[5回目のスリランカ]

2004年の4回目の運用では、無線組と観光組を完全に分け、無線組は9日間同じホテルに滞在して無線に徹したため、海外運用を堪能することができたことと、大きな成果を上げることができた。それに気をよくして、次回も無線組と観光組を完全に分けて行こうという話になった。さらに今回はモルジブ経由の便で向かい、スリランカに入る前にモルジブでも少し運用しようという話になった。こうして5回目の訪スリランカは、モルジブと合わせて2006年1月16日〜25日に実施されることになった。参加メンバーは無線組、観光組を合わせて14人になった。

モルジブでの運用については、2002年9月、2回目の訪スリランカで往路復路ともモルジブ経由となり、モルジブでの乗り換えの際に「いつかここでも運用しよう」という話が出たことに始まる。1月16日に関西空港からシンガポール経由でモルジブのマーレに到着。17日〜20日までモルジブで運用した後、20日にスリランカに移動した。ここでは先にスリランカでの運用の話を書かせていただく。

海老原さんらは1月20日16時40分、ほぼオンタイムでコロンボ国際空港に到着し、通関も問題なくクリアできた。その場で観光組とは分かれ、無線組の6人(JA3AVO中出さん、JA3TJA庄司さん、JA3UJR中浴さん、JH3LSS宮川さん、JR3QHQ田中さん、海老原さん)は、空港まで迎えに来てくれた4S7VKビクターさんがチャーターしたワンボックスカーに乗り込んだ。さらにもう一台のワンボックスカーには前回預けておいたトランシーバーやリニアアンプ、アンテナなどが積まれており、そこに今回新たに持ち込んだ機材一式を積み込み、運用地であるスターアイランドに向かった。

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ビクターさん(左)と無線組の6人(後列左から時計回りに中出さん、海老原さん、庄司さん、田中さん、宮川さん、中浴さん)

[スターアイランド]

コロンボ市内から南へ約20kmのところにあるボルゴダ湖の中に浮かぶ周囲300mほどの小さな島がスターアイランドである。海老原さんらはこの島にあるホテル「ペントハウスボルゴダ」に、1月20日〜24日の5日間滞在して無線運用を行った。ここは3〜4人のスタッフで運営されている小さなホテルで、電源は対岸から湖底にケーブルを引いて供給されていた。ただし、飲料水以外の水は、雨水を貯めてそれを濾過して使用していた。風呂はシャワーのみだったが、温水ではなく冷水であった。

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ボルゴダ湖に浮かぶスターアイランド。

スタッフはみな親切で、食事毎に何が食べたいかリクエストをわざわざ聞きにきてくれた。料理担当のスタッフはお客様からのリクエストに応じて食材を買い出しに行っていた様子であった。ある日、海老原さんは前年のブルーオーシャンビレッジホテルでのロブスターの味を思い出し、それをオーダーした。しかし、「ロブスターは手に入らなかったのでこれで辛抱してください」と言って、その日はタイガーエビの料理が出てきた。

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ある日の朝食風景。

[スターアイランドに到着]

話を戻し、ビクターさんがチャーターしたワンボックスカーで30分くらい走ると、ボルゴダ湖に到着した。船着き場の待合室に備え付けの電話を使って、ビクターさんがホテルに連絡すると、10分ほどしてホテルからの迎えのボートがやってきた。皆で手分けしてそのボートに無線機材他すべての荷物を乗せ替え、出発すると5分ほどでスターアイランドに到着した。

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ホテルと対岸との連絡ボート。

ホテル到着時には既に陽が落ちて周囲は暗くなっており、その日にアンテナを設置するのは難しいと判断し、チェックイン後にまず夕食を摂り、各部屋に分かれて無線機器のセッティングを行うことにした。しかし、このホテルのゲストルームは狭く、24時間運用を行うのはちょっと窮屈と考え、ホテルスタッフと交渉して、プールに隣接した1階のピロティ部分をシャックにすることにした。この日は、この広いピロティで、アンテナの組み立手順の確認など、明日の設置に向けての下準備作業を深夜まで行った。

今回はオペレーションルームではなく、オペレーションピロティとなったが、広さは問題なく、周囲に壁などがないため、蒸し暑い夜でも湖から吹く風で気持ち良く運用できると考えた。実際に運用を始めてみると、吹きさらしのピロティの方が涼しくてよかったと、メンバーから好評であった。さらに、ホテルを貸切で契約したことで、宿泊客は海老原さんのグループ6人だけだったため、24時間気兼ねなく運用が行えた。

ただし日中に関しては、到着翌日21日の土曜日には、地元ボーイスカウトの子供たちが水泳教室のためこのホテルのプールにやってきた。この付近でプールはこのホテルのものしかないからとのことだった。さらに、22日の日曜日には1組の結婚式が行われ、親族や友人たちが沢山やってきていた。前年に滞在していたブルーオーシャンビレッジホテルでも結婚式が行われていたことを海老原さんは思い出した。

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結婚式での新婦。

[アンテナを設置]

1月21日は快晴となり、早朝からまずは島全体を見て回りアンテナの設置場所の検討を行った。ホテルマネージャーからは、「島全部をアンテナ設置に使ってもらってOK」との承諾が取れた。幸運なことに、この島の端の方に、赤白に塗り分けられた地上高15mほどの三角タワーが設置されているのを見つけ、それを使わせてもらえないかとマネージャーに交渉に行ったところ、「携帯電話基地局用に建てたタワーで、まだ使ってないのでどうぞお使い下さい」との返事を得られた。

まずは、このタワーのトップに給電部を取り付けた3.5/3.8MHz用と7MHz用のダブルダイポールを完成させた。次に宮川さん自作の1.8MHz用AKIスペシャル(逆L型をアレンジしたアンテナ)を設置した。周囲にはアンテナ設置の邪魔になる建物などの構造物はなく、地上で垂直部20m長のエレメントを組み上げてみんなで協力して立ちあげ、ステーは立木に取った。

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給電部を取り付けるため、タワーに登っている中浴さん。

次に垂直部のトップに接続したワイヤーエレメントを斜めに引き下ろし、全長を波長の1/4ラムダになる約37mに調整したところ、一発で1.8MHz帯に同調した。総延長200mほどのラジアル線は湖に投げ入れた。なお、このアンテナは先にモルジブで1度建てていたため、ノウハウを蓄積しており、設置は難なく完了した。

その後は、18/24MHz用2エレメントHB9CV、14MHz用2エレメントフルサイズHB9CV、10MHz用ワイヤーダイポールを設置したが、敷地が広く、かつステーを張るのに適当に立木があったため、それらのアンテナも簡単に建てることができた。その他に衛星通信用のVHF+UHFアンテナを地上高2mほどに設置した。最後に14/21/28MHz用2エレメントHB9CVを建てる予定にしていたが、持参したマストの数が足らなくなったため、これは取りやめた。

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プールサイドにもアンテナを展開。