[アンテナの自作]

濱田さんはこれまでにアンテナを何本も自作した。まずはHF帯用のT2FDアンテナ。これは両端で折り返して2線式にしたフォールデッドダイポールアンテナの一種で、1本で広帯域をカバーできるメリットがある。濱田さんが作ったサイズは、全長14m30cm、平行線の間隔が30cmで、30度の傾斜を付けて設置した。「本に書いてあった寸法で作ってみたら、ピシッと行きました。このアンテナは値打ちがあります」と話す。

苦労したのは144MHz用の6エレメントキュビカルクワッドの4パラ。このアンテナは地磁気の影響を大きく受ける様で、下で調整した後に、ポールに上げると同調が全く外れていた。そのため、濱田さんはこのアンテナの調整用に仮設のパイプを建て、ロープで簡単に上げ下げできる様にして、何度も上げ下げを行ってやっと調整を完了した。そして最後に本当のポールに上げたところまたダメだったため、ついには諦めてしまったという。

最近では50MHz用の2エレメントキュビカルクワッドを作り、このアンテナは調整が難しいことを四国の局に話したところ、ヘンテナが良いと勧められて、ヘンテナに作り替えた。調整はアンテナアナライザーを使って行ったが、本に書いてある通りの寸法で、全く問題なく動作した。50MHzについては、40年前にカーテンレールのパイプを使って、3エレメント八木を作った事があったが、その後、5エレ、6エレの八木アンテナも作った。

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自宅のアンテナ群。

その他にも1200MHz用のコーリニアアンテナを作り、これは2、3回作り替えて今も使っている。ただしアンテナ本体部分を収納する適当な筒がないので、何か良い物がないか探している最中だという。

[アンテナ以外の自作品]

アンテナの他には、風速計を作った。風速計の受風部分は、100円ショップで購入した4個のステンレス製の椀を黒く塗って使っている。塗装したのは光が反射して、ご近所に迷惑をかけないためだと説明する。風速計の軸には小型の直流モーターを接続し、そのモーターが風によって回転させられることで発生した電圧を、シャック内に取り付けた電圧計で監視している。

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自作した風速計。

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風速を表示するエッジワイズタイプの電圧計。(中央上部)

一方、シャック内では、アンテナやSSTV用インターフェースなどの切り替えスイッチの操作盤を作り、使用するトランシーバーを変える毎に、いちいち背面に手を伸ばしてアンテナや周辺機器を差し替える手間を無くし、操作性を向上させている。なお、操作盤の製作や、屋上へのアンテナの配置などには、CADを使って図面を引いたというが、CADの操作は、60の手習いだった。

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切り替えスイッチの操作盤。

また、周辺機器の電源は、シャック内に置いたカーバッテリーから供給する様に配線し、このバッテリーは、毎日、深夜に自動で電圧がチェックされ、電圧が低い場合は、自動的に自作の充電器が働く様になっている。このカーバッテリーからは、屋上にも線を引いており、屋上にあるもので電源が必要な物は、このカーバッテリーから電源が供給される様になっている。濱田さんは、さらにもう1台、カーバッテリーを自宅のリモコンシャッター用に使っているが、このカーバッテリーも自動的に充電される様にしている。

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実験用の電源。

なお、周辺機器には12V以外の電圧が必要な物ものあるため、実験用の電源も自作した。これは電圧が可変でき、最大電流は5Aくらいとれるものだ。「メーカーが色々な物を作る様になったから、皆、自作への関心が薄くなってしまい残念です」と濱田さんは話す。なお、自作した物以外のメーカー品の取説や資料も全部ファイリングして保管している。それらは、もちろん機器が故障したときの修理の参考にするためである。

これから自作品には、ジャンクの部品を使うことが多いが、それらは、古い受信機や送信機から取り外した物や、さらに1月に尼崎市で開催される関西ハムシンポジウム、7月に池田市で開催される関西ハムフェスティバルや、10月に笠岡市で開催されるハムフェスタ笠岡に出向いて購入した物も多い。これらのイベントには、いつも淡路島内の無線仲間5、6人と一緒に1、2台の車で出向いている。

[塩害]

濱田さんはアンテナだけでなく、アンテナ支えるルーフタワーも自作しているが、屋外設置物は、塩害が悩みの種である。もともと濱田さんは、今の自宅よりさらに海側に近いところに住んでいたが、現在の住所に60年前に引っ越してきた。ここで1955年にアマチュア無線局を開設したのだが、多少海から離れたとは言っても、それでも海岸から100m程度しか離れておらず、潮風は容赦なくアンテナ類を錆びさせる。

「開局当時から塩害との戦いでした」と濱田さんは話すが、アンテナやルーフタワーが錆びるだけでなく、アンテナを回すローテーターも、数年で回らなくなってしまう。2012年現在、3基あるローテーターのうち回転するのは1基だけという状況となっている。「HFのビームは回りませんが、普段はT2FDを使っていますので、大きな問題はありません」と話す。