[60年]

海老原さんがアマチュア無線に興味を持ったのは、洛星中学校1年の時に理科の先生だったJA3AJ小川さんから指導を受けたのがきっかけで、その後60年にわたって継続している生涯の趣味となっている。本連載の中で紹介してきたように、海老原さんはこれまでにアマチュア無線以外にも様々なものに興味を持ったが、アマチュア無線は一度も止めることなく60年間継続している。

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国民文化祭京都2011の記念局「8N3A」を比叡山から運用中の海老原さん。

その次に長い趣味は狩猟で、32歳からはじめて40年やっているが、この趣味は体力が必要で、山歩きのできる間しか続けられないので、何れは引退しなければならなくなる日がやってくる。さらに大学生の頃から麻雀もやっているが、これは1人では遊べないため、仲間が元気なうちしかできない。しかしアマチュア無線は体力も必要なく、1人で楽しめるため、脳などの老化を防ぐ手段としても有効で、これからも続けていきたいと話す。

[影響を受けたハム]

海老原さんがアマチュア無線をこれだけ長い間継続できたのは、自宅近くに先輩ハムであるJA3AJ小川さんとJA3DY橋本さんの2人がおり、この2人から受けた影響が大きい。挫折しかけても2人からアドバイスをもらい、時には、受信機が壊れてもすぐに代替機を貸してもらえるなど、環境に恵まれていた。

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JA3AJ小川さん(左)とJA3DY橋本さん(右)。1978年、京都DXクラブの1泊ミーティングにて。

社会人になると同じ職場に、同じ年のJA3KWZ(exJA3CEX)黒塚さんがいて、いつも昼飯を一緒に食べに行き、食後は同じ喫茶店に行って、毎日無線の話をしていた。内容はQSLインフォメーションを含むDX情報の交換とか、技術情報の交換などで、これが何十年も続いた。黒塚さんも非常にアクティビティが高く、お互いに刺激しあったため、アクティビティが落ちなかった。

[今後の計画]

「また海外からの運用を行ってみたいです」と海老原さんは話す。とくに、孫娘の一人がカナダの東海岸、ニューブランズウイック州(VE9)にある大学に入学が決まったので、そこを足がかりに、「CQゾーン2も視野に入れて、カナダから電波を出してみたいです」と話す。その他には、「現在駐在員として中国に滞在中の京都クラブ会長のJH3TXR山本さんの訪問を兼ねて、中国からの運用も行ってみたいです」と話す。

さらに、かなり先になるが、5年後の2017年には、京都クラブ創立70周年の記念DXペディションにも行けたら行きたいと話す。海老原さんは、創立50周年、60周年の記念DXペディションに参加している。2017年には77歳になっているが、かつて高齢でも海外移動運用で活躍したJA1OEM豊福さんを例に出し、「豊福さんくらい元気があったらぜひ行きたいです」と話す。

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創立50周年の記念DXペディションで運用したV73AR。

その他、「国内の移動運用にも力を入れたいです」と話す。2012年になってから国内移動運用のための様々なグッズも揃えたし、車のシートがフルフラットにならないので、宿泊用のテントも購入した。「テントを張って寝るのは何ら問題ありません。海岸とか峠の空き地やキャンプ場ならテントが張れます。昔子供のボーイスカウトの付き添いで、朝霧高原で行われた日本ジャンボリーに行き、テントで野営してきましたよ」と話す。

今回購入したのはドーム型の2人用テントだが、テント内にシャックを構築しても、その隣に1人寝るスペースは十分にある。天板をくるくると巻いてコンパクトに収納できるテーブルも購入した。「泊まりがけの移動運用も楽しみです。冬場なら京都府北部の猟場で狩猟をしてその後の無線運用も可能です。冬場のテント泊もまったく問題ありません」と話す。

「これからも年相応に楽しみながら、一生の趣味として続けていきたいです。アマチュア無線にはそれだけ魅力があります」と話す。72歳になった今でも、アマチュア無線活動への思いについて熱く語る海老原さんの目には少年の目の輝きが見えた。 (完)