[新しいセットを購入]

1965年、海老原さんは、送信機FL-100Bと受信機FR-100Bを購入した。これらは購入の半年くらい前に発売されたばかりの新製品だったが、当時、勤務先の立命館大学の購買部(現在の生協)に入っていたアマチュア無線機も取り扱っている業者が、24回までの月賦販売を行っていた。しかも、教職員への福利厚生の一環として金利を大学が負担してくれたため、海老原さんは24回払いのローンを組んで購入したものだった。

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ローンで購入したFL-100BとFR-100B。

このセットはもちろんSSBモードを備えていた。それまでCWばかりやっていた海老原さんであったが、SSBに出ることも目的の1つとして購入したため、購入後しばらくは、ほとんどSSBモードで運用した。確かに当時のログを見るとほとんどがSSBで、交信相手はDXばかりだ。それでもログには時々CWモードでの交信が混ざっている。それらは、未交信エンティティのDXペディション局のコールサインだった。海老原さんは1973年にFT-101Bを購入するまで、このセットで運用を続けた。

[WA6IVM]

この頃、海老原さんは京都を訪れた外国人ハムのために、よく京都案内を行っている。まずは親日家で有名なWA6IVMレイさん。1964年、たまたまQSO中に、「近々日本に行く」という話を聞き、「それでは、ぜひ京都にお越し下さい」と海老原さんが提案したところ、7月に京都に来ることになり、海老原さんが京都案内をアレンジすることになった。もちろん京都の無線仲間もサポートしてくれた。

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左から海老原さん、レイさん、レイさんの夫人。京都駅にて。

海老原さんは、夫人同伴で来日したレイさんを京都駅まで車で迎えに行き、その後、金閣寺、竜安寺、北野天満宮、清水寺、比叡山などを案内した。金閣寺から清水寺に向かう途中で北野天満宮の横を通った際、露店の屋台が並んでおり、「あれは何ですか」とレイさんに質問されたため、海老原さんは車を停めて露店を案内した。レイさんは弓の射的にトライし大満足であった。

その後、レイさんは「市役所に行きたい」とリクエストしたため、それに応えて京都市役所に連れて行った。市役所では庁舎の前で写真を撮ったり、廊下をうろうろしたりしたことを憶えている。昼食は、四条高倉にあった、とんかつで有名な「大江戸」に行った。大江戸は、京都独特の路地の奥に店舗を構えており、店内に入ると廊下がガラス張りで、下の池で泳いでいる鯉がガラス越しに見られるようになっていた。レイさんは店の雰囲気に「すばらしい」と感動していたという。レイさんはアイボール用のゴム印を持ち歩いており、大江戸の箸袋にそのゴム印を押して記念に海老原さんにくれた。

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海老原さんがもらった箸袋。(※クリックすると画像が拡大します。)

[W1BB]

1966年12月には、160mバンドのオーソリティであるW1BBスチューさんが来日した。スチューさんは友人のJA1CR桑原さんに、日本に行くことを連絡していたが、来日中、京都に寄る予定があったため、桑原さんはJA3AA島さんにその旨を伝えた。島さんは京都在住の海老原さんに連絡し、スチューさんが京都に行くからと京都案内を頼んだ。

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日赤京都府支部内無線室での記念撮影。海老原さんは左から3人目。

スチューさんは夫人のW1DQFアリスさんを同伴して来日した。来日中、予定どおり東京から新幹線に乗って京都にやってきたが、京都での滞在時間はわずか3時間程度しかなく、ゆっくり食事もできない様なタイトなスケジュールであった。そのため、海老原さんは、京都駅の近くに移転していた日赤京都府支部内にあった無線室に案内し、W1BB来日を聞いて集まった近郊のハム達とのアイボールQSOを楽しんでもらった。最後に記念撮影を行い、再び京都駅まで送っていったが、京都の名所を案内することができなかったことを残念がる。

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後日、スチューさんから届いた写真の裏に書かれていた礼状。

[その他]

同じ1966年にはVE4DQジムさんが来日。たまたま交信中に、仕事で京都に行くという話を聞き、「来るのなら会おうじゃないか」という話になった。ジムさんは5月に来日し、京都には4、5日滞在した。海老原さんは、ジムさんの仕事が終わる頃、宿泊先の京都ホテルまで迎えに行き、海老原さん宅に招待して、すき焼きをご馳走したことを憶えている。

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すき焼きを賞味中のジムさんと海老原さん。

1970年10月にはW6VFRマーブさんが夫人同伴で来日した。マーブさんは、ハイファイ型SSBの開発で有名なハムで、京都滞在中は都ホテルに泊まっていた。海老原さんは知恩院や南禅寺など、ホテル周辺の名所を案内した。その他にも、1973年9月には、KH6DQジョン・オカさんが夫人同伴で来日。名前からも想像できるようにジョンさんは日系2世のハムだった。海老原さんは、観光の定番である金閣寺などを案内した。マーブさんもジョンさんも、たまたま海老原さんとのQSO中に京都に来ることを知り、アイボールQSOが実現したものだった。

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マーブさんを囲んで。海老原さんは左から3人目。

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ジョンさんを囲んで。海老原さんは左端。