[DXCCナンバーワン・オナーロール]

ARRLが定めたDXCCプログラムで、現存する全てのエンティティとの交信を達成すると、DXCCオナーロールメンバーリストのトップにランキングされ、ARRLの機関誌であるQST誌、ならびにARRLのホームページで「DXCCナンバーワン・オナーロールメンバー」として賞賛される。

これは、もちろん一朝一夕で手に入れられるものではなく、10数年から20年、30年といった継続した努力の成果で達成できるもので、このDXCCナンバーワン・オナーロールメンバーになることが、DXCCに興味のあるほとんどのアマチュア無線家の最終目標と言っても過言ではない。

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星山さんが受賞したDXCCナンバーワン・オナーロールメンバー盾。

連載第12回でも記載したが、1970年にアルバニアのZA2RPSが運用された際、星山さんは、泊まり込みで仕事に出かけていたため、これを取り逃がしていた。その後アルバニアからは20年間電波が途絶え、そのため、星山さんは現存する全エンティティとの交信達成にアルバニアだけが残ってしまった。「あの時は、まさか20年も電波が途絶えるとは思いもせず、またできるわと、気楽に考えていたんですよ」と語る。

[アルバニアと交信]

未交信エンティティがアルバニアただ1つとなってからは、その後に新しく誕生したエンティティ(P4/アルーバ、ZS1/ウォルビスベイ、7O/イエメンなど)を確実に抑え、アルバニアから運用があれば、いつでも迎撃できる体勢を敷いていた。そんな折の1991年、IARUの主導で、アルバニアにてアマチュア無線を普及するプロジェクトが実施された。このプロジェクトではアルバニア人にアマチュア無線のトレーニングを行う一方で、国際チームによる大々的なデモンストレーション運用が行われた。星山さんにとっては20年待ち続けたチャンスが遂に到来した。

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イエメンから出てきた7O1AAのQSLカード。

日本人オペレーターも参加した国際チームは、ZA1Aのコールサインを使用し、各バンドに出てきた。しかし、当時世界一要求度が高かったエンティティからの運用だけあって、パイルアップは熾烈を極めた。星山さんは、1991年9月18日、日本時間の01:25、14MHzのSSBモードで、このZA1AとのファーストQSOを成立させた。現存全エンティティとの交信を達成した瞬間である。

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現地アルバニアから届いたZA1AのQSLカード(表面)。印刷前のためコールサインが手書き。

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現地アルバニアから届いたZA1AのQSLカード(裏面)。オペレーターのサインがある。

[Phoneも同時に#1 HR獲得]

DXCCのオナーロールプログラムは、Mixed Modeの他、モード別DXCC(Phone、CW、RTTY)についても、それぞれオナーロール制度がある。星山さんはPhone DXCCに関しても、前年1990年にイエメンとマルペロを片付けて、未交信エンティティはアルバニアだけとなっていたため、このQSOをもって、Mixed Modeに加え、Phone DXCCでも現存全エンティティとの交信を同時に達成した。

1991年、星山さんは、CQ出版社が主催した「ZAの会」に出席した。この会には、ZA1Aとの交信をもって現存する全エンティティとの交信を達成した局長が招待された。このような会が開催されるということは、アルバニアだけを残していた局が星山さん以外にも多数いたことが分かる。星山さんは、ZA1AのQSLカードを入手すると、すぐにARRLに提出した。その結果、1992年3月にクレジットされ、晴れて「DXCCナンバーワン・オナーロールメンバー」となった。

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ZAの会でのスナップ。前列右から2人目が星山さん。

[CW & RTTY DXCC]

一方、CW DXCCについては、本気でスタートした時期が遅く、1991年の時点で、まだ10数エンティティが残っていたため、アルバニアのZA1Aがラストワンとはならなかった。それでも翌1992年には、CWで現存314エンティティ(消滅含み319エンティティ)を獲得してCW DXCCもオナーロールメンバーとなり、その後も着実にスコアを伸ばして、2008年現在残り1つまで進んでいる。その1つとは1995年にDXCCリストに追加されたP5/北朝鮮である。この北朝鮮とCWで交信できている局は世界でもほんの僅かであり、現在北朝鮮は世界で一番要求度の高いエンティティとなっている。

Phone、CWではやるところがほとんど無くなってしまった星山さんは、1995年、それまで行っていなかったRTTYの運用を始めた。RTTYの設備にはドイツ製のソフトを使ったと言う。その後1999年1月にはRTTY DXCC受賞し、現在もRTTYオナーロールを目指して日々運用を続けている。

[DXCC 現在の目標]

星山さんは、バンド別DXCCに関する3つの目標がある。それらは160mDXCCの200エンティティ達成。80mDXCCの300エンティティ達成。6mDXCCの160エンティティ達成である。何れも難しい目標ばかりである。また、この3つを達成した先にはDXCCチャレンジ3000の達成という最終目標がある。

2001年に制定されたこのDXCCチャレンジアワードは連載第16回でも紹介したように、1.8MHzから50MHzの10バンドを使って、延べ1000エンティティとのQSOで獲得できる難易度の高いアワードである。DXCCチャレンジ3000とは、その名のごとく、10ハンドで延べ3000エンティティとのQSOが必要となり、完成させるにはHFローバンドからHFハイバンド、さらにはVHF帯の50MHzを加えた総合力が要求される。

しかも、全てのバンドにおいて卓越した知識とテクニックが必要とされるため、日本の局では前人未踏の超難関である。星山さんは「サイレントキーになるまでに何とか達成したい」と抱負を語る。ちなみに星山さんの2008年8月現在のスコアは延べ2831エンティティまで達している。