[移動運用]

海老原さんの最近のアクティビティとして、マルチバンドでの移動運用を行うようになった。かつては1.9MHzの移動運用に熱中したり、最近では、出かけたついでに道の駅や峠などから7MHzシングルバンドでの運用を行ったりはしていたが、一度、所属クラブの備品であるロングワイヤー用のアンテナチューナーSG-230を借りて運用した際、バンドチェンジの手軽さを実感し、自らもCG-3000を新調して移動先からのマルチバンド運用を始めた。

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CG-3000は荷台に設置。アースは車のボディに編組線で直結。

海老原さんの場合はCWが主体のため、1つのバンドにおいてCWでやり尽くし呼ばれなくなるとSSBにはチェンジせずに、他バンドのCWにチェンジして運用。それを繰り返して、オープンしているバンドを次々にQSYするというマルチバンド運用である。アンテナはグラスファイバーの釣り竿を利用したロングワイヤーとアンテナチューナーの組み合わせのため、バンドチェンジはトランシーバーから短時間キャリアを出すだけで完了する。そのため、バンドチェンジに際していちいちアンテナを取り替えたり、コイルを付け替えたりする必要がない。

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宇治市で移動運用中。

電源に関しては当初、以前から所有していた発電機を回していたが、ディープサイクルバッテリーとアイソレーターを購入してからは、発電機や車のエンジンを回すことなく、ディープサイクルバッテリーを電源にした静音運用を行っている。エンジンを回さないため、それらが発するノイズも皆無で、受信環境も良くなっている。

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常に電源電圧を監視しながら運用。

[各種グッズを揃える]

最近、さらに強力な助っ人グッズを購入した。移動先からのインターネット接続アダプタである。海老原さんはこのアダプタとネットブック(小型のノートパソコン)をセットで購入し、移動先からのインターネット接続環境を手に入れた。これによって、移動先からバンドコンディションを確認したり、移動運用掲示板などにアクセスしたりできるようになり、ひいては運用バンドや周波数を的確に選択できるようになって、効率が劇的に向上した。さらに、相手局から寄せられるバンドリクエストなどにも迅速に対応できるようになった。

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ログ用のメインPCはハンドル台に、インターネット用のサブPCは助手席に設置して運用。

その他にも、夜間運用時の照明としてLEDランタンを購入するなど、「車の中が移動運用機材だらけになってきました」と話す。移動当日は、ロギング用とインターネット用の2台のパソコンを積み込み、さらに、移動先でアンテナや無線機などのトラブルがあると困るため、アンテナと無線機は2セットを用意、他にも回り込みなどの解決用に大量のフェライトコアを持って出かけている。以前、テスターを持っていかなかったために、12V分配器の陸軍端子の不良が特定できず、運用を断念せざるを得なかった経験があり、それ以降はテスターも持って出かけている。

移動運用を積極的に始めてからは、半田ごてを握る機会が多くなった。最近ではエレキーのキットを作った。これは、温泉地に移動運用に行くと長いナンバーを打たなければならないからで、たとえば京都市内の温泉地だと、まずはAJAナンバーの6桁。続けて湯けむりアワード用がYU+4桁あり、合計12桁も送出する必要がある。これの必要性にかられて作ったのであった。

[QSLカード]

最近では、平日でもちょっと時間があれば、近場に移動したり、土日は、ちょっと遠目の場所に移動したりしている。移動先は、珍市や珍郡はもちろん、道の駅、峠、温泉地などである。「自分から積極的に移動運用をするようになって、かつて海外運用で体感した、呼ばれる快感を思い出しました。移動運用はこちらに主導権があって楽しいです」と話す。

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長浜市で移動運用中。

QSLカードは、海外運用分を除いて、以前は1000枚単位で白紙カードを購入していたが、マルチバンドの移動運用を始めるようになってQSO数が増えると、1000枚が短期間でなくなってしまうため、最近は、まとめて8000枚購入した。なお、海老原さんの移動運用の成果などは、2012年7月に立ち上げた自身のBlogにて公開している。

一方、自宅からもアワードハンティングを行っている。1.9MHz特記のWACAを完成した後は、インターネットも駆使してAJA(All Japan Award)のポイントアップを目指して運用している。DXの珍局も時にはハンティングするが、「以前のように自分でダイヤルを回して積極的にワッチすることはあまり無くなりました。Webクラスターにあがった珍局を呼ぶのがメインです」と話す。

[京都クラブ]

海老原さんの所属する京都クラブは、毎月のように活動/行事があり、普段はインターネットを活用したメーリングリストで情報交換を行っている。現在40数人の部員がいるが、10数人の実動隊が活動の主体となっている。この中にはコンテストにアクティブな局が多く、JARL主催の国内コンテストには京都クラブの社団局JA3YAQで参加している。特に中心になってやっているのは、会長のJH3TXR山本さんをはじめ、JH3QNH山下さん、JF3PLF杉浦さん、JM3DUR島村さん、JI6DUE野原さんらである。

最近、JA3YQD立命館大学アマチュア無線クラブのOBが京都クラブに入ってきた。JA3IHI荒木さんである。荒木さんは免許の更新だけは切らさずに継続し、最近カムバックしたという。京都クラブのメーリングリストで自己紹介が出ていたので、海老原さんは、荒木さんに「覚えていますか」と連絡したところ、「学生時代に海老原さんから怒られたことをよく覚えています」すぐに返事が返ってきた。

海老原さんはJA3YQDの構成員ではなかったが、大学職員だったので、時には顔を出して運用やアンテナ設置のアドバイスを行っていた。学生からすると職員である海老原さんと一緒に活動を行うことで、大学設備の使用許可を取得する際に有利であった。海老原さんは許可を出す学生課長もよく知っており、屋上を占有する許可とか、校舎に宿泊する許可とかは苦労することなく取得できた。

JA3YQDでは、校舎の屋上にアンテナを上げ、塔屋(屋上への出口)のスペースに、コンテスト時のみの仮設シャックを作って運用していた。部室はあったが狭かったため、マルチバンドの同時運用が不可能だったからである。屋上には、HFの常設トライバンダーは上がっていたが、コンテストの度に、ローバンドのワイヤーアンテナなどを展開した。冬場のコンテストでは、事務室から石油ストーブを運んで使ったという。