[ミリに向かって移動]

ブルネイで開催された第27回SEANETコンベンションは11月20日のガラディナーで幕を閉じ、海老原さんら関西から参加の11名は、翌21日あらかじめ予約手配しておいた運転手付きのマイクロバスで東マレーシアのミリに向かった。人口約21万人のミリはサラワク州では州都クチンにつぐ大都市で、中国系の住民も多く「美里」という漢字表記も併用されている。

また、ミリは1910年にマレーシアで初めて油田が発掘されて以来、「オイルタウン」と呼ばれ、石油産業によって発展してきた歴史を持つが、近年では、石油依存の産業構造から転換を図り、国際観光都市を目指している。現在ミリでは、海外から年間約200万人の海外旅行客を迎えているが、その多くは地理的に隣接しているブルネイからの観光客である。「ブルネイは禁酒国のため、ブルネイのお金持ちが、週末に大挙して車で買い物やお酒を飲みにやってくる様です」、「ミリには人口の割に大きなホテルが沢山ありますが、週末のブルネイからのお客さんで経営が成り立っているそうです」、と海老原さんは話す。

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高層ホテルが立ち並ぶミリの海岸。

ブルネイから東マレーシアへの国境を越えてすぐのところにあるミリは、SEANETコンベンションが開催されたブルネイの首都バンダルスリブガワンから南に約250km、バスで4時間の距離だった。海老原さんらは、コンベンションに参加した9M8DBジョニーさんの運転するパジェロに先導してもらい、マイクロバスに乗ってミリに向かった。ブルネイ国内では海岸に沿った高速道路かと思うほど素晴らしい一般道路を快調に走り、3時間ほどで到着したブルネイ最後の町クアラブライトで、給油とトイレ休憩のために20分ほど停車した。

その日、ガソリンスタンドの前の大広場では、原色の綺麗な民族衣装をまとった人達によるパーティが開かれていた。聞くところによるとそのパーティは結婚式で、その辺りの結婚式では、親族縁者はもちろん近所の人達も招き、2日2晩、盛大にお披露目をするとのことだった。ガソリンスタンドを出発すると、いよいよブルネイとマレーシアの国境ゾーンに到着した。

[出入国ゲート]

海老原さんらは、一旦バスから降りて、出国審査場の建物に入り出国手続きを行った。ブルネイからの出国手続きは、入国時にも提出していた出入国カードの提出とパスポートチェックだけで、質問も荷物検査もなく簡単に通過できた。その後再度バスに乗車し100mほどのニュートラルゾーン内を移動して、今度はマレーシア側での入国審査ゲートでバスを降りた。「陸上の国境でこのように出入国のゲートが離れているのは珍しいです」と海老原さんは話す。

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ブルネイ側の出入国ゲート。

入国ゲートは5レーンあり、そのうち4レーンはマレーシア人とブルネイ人専用となっており、残りの1レーンがブルネイ人を除く外国人用だった。海老原さんらはこのレーンに並び、順番を待ってパスポートチェック受け、出入国カードをもう一度提出した。この入国ゲートでも荷物検査は無くすんなりと通過できた。

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マレーシア側の出入国ゲート。

ブルネイ側の出入国ゲートもマレーシア側の出入国ゲートも、検査官は全て頭に布を巻いた女性だった。「飛行機で入国する場合は、出入国カードに飛行機の便名を記載しますが、バスで入国の場合はそのバスのナンバープレートの登録番号を書かされました」、「週末は、ブルネイからの入国者が多いため、延々と車列が続き、通関に1〜2時間はかかってしまうそうです」と海老原さんは話す。

[マレーシアに入国]

マレーシアに入国すると、道路状況がかなり悪くなり、道幅も狭くなった。「ブルネイ側は道路が良かったので居眠りするメンバーが多かったですが、マレーシア側ではとても居眠りできる状況ではありませんでした」と話す。さらに、車窓から見える景色も殺風景なものに変化していった。特に1997年に発生した大規模森林火災による降灰で枯れ、葉をつけてない樹木が林立しているのが多々目に入った。

マレーシアに入り30分ほど走り、大河のところでバスが停車した。その川には橋が架かっていないためフェリーに乗って渡り、フェリーから下りてしばらく走るとミリの町に到着した。それまで殺風景なところを走ってきたが、市街地にはいると、中央に椰子の木やハイビスカスを植えたグリーンベルトのある片側2車線のきれいな道路に整備されていた。

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フェリーに乗って大河を渡る。

また、土地に余裕があるせいか十字路は少なく、主要な交差点ではロータリー方式が取り入れられていたため、車の流れはスムースだった。通行レーンは日本と同じ左側通行のため、車は右ハンドルだった。「ただ、運転マナーは良くなさそうで、一方通行の逆行や一旦停止をしないための事故が多発している」と聞いた。海老原さんらは、ほぼ予定どおりの16時に宿泊先となるホリデーインミリに到着した。

[ホリデーインミリ]

このホテルを選んだ理由の一つは、9M8DBジョニーさんがホテルの電気設備やコンピューターシステムの仕事を請け負っている関係で支配人と懇意であることだった。そんなこともあって滞在中はホテルスタッフが大変親切に対応くれた。ホテルに到着するとウエルカムドリンクのサービスがあり、各人の部屋割りを確認してルームキーを受け取り、以後の行動の打ち合わせを行った。その間にホテルスタッフが荷物を各人の部屋に運んでおいてくれた。

各人の部屋は、6階でシーサイドビューのツインルームだった。「本当にすばらしい眺望で、ツインルームを一人で使うのですからゆったりしていて大変よかったです」、「ミリの海岸から見るサンセットは世界一だ、とホテルスタッフが自慢するまさにその通りで、刻々と変化する空のオレンジ色や雲のパターンの変化はまるでオーロラでも眺めている気分で本当に素晴らしいものでした」と海老原さんは話す。

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海老原さんが宿泊した部屋のベランダにて。

なお、JH3GAH後藤さんとJR3WXA八木さんだけは、最上階である7階のスイートルームを1室確保し、その部屋を9M8TGのオペレーションルームとしてメンバーに開放した。この7階エリアはスイートルームのエリアのため、7階に行くにはスイートルーム宿泊者のみに渡されている特別なエレベーターカードが必要なシステムとなっており、一般の宿泊客は7階へ登れないようになっていた。

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9M6TG/9M8YYのQSLカード。

さらに、7階のエレベーターホールには24時間ホテルスタッフが常駐していて、人の出入りをチェックしているため、セキュリティが確保できており、そのため、9M8TGのオペレーションルームのドアは施錠せず24時間出入り自由とした。もちろん海老原さんらのメンバーにはエレベーターカードが渡され、フリーパスで入れるように配慮がなされていた。