[HFチャンピオンシップコンテスト]

毎年7月の第2週末に、IARUが主催する「HFチャンピオンシップコンテスト」が開催される。このコンテストでは、一般の参加局とは別に、IARUに加盟した各国の連盟局(HQ局)で順位を争うカテゴリーがあり、日本からも毎年、IARUメンバーであるJARLがコンテスト用の特別記念局(8NxHQ)を開設して、連盟局のカテゴリーにエントリーしている。

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2007年のJARL(8NxHQ)は、8175QSOという結果で、48連盟中30位だった。(画像はJARLのHPより)

日本においては、かつてはJA3RLなど、常設されたJARLの社団局1局からマルチバンドにエントリーしていたが、その後、全国から連盟局(HQ局)としての参加を希望する一般の社団局(もしくは個人局)を募集し、発射できる11波(1.8MHz電信、3.5MHz電信、3.5MHz電話、7MHz電信、7MHz電話、14MHz電信、14MHz電話、21MHz電信、21MHz電話、28MHz電信、28MHz電話)を各局で分担して運用するようになり、現在でもその運用形態ととっている。

HQ局の運用への応募は、個人局、社団局は問われないものの、「空中線電力は1kW(少なくとも500W)で24時間トラブルなく運用できること」、「過去のコンテスト運用において十分な実績を有する局であること」などが掲げられているため、どんなアマチュア局でも応募できるというものではなく、条件を満たす局は限られてくる。しかし、これらの条件は、世界各国の連盟局と対等に戦うためには必要最低限の条件ともいえる

[HQ局に応募する]

2007年秋頃、とあるミーティングで、野瀬さんが、「なにかおもしろいことは無いか」という話をしたところ、同席していたJK2XXK戸根さんから、「野瀬さんの蛭川(ひるかわ)のシャックから、HFチャンピオンシップコンテストへHQ局として参加したらおもしろいのでは」、という話が出た。野瀬さんは、過去、HRS(蛭川ラジオシャック)の設備を共用しているメンバーに対し、一度コンテストにマルチオペレーターで参加しないか、勝たなくてもいいじゃないか、皆で力を合わせてやってみないか、という提案を行ってきたが、シングルオペレーターでのコンテスト参加を好むメンバーの為、なかなか実現しなかった。

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HRS(蛭川ラジオシャック)のシャック。

その時点では、戸根さんはまだHRSのメンバーではなかったため、野瀬さんは、「戸根くんがHRSのメンバーになって、蛭川のシャックで1kW局を開設してくれたらやってもいいよ」と返事した。すぐに「それではやろう、さっそく2008年の分からHQ局に応募しよう」と話がまとまった。翌2008年になると、公募が始まったので、戸根さんは、さっそく書類をそろえて応募した。団体名は「チームひるかわ」とした。

HQ局に応募する際は、運用希望のバンドとモードを申告、それに過去の実績を提出する必要がある。希望したのは、7MHz電話と、14MHz電話で、過去の実績については、マルチオペレーターとしての運用実績がなかったため、JA2BNN、JH2AMH、JN2AMD各局の個人運用分を提出し、あとは、JARL側の審議に託した。

[3.5MHz電話が割り当てられる]

5月になり、JARLから審議結果が発表された。その結果、「チームひるかわ」には3.5MHz電話が割り当てられた。希望したバンドモードでは無かったが、野瀬さんは「この結果に対して不満はありませんでした」と話す。希望した7MHzと14MHzは、どのチームもやりたがるバンドである、2008年に初めてHQ局に応募した「チームひるかわ」が、これらの人気バンドを割り当ててもらえることは無いだろうと、あらかじめ予想していたからだった。「チームひるかわ」のコールサインは2エリアなので8N2HQと決まった。

バンドモードが3.5MHz電話と決まったことで、あとは、このバンドモードで最大限の得点を稼ぐことのできるオペレーターを捜す課題が残った。戸根さんはJARLの岐阜県支部長の職を務めているため、できればオペレーターは、岐阜県支部会員から有能な人材を広く募りたいと考え、野瀬さんにそのことを相談したところ、野瀬さんは快諾した。

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2008年のJARL(8NxHQ)のバンドモード別割り当て表。(画像はJARLのHPより)
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[オペレーターを募集する]

戸根さんは、さっそく岐阜県支部内で8N2HQのオペレーターを募集した。条件は第一級アマチュア無線技士の資格をもち、DXコンテストである程度の実績がある、ということにした。HQ局は、JARLとして世界各国の連盟と戦うため、全国の他のHQ局と一致団結して最大限の得点の獲得を目指す必要がある。そのため、コンテスト中は本気で運用していただき、冷やかしでの参加は困るということにした。

問い合わせは何件かあったが、「3.5MHzの電話ですが、できますか」という話をしたところ、ほとんどの局は、申し込んでこなかったという。ローバンドの運用はノイズや混信との戦いとなり、ましてやそこでDXコンテストを電話で戦うとなると、相応の技量が必要となり、中途半端な経験では通用しないからだ。戸根さんは、岐阜県支部員でDXコンテストにアクティブな局にも積極的に声をかけていった。

しかし、最終的に、「ぜひやらせてください」と申し込んできたのは、JF2IWL長倉さん1人だけだった。それに、HRSメンバーのJH2AMH児玉さんが加わることとなり、メンバーは野瀬さん、戸根さん、長倉さん、児玉さんの4名と決まった。HRSメンバーのJN2AMD山内さんは、仕事で参加できなかった。HFチャンピオンシップコンテストの2008年の開催日は、7月12日(土)21時〜13日(日)21時までの24時間と決まっているので、あとは、この日程に向けて、4人で準備を進めていくことになった。

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8N2HQ「チームひるかわ」のメンバー。左から長倉さん、児玉さん、野瀬さん、戸根さん