[読んだ本は3000冊]

野瀬さんは、アマチュア無線、旅行の他にもう一つの趣味を持っている。それは本である。読書の他にも、無線に関する古書を収集することを趣味としている。まず、読書の方から紹介すると、これまでに読んだ本の数は3000冊近くになると言う。野瀬さんは30才から、読んだ本をすべてノートに記載しているが、それがすでに2800冊に達している。これに10代、20代で読んだ本を加えると、3000冊近くになる。「サラリーマンではこのくらいが限界だと思います」と野瀬さんは話す。1週間で1冊読破したとしても年間52冊。これを50年続けて2500冊強である。このことから、かなりのペースで読んでいったことになる。

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読破した本を記録した野瀬さんのノート。

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ノートの内容。1ページに1冊ずつ記録している。

[無線に関する古書集め]

次に、野瀬さんの無線に関する古書コレクションの一部を紹介する。コレクションの対象は、原則的に昭和20年までに発行された書籍、雑誌、パンフレットである。これらは、約35年間かけて収集した。そのほとんどは古本屋で入手したが、自分の足で探した他に、全国に散在する知りあいの古本屋に「古本屋の市で、昭和20年以前の無線に関する本が出てきたら必ず買うから、落札して連絡が欲しい」と注文しておいて手に入れたという。

この様な古書の入手方法は、色々な理由でかなり高値になってしまうため、「結構なお金をつぎ込みました」と野瀬さんは笑う。現在この種の本、および雑誌の総数は、「正確に数えてはいないが、200冊位は有ります」と野瀬さんは話す。作家・開高健さんの著書の中に、「紙の中の戦争」と言う本があり、これを真似して、「紙の中の無線」としてまとめたいが、「能力不足の為、いつになるか分かりません」、と野瀬さんは苦笑する。

野瀬さんの無線に関する蔵書の一部をここに紹介する。

明治6年(1873年)に発行された「改正電信技術生徒試験手続書」

無線ではないが電信技術者の試験等に関する公文書。この公文書には、工部卿として旧千円礼の肖像にもなった、明治18年(1885年)初代内閣総理大臣の「伊藤博文」の名前も記されている。工部卿とは、官営事業としての鉄道、造船、鉱山、製鉄、電信、灯台などの事業を行う、近代日本の基幹産業を司る工部省の大臣にあたる職(当時は大臣という名称の職は無かった)のことで、絶大な権限を持っていた。

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「改正電信技術生徒試験手続書」

明治37年(1904年)に発行された「電波と無線電信」

明治時代に無線通信に関する単行本の発行は皆無に近く、電気学会誌などに、断片的に無線通信のことが書かれているが、この本が、総合的にまとめられた無線の技術書として発行された日本で最初の本と言われている。大正に入って商業放送が始まると、無線に関する本は一気に増えたが、それまではほとんど出版されていなかった。

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「電波と無線電信」

大正13年(1924年)に発行された「無線とアマチュア」

洋書の英訳本であるが、野瀬さんの蔵書の中でアマチュアという言葉が出てくる一番古い本。「それまで、雑誌にはアマチュア無線の記事もあったが、本として出たのはこれが初めてと思います」と話す。

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「無線とアマチュア」

大正13年(1924年)に創刊された月刊誌「無線と実験」の創刊号

野瀬さんは、創刊号の他にも戦前の「無線と実験」を始め、戦前の無線雑誌を多数そろえている。

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「無線と実験」の創刊号の目次

昭和10年(1935年)陸軍工科学校編纂の「兵器学参考書(94式3号乙無線電信機詳説)」

これは陸軍が使用していた無線電信機の取扱説明書。仕様はほとんど94式3号甲無線電信機と同じ。甲は多く生産(整備数650機)されたが、乙はわずか25機しか整備されなかったため、ほとんど存在しない貴重な取説。無線機にアンテナ類、電池などすべての装置を含めると、運搬するのに駄馬2頭又は三九式輺重車丙一両必要と書いてある。

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「兵器学参考書」

昭和26年(1951年)電波監理委員会発行の「日本無線史」全13巻

「全13巻の内、9巻は長野市出張の折、寂れた古本屋で非常に安く入手できましたが、その後全巻そろえるのに10年以上かかり、残りの4冊はかなり高価で入手ました」と話す。この「日本無線史」は、戦前の書籍では無いが、無線電信発明の時から太平洋戦争勃発の昭和16年(1941年)までの約半世紀における我国の無線電信無線電話の進歩発達、ならびに生成発展の歴史を記載した書物で、日本の戦前の無線通信を研究する上で、もっとも貴重な基礎資料である。

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「日本無線史」全13巻

参考までに全13巻の総目次は次のとおり。

第1巻  無線技術史 上

第2巻  無線技術史 下

第3巻  無線研究史

第4巻  無線事業史

第5巻  国際無線事業史

第6巻  無線教育及び無線団体史

第7巻  放送無線電話史 上

第8巻  放送無線電話史 下

第9巻  陸軍無線史

第10巻 海軍無線史

第11巻 無線機器製造事業史

第12巻 外地無線史

第13巻 無線関係条約法令及び年表 

昭和47年(1972年)発行の「続日本無線史 第1部」、昭和48年(1973年)発行の「続日本無線史 第2部[上]および[下]」

これらは、前述の「日本無線史」の続編として、昭和16年(1941年)〜昭和45年(1970年)頃までの無線通信の歴史が掲載されている。第2部は第1部の補足、および戦後の無線史が掲載されている。

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野瀬さんの古書コレクションの一部。