[計画]

1997年、JARL京都クラブ(JA3YAQ)創立50周年の記念イベントとして、海老原さんを含むクラブの有志で、マーシャル諸島のマジュロ島へのDXペディションを敢行した。このとき海老原さんはV73ARのコールサインで運用し、他のメンバーの分と合わせて、合計5000QSOの実績を残している。詳細については連載No.22〜23を参照頂きたい。

それから9年が経過した2006年、「来年はクラブ創立60周年記念の年になるので、前回V7へ行ったときの様に、今回は創立60周年記念なのでV6(ミクロネシア連邦)からの海外運用を行おうではないか」という声があがってきた。そして、JF3PLF杉浦さんが中心となって、免許や渡航関係などの調査を始めた。

実は海老原さんは京都クラブでこの話が出る前に、別口でミクロネシア連邦からの運用の計画を進めており、すでにV63JJのコールサインまで取得済みであった。しかし、諸事情によりその計画が実行できないでいたが、免許取得のノウハウなどを持ち合わせていたため、クラブイベントへの協力を申し出て、自らも創立60周年記念運用に参加することにした。

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V63JJのQSLカード。

[コールサイン]

こうしてミクロネシア連邦から運用を行うことが決まったが、せっかくの60周年記念運用なので、プリフィックス「V60」のコールサインが取得できたらさらに良いという希望も出てきた。ミクロネシア連邦では通常V63のプリフィックスが割り当てられるが、過去に運用されたアマチュア局のコールサインを調査してみたところ、V6AとかV6TIといったV63ではないプリフィックスが割り当てられた例が見つかり、上手く交渉することでV60のプリフィックスが割り当てられる可能性もありそうな感じを受けた。

海老原さんは、V63JJの免許取得の際にお世話になったJH8BKL河瀬さんに、Eメールで今回の計画を伝えて協力をお願いしたところ、快く引き受けてくれた。河瀬さんは夫妻で毎年ミクロネシアに渡航しており、現地の事情に詳しく友人や知人も多くいた。免許の手配と同時に、河瀬さん夫妻の定宿で、アンテナの設置を含めて無線運用が可能なホテルも紹介してくれた。河瀬さんの協力も得られたことで、計画は順調に進んでいった。

[ミクロネシア連邦]

ミクロネシア連邦は、グアム島の南に位置するカロリン諸島にある約600の島からなり、ヤップ、チューク、コスラエ、ポンペイの4つの州から構成されている。今回の60周年記念運用は、河瀬さんから紹介してもらったホテルのあるポンペイ州のポンペイ島から運用することになった。ポンペイ島にはミクロネシア連邦の首都パリキールがあり、免許発給機関もここにあるため、免許の受け取りに関しても好都合であった。

計画に現実味が出てきたため、2007年7月末から8月中旬あたりの実施予定として、海老原さんらはクラブの会報やインターネットのメーリングリストを使って参加者募集を始めた。その結果、杉浦さん、海老原さんの他に、JA3UWB岩本さん、JH3QNH山下さん、JH3TXR山本さん、JI3DLI藤原さん、JN3JBC川村さん、JI6DUE野原さんの6人から参加希望の表明があり、総勢8人で実施することになった。

[免許申請]

免許申請書類についてはチームリーダーの杉浦さんがとりまとめて、一旦河瀬さんの所に送り、河瀬さんが現地の知人を通じて、ミクロネシア連邦の免許発給機関に提出する段取りとなった。各自が準備する必要書類は、1.免許申請書、2.使用無線機の名称と製造番号、3.パスポートのコピー、4.日本の無線従事者免許と局免許の英文証明、または米国のアマチュア無線免許のフォトコピーだった。杉浦さん、海老原さん、山本さん以外の5人は米国のアマチュア無線免許を持っていなかったため、すぐに近畿総合通信局に従免と局免の英文証明の取得申請を行うように依頼した。

それと同時に杉浦さんは、ミクロネシア連邦の無線免許発給機関に対する、V60のプリフィックスの発給依頼とその理由を記載した書類を作った。当初は京都クラブの社団局であるJA3YAQのみV60のプリフィックスを申請しようという意見もあったが、最終的にはすでにV63JJのコールサインを持っている海老原さんを除く7人全員が、V60のプリフィックスと、さらにはサフィックスまで希望して申請した。

[最終的には6人に]

なお、免許申請の段階で参加表明をしていた8人のうち、JH3QNH山下さんとJI3DLI藤原さんの2人が都合でキャンセルとなり、最終的には6人で実施することになった。免許申請は全員に希望どおりのコールサインが発給され、それぞれのコールサインは、V60TI(JA3UWB)、V60IL(JF3PLF)、V60TX(JH3TXR)、V60KL(JN3JBC)、V60DU(JI6DUE)、V63JJ(JA3ART)となった。

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V63JJのライセンス。(※クリックすると画像が拡大します)

なお、社団局JA3YAQはV60Aを希望したが、このコールサインだけは認められず、V60YAQとなった。海老原さんの免許V63JJは、この時点で有効期間が満了していたため、免許の更新を申請した。通常の新規申請の場合は、免許の有効期間が1年間であるが、海老原さんの場合は更新申請だったため、V60のプリフィックスではなかったものの2年間の有効期間で免許された。

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V60YAQのQSLカード。

ただ、海老原さんのコールサインだけがV63であったため、実際に運用を始めると、ウェブクラスターにはV60JJとレポートされることもしばしばあった。海老原さんは、再三に渡ってV63JJとアナウンスしていたが、それでも後日届いたQSLカードにはV60JJと書かれたものが多くあったと言う。