目の時とは違い、早めに旅行社から航空券が届いたため、7月25日に会報印刷のために全員が集まった時、チケットと保険証書を参加者に渡すことができた。1回目は往路復路ともコンチネンタル航空の深夜便だったが、今回はJALを使い、往路は、7月29日(木)09:15関西空港発、13:40サイパン着のJAL949便 、復路は8月2日(月)15:10サイパン発、17:40関西空港着のJAL940便という、何れも直行便で、時間的にちょうど良い便を選んだ。

出発当日は、関西空港4階の出発カウンター前に午前7時に集合することとした。参加メンバー全員が京都周辺に在住していたが、関西空港へのアクセスがまちまちだったからだった。JA3KWZ黒塚さんと、JH3TXR山本さんはJRで向かい、JA3RR坂口さんとJF3PLF杉浦さんは空港リムジンバスで向かった。JA3AJ小川さん、JH3QNH山下さんファミリーと海老原さんは、空港シャトルタクシーに乗り合わせて、関西空港に向かった。

全員が集まったところで、なりゆきで添乗員状態になってしまった海老原さんが全員のパスポートと搭乗券を集め、チェックインの手続きを行った。ところが坂口さんがなかなかやって来ない。機内預けのレントゲンの検査台のところに様子を見にいくと、スーツケースを開けさせられて荷物を全部チェックされていた。なんと、現地で調理に使うつもりのガズボンベをスーツケースに大量に入れていたとのことだった。もちろんガスボンベなど預かってくれるハズが無く、廃棄処分に同意したという。

その他、山下さんはリニアアンプを機内持ち込みしようとした際に、搭乗ゲートの係員に「重そうですが、これは何ですか?」と質問され、山下さんは「オーディオのアンプです」と説明して、半ば強引に機内持ち込みにしていた。往路は定刻出発とはいかず、2名がまだ搭乗してないとのことで、結局30分遅れで出発した。その2名は、空港内で相当迷っていた様子で、汗をかきながら搭乗してきた。

サイパン行きのJAL機内ではビンゴゲームが行われ、黒塚さんに置時計が当たった。この時計はサイパンでの実運用時にオペレーションデスク上に置かれ、手書きログ記入に大いに役立つことになる。サイパン空港にはほぼ定刻に到着した。入国手続きは前回同様何も問題なくすぐに終わって、ホテルからの迎えのマイクロバスに全員が乗車して、レンタルシャックに向かった。

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サイパン空港に到着。

[運用]

このレンタルシャックは、本来なら、到着後にアンテナを設営したり、無線機器のセッティングをしたりしないといけないところだが、当日の朝まで盛岡クラブが使用し、事前の打ち合わせで、そのままの状態で引き継いだため、到着したらすぐに運用できる状態になっていた。海老原さんはさっそく京都クラブのメンバーとのスケジュール周波数に設定していた21.210MHzでKH0/N3JJのCQを出した。何度かのCQの後、メンバーのJH3BUM石原さんから応答があり、1stQSOが成立した。

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運用中の小川さん(左)と海老原さん(右)。

アンテナについては、前年の運用時にはなかったクランクアップタワーが建っており、そのタワーに14/21/28MHz用の2エレメントHB9CVアンテナと、50MHz用の6エレメント八木アンテナが乗っていた。庭先のルーフタワーには、10/18/24MHz用の2エレメントHB9CVアンテナが乗っており、ワイヤーアンテナとして、3.5MHz用と7MHz用のダイポールアンテナが展開されていた。

その後の運用はKH0/KF8TW(JH3TXR山本さん)に任せて、残りのメンバーはレンタカーを借りて、ダウンタウンへ買い物に出かけた。買い物から戻ると、山本さんが、「WARCバンド用のアンテナの動作がおかしい」という。たまたま、QSOできた盛岡クラブのメンバーにこの事を確認するも、彼らの運用中に異常はなかったとのことだった。同軸ケーブルを交換してみたところ、正常に電波は出ているようだが、アンテナアナライザーでチェックすると共振点が確認できなかった。

いろいろ原因を探っているうちに、近くに放送局の送信所があり、どうもそこからの強力な電波がアナライザーに回り込んでいる事が判明した。そのためアンテナそのものには異常はないと判断して、運用を継続した。「この現象は、後年、ミクロネシアから運用した際にも経験しました」と海老原さんは話す。

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アンテナアナライザーに影響を与えた放送局のアンテナ。