[デイトンハムベンション]

毎年5月、米国オハイオ州デイトンで開催される世界最大級のアマチュア無線の祭典である「デイトンハムベンション」。1952年から毎年開催されており50年以上の歴史を持っている。出展企業は約200社と言われ、さらに屋外にある約1000台分の駐車スペースがフリーマーケット(Flea Market 蚤の市)になる。海老原さんは、1999年に初めて参加してから、これまでに合計4回参加している。

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1999年のガイドブック。

海老原さんがこの祭典の話を知ったのは古く、昔から一度は行ってみたいと思っていたところ、1998年の終わり頃、JA3AJ小川さんから、JJ3UHS/JM3JOW川島さん夫妻を中心に、デイトン行きの話が進んでいることを聞いた。これはチャンスと思い、海老原さんは「ぜひメンバーに入れて欲しい」と願い出た。最終的な参加メンバーは、JA3AJ小川さん、JA3RR坂口さん、JJ3UHS川島さん、JE3MVP高田さんに海老原さんを加えた5名となった。JM3JOW川島夫人は直接参加しなったが、裏方に回って骨を折ってくれた。

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左からJJ3UHS、JE3MVP、JA3AJ、JA3ART、JA3RR。トロイのホテルにて。

[出発準備]

年が明けた1999年1月ころから川島さん夫妻が、滞在ホテルや航空券チケットの手配などを始めた。メンバー全員、デイトンに行くのが初めてだったため、何度も川島さんの職場に集まって綿密な打ち合わせを行った。ハムベンションの開催日程は、金土日の3日間で、1999年は5月14日(金)〜16日(日)の開催だった。これに合わせて、5月12日(水)出発、17日(月)帰国というスケジュールを組んだ。

今回の旅行に使った航空会社はノースウェスト航空(現在のデルタ航空)で、宿泊ホテルは、デイトン市内のホテルがどこも満室だったため、川島夫人がネットで検索し、ハムベンションの会場から約20マイル(約32km)離れたトロイ市にある、マリオットホテルグループ直営店である「レジデンスイントロイ」に予約を入れた。このホテルは、キッチン付きの長期滞在型ホテルで、大型冷蔵庫、洗濯乾燥機、電子レンジ、炊飯器、ガスレンジ、食器などが備わっており、部屋も広く、綺麗なホテルであった。

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レジデンスイントロイ。

ホテルから会場まで20マイルあることから、海老原さんらはデイトン空港でレンタカーを借りる予約をしておいた。レンタカーには5人が乗車し、さらにスーツケースなどの大型荷物も載せるため、大型のワンボックス車を借りた。料金は保険料込み1日100ドルで、全日程分の5日間借りて500ドルだった。

もし、デイトン市内のホテルを予約できたとしても、郊外にあるハムベンションの会場までタクシーを利用すれば、往復で50ドル程度かかり、5人なので毎回2台必要となるし、帰路は会場でタクシーを拾うのが容易ではない。その他、ハムベンション会場以外の場所に観光に行くのにもすべて往復タクシーを利用すると、それ以上の費用がかかってしまうため、「レンタカーを借りたのは、正解だったと思います」と海老原さんは話す。

[出発当日]

出発日の5月12日午前11時、メンバー全員はJR京都駅の関空特急「はるか」が発着する30番ホームに集合した。「はるか」に乗車し、関西空港到着後は余裕をもって搭乗手続きを終え、搭乗券を早々に確保したのでそば屋で遅めの昼食を摂りながら、EDカード(出入国記録カード)を書いたりして時間をつぶした。

今回のフライトは関西空港からデトロイトメトロポリタン国際空港までが約13時間、デトロイトで国内便に乗り換え、デイトンまでが約50分。2時間前のチェックインや乗り換え待機時間を考えると、自宅を出てからデイトン近郊のホテルにチェックインするまで、ゆうに20時間を超えるため、「日本からデイトンは遠いなあ」という印象を持ったと海老原さんは話す。

海老原さんらが搭乗したノースウエスト航空のNW070便は、関西空港を定刻の15:40(日本時間)に出発し、15:00(現地時間)にデトロイトに到着した。いつもは遅れがちという印象を持っていたノースウエスト航空だったが、定刻に到着した。デトロイトは、ノースウエスト航空のハブ空港だったので、どこを見ても特徴ある塗色のノースウエストの機体ばかりだった。海老原さんらは、広いデトロイト空港内を、国際線到着ロビーから国内線出発ロビーまでバスで移動したが、本来なら最終目的地まで運んでくれると思っていた関西空港で預けた手荷物を一旦受け取り、もう一度、X線での荷物検査を受けて国内便への機内預け手続きを行う必要があったという。

[デトロイトで乗り換え]

デトロイトでは乗り換えに2時間30分の待ちになったため、ロビーでゆっくりコーヒーを飲んでいた時、隣に座っていた外国人から声を掛けられた。話しかけてきたのはF8IPHビルさんで、彼もハムベンションに行く途中で、同じ飛行機を待っていたのだった。ビルさんとはアイボールQSO用にと持参していたQSLカードを交換し、デイトンまでいろいろな話で盛り上がった。

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左からJA3ART、F8IPH、JJ3UHS。デトロイトの空港にて。

海老原さんは、JA3ART、N3JJ、V73AR、3W6JJ、KH0/N3JJのQSLカード5枚をセットにして渡したところ、ビルさんはREF(フランスのアマチュア無線連盟)の機関紙に載せると言っていた。また、フランスからはおそらく1〜2名くらいの参加しかないだろうとの事だった。

デトロイトからデイトンまでのフライトに使用される機材は、双発プロペラ機(ターボロップ)と思っていたところ、実際にはRJ―85という高翼の小型機で、60人乗りのスタイルの良い4発ジエット機であった。「珍しい機材に乗れたので飛行機マニアの私としては大満足でした」と海老原さんは話す。

搭乗してからひとつハプニングがあった。エンジンが始動し、間もなく出発と思っていたところに突然、「座席が3席不足しているため、次の便に乗り替えて頂いた方には200ドルを差し上げます」と機内アナウンスか流れた。「急ぐ旅でもないので、私一人であれば200ドルもらって次の便に乗り替えたかもしれません」と海老原さんは話す。以前にニューヨークからアリゾナのフェニックスまでの搭乗でも同じことを経験しており、米国の国内便では、座席のオーバーブッキングはよくある事と聞いた。

[デイトンに到着]

定刻どおり現地時間の18:30、海老原さんらはデイトン空港に到着し、機内預けの荷物をピックアップした後、予約を入れておいたエイビスレンタカーの空港営業所でワンボックス車を借り受け、ホテルのあるトロイ市までの約20マイルを高速7号線で移動した。トロイ市に入ってからは、中華レストラン「東京北京」で夕食を摂ったため、ホテルにチェックインしたのは21時になっていた。

ホテルにチェックイン後は、明日からの予定の打ち合わせを行い、長旅の疲れもあって早々に床についた。このトロイ市は高層ビルが全くない静かな田園風景の田舎町で、ホンダの工場があることでも知られている。市内には大型ショッピングモールが2ケ所あり、海老原さんらはここで夕食の食材などの調達を行ったという。

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ホテル「レジデンスイントロイ」の室内。調理台まである。