[パラオを再訪]

1回目のパラオでの運用からわずか半年後の2000年3月、海老原さんは再びパラオに向かった。きっかけは、JA3UB、JR3MVF三好さん夫妻から「JLRS(Japan Ladies Radio Society)でパラオからの運用を考えており、下見を兼ねて一度ぜひご一緒させてほしい」という話があったからだった。それに有効期限1年間のパラオの無線局免許が4月で切れるため、免許更新の目的も兼ねて渡航することにした。メンバーは三好さん夫妻と海老原さんの3名となった。

日程は、関西空港発着のJAL臨時便のスケジュールに合わせて2000年3月15日から20日までの6日間を設定した。「関西在住者には、このJAL臨時便の利用が乗り換えもなく一番便利ですが、滞在日数が決められてしまうことと、フライトスケジュールがあまり前から決まっていないことが多少ネックになります」と話す。海老原さんにとって今回は2回目のパラオなので、「気持ちにも余裕があり、比較的ゆっくり楽しむことができました」と話す。

[着陸トラブル]

今回は深夜便だったが、パラオ国際空港への着陸時、シートベルト着用サインの点灯や、車輪を下した時の音、またフラップを出す油圧ポンプの音が聞こえ、まもなく「本機は着陸態勢にはいります」とアナウンスが流れた。すると、機体は急にエンジンの回転を上げて上昇を始めてしまった。機長からの「視界不良のため、着陸を再行します。着陸時間が30分程度遅れることをご了承ください」との機内アナウンスが流れた。結局、着陸をやり直して定刻より30分程度遅れ、パラオに到着した。「2回目の着陸はあまり気持ちのよいものではありませんでした」と海老原さんは話す

入国管理カウンターを出ると、pia-japanのスタッフであるスイングリーさんが、待っていてくれた。「飛行機遅れたね。着陸やり直しただろう。JALはよくあるんだよ。いままでの最高記録は5回もやり直したよ。もしパラオに着陸できなくてもグアムまでの燃料は残っているので大丈夫。でもコンチネンタルのパイロットは慣れているから、めったに着陸のやり直しはしないね」と流暢な日本語でしゃべりかけてきたのが印象的だった。海老原さんら3人は、スイングリーさんの運転する送迎車で、VIPホテル向かった。

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今回も利用したVIPホテル。

[無線機の設置]

今回のJAL臨時便は深夜発着便だったため、実質的な運用期間は16日から19日までの4日間となった。ただし、無線設備に関しては半年前とは状況が大きく変化しており、宿泊したVIPホテルにはpia-japanのレンタルシャックが設置され、オーナーであるジョージさんのアンテナを借用しなくても、使用料金は若干かかるが、pia-japanが用意したレンタルシャック用のアンテナシステムを使うことができた。

VIPホテルでは、三好さん夫妻が302号室のツインルームに、海老原さんが301号室のシングルルームに宿泊したが、301号室のベランダにはレンタルシャック用の全アンテナからの同軸が引き込まれた中継ボックスが設置され、そこから301号室もしくは302号室へ希望するアンテナの同軸ケーブルが引き込める様になっていた。それぞれが持参したRIGを各自の部屋にセットアップした。

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同軸ケーブルの中継ボックス。

今回は2部屋に別れての運用だったので、お互いに430MHzのハンディトランシーバーの電源を24時間入れておき、430MHzで連絡を取りながらお互いの運用状況を確認し、アンテナを選択したという。ただし、ローテーターのコントローラーは海老原さん側の301号室に置き、430MHzで三好さんからアンテナ方向変更の依頼があった時に海老原さんが対応した。

[無線運用]

レンタルシャック用に設置されたアンテナは、10MHz用のワイヤーダイポール、18/24MHz用の2エレ八木、14/21/28MHz用の4エレ八木、50MHz用の5エレ八木であった。ただし、10MHz用のダイポールは未調整だったため、到着翌日の3月17日、小雨の中で海老原さんが調整し、6.4MHzに同調していたアンテナを10.120MHzに合わせた。なお、ローバンド用のアンテナが無いことが事前に分かっていたため、1回目と同じ3.5/7MHz用ダイポールを持ち込んで設置した。

使用したリグは、海老原さん(T88JJ)がIC-706MK2Gで100W運用。三好夫人(T88KM)がTS-50で100W運用をおこなった。ご主人であるJA3UB三好さんは今回は免許も取得せず、もっぱら昼寝と夫人のログ入力で過ごしていたという。VIPホテルのレンタルシャックには、pia-japanが用意している無線機もあったが、万一のことを考えて、今回も日本から持参し、使いなれた無線機で各自運用を行った。

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301号室に開設したT88JJのシャック。

T88KMは、YLによる運用なので、すさまじいパイルアップが起こった。三好夫人は世界各地で行われるYLRL(Young Ladies' Radio League)の催事によく参加していることもあり、YL関係者の間では世界中に知られているため、懇意の局からしばしば呼ばれ、パイルアップそっちのけでラグチューを楽しんでいた。また、コンディションが良かったので、T88KMとSKDを組んでいたすべてのヨーロッパの局とQSOに成功したという。

T88JJを運用した海老原さんは、前回運用を行わなかった10MHzや、その他のWARCハンドを中心に運用したが、コンディションが良く、どのバンドでもパイルを楽しめたという。最終的にT88KMはSSBのみで1400QSO、T88JJはCWを中心に2021QSOを行った。