携帯電話の普及にともない、世界的にアマチュア無線局の増加が鈍っている。特に、日本では減少傾向にある。IARUの調査によると、昨2000年の世界の局数は279万局であり、95年比では6%増だが、日本は96万局と13%の減少である。一方、日本の従事者免許の取得者は320万人であり、この数を見る限りでは潜在ハムの数は膨大だといえる。「電子立国・日本」を築いてきた技術者の多くは、戦前、戦後のハム達であった。ハム達は日本の電子技術の発達、電子産業の発展、ひいては日本の高度成長に貢献してきた。趣味の一つであったアマチュア無線は、産業発展に結びついた。

アマチュア無線の楽しみの一つは、かつては自作の送信機や受信機で交信することであり、それだけに自作の喜びがあった。その喜びとおう盛な好奇心が電子技術の研究開発を支えてきたといえる。しかし、現在では電子部品の小型化により、自作が難しくなり、また、仮にできたとしてもメーカーの市販品と比較してコストが高く、信頼性、安定性に欠けることがはっきりしている。このため、現在では自作の楽しみはアンテナなどに限られている。もっとも、アンテナにより受信、送信の性能は相当変わるため、研究の余地は十分に残っている。

アマチュア無線は、これまでも触れた通り、電波通信の規制の撤廃を念じて発展してきた。現在、技術面で期待されているのはデジタル化である。すでに、音声、映像の分野ではデジタル化が進んでいるが、アマチュア無線はある意味では遅れていたが、総務省のご協力もあり、3年間の研究の結果、ようやくシステムの開発が完了し、実用化実験の段階に入った。デジタル化により、インターネットなど世界の情報ネットワークとつなぐことができるようになり、また、個別交信も可能となる。この他、新しい情報伝達手段としていろいろなことが考えられるが、それは私達ハムがこれから考えていくことである。

今年(2001年)、横浜で開かれた「ハムフェア2001」で展示されたデジタル無線機

一方、新しいアマチュアを育てていくことについては、全国各地で小学生や、中学生対象のラジオ工作教室などが開かれ、また、無線通信のやさしい話をする催しもある。多くは、ハムの方たちのボランティア活動として行なわれており、頭の下がる努力と感謝している。今後は、停年後の方や、家庭の奥様などを対象にした活動があってもいいのではなかろうか。最近は、寿命が延び80歳は当然であり、90歳の長寿も多くなる時代になりそうだ。その方たちの生きがいのある人生を実現する一つとしてアマチュア無線が役に立つかもしれない。

また、忘れてはならないことは、災害時の非常無線としての位置付けである。最近では、防災無線や緊急時の無線システムが充実してきているが、個人が通信端末を保持している強みは他にない。自由に活用できるからである。また、携帯電話やPHS電話のように、基地局を持ち、さらに中央にすべてつながっているネットシステムでは、中央や基地局がダメージを受けると完全に不通なってしまう。その点、1対1のアマチュア無線は常に生きていることになる。

それではJARLはどうあるべきか。一つは、国際的なリーダーとして世界のアマチュア無線の発展の原動力になることである。局数が減少したといっても、まだ、世界最大のハム王国であり、日本の果たすべき役割は大きい。次いで、国内ではアマチュアバンドの防衛がある。規制緩和を訴えてきたJARLであるが、これからも与えられてきた周波数を守り抜くと同時に、技術の発展に寄与するという活動が重要である。もちろん、国際的融和を諮り権益を守っていくことが大切である。その意味でも、私が常々申し上げているように「数は力なり」であり、ハムを増やし、JARLの会員拡大を図りたい。

今年(2001年)7月末に尼崎市で開かれた「関西ハムの祭典」でテープカットする原会長

長い間、お読みいただきありがとうございました。限られた回数でもあり、私が語りたかった全貌はお伝えできませんでした。また、次の機会にさせていただきます。