[JIDXC]

2008年11月、野瀬さんは再びマルチオペレーターでコンテストにエントリーした。野瀬さん、戸根さん、長倉さんの3人でチームを組み、JIDXC(Japan International DX Contest)に参加した。もっともこのときは、翌2009年のIARU HFチャンピオンシップコンテストへの再エントリーを見据えた運用で、高得点を目指すというより、アンテナシステムの強化を主目的にした。

3.8MHz用には、常設の逆Vダイポールアンテナに加え、7月のHFチャンピオンシップコンテストの時に設置を断念したスローパーアンテナを増設した。また、受信用の磁界ループアンテナにはプリアンプを付加して、利得を向上させた。JIDXCは土曜日の夕方16時にスタートするため、野瀬さん達は土曜日の日中にこれらの作業を完了させた。

16時になり、長倉さんのオペレーションでスタートを切った。HFチャンピオンシップコンテストの時のようにHQ局の一員として参加し、1波に集中して運用するのではなく、今回は、通常のマルチオペレーター部門へのエントリーのため、オールバンドで運用する必要がある。そのため、コンディションに応じて運用バンドを次々に変更し、極力効率よいバンドで運用していった。

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JIDXCの賞状。写真は、野瀬さんが2006年の電話部門で獲得したもの。

新たに設置した3.8MHz用のスローパーアンテナについては、HFチャンピオンシップコンテストの時に交信できなかったヨーロッパの局とも交信できるなど、まずまずの感触を得た。JIDXCの終了は日曜日の夜22時だが、優勝を目指した運用ではないため、日曜朝の正午前、270QSOに達したところで、切り上げた。「今回は、試し運用だったので、夜は電波を止めて寝ました。次回はもう少し力を入れてみようと考えています」と野瀬さんは話す。

[個人参戦]

2008年7月のHFチャンピオンシップコンテスト以降、マルチオペレーターで参加したJIDXCを除くと、野瀬さんが国内から参加したのは、9月のオールアジアコンテスト電話部門と、12月のARRL10mコンテストの2つだけだった。「これだけ黒点が少ないと、局数ができないので、なかなか本気でエントリーする気にはなりません」と話す。ARRL10mは、28MHzシングルバンドのコンテストで、国内局との交信も有効だが、「国内専門のコンテスターはほとんど呼んで来ません。彼等は、DXコンテストはジャンルが違うと思っており、国内コンテストとDXコンテストを厳然と分けている風習があるのが残念です」と野瀬さんは話す。

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オールアジアコンテスト電話部門の賞状。写真は、野瀬さんが2005年の電話部門で獲得したもの。

それでも、野瀬さんは、サンスポットサイクルボトムのコンディションの下、この10mコンテストで121QSOをこなした。「QSOの2/3は、VK(オーストラリア)の局で、後はZL(ニュージランド)など太平洋の局少々と日本の局でした。月曜日の朝のコンデションは特に悪く、7時から9時まで2時間CQを出し続けて、わずか1局しかQSOできませんでした」、と話す。ちなみに、9月のオールアジアコンテスト電話部門は、14MHzのシングルバンドにエントリーしたが、コンディションが悪く、かなり手抜きの参加となり、145局34マルチという結果だった。「この時期にシングルバンドで、1,000QSOやるのは私にとって至難の業です。やはりW、EUが開けないと局数は伸びません」と話す。

[HRS]

「最近はコンテスト以外の無線活動はやってないですね」と話す様に、現在野瀬さんは、コンテスト一筋の無線活動を行っている。野瀬さん達の蛭川ラジオシャック(HRS)では、年間スケジュール表を作って、どの週末に誰がどのコンテストにエントリーするか決めている。主要コンテスト毎に、運用優先メンバー1名と、次点メンバー1名を決め、優先メンバーの都合が悪くなったときは、優先メンバーから都合が悪くなった事を次点メンバーに連絡し、次点のメンバーがエントリーする事になっている。このスケジュールは、毎年12月のミーティングで、全員が集まって調整しているという。

スケジュール表によると、主要コンテストのある週末は全部埋まっているが、主要コンテストのない週末はほとんど空いている。空いている週末は、早い者勝ちで使えるルールになっている。12月のミーティングの他には、6月にもメンバー全員で集まることにしており、スケジュール表の修正などを行っているという。

[無線機の強化]

HRSに設置されている無線機は、メンバー共有財産の物と、野瀬さん個人の物があるが、大半が野瀬さん個人の物である。しかし、それらの中には古いセットも多いので、野瀬さんは、「残しておくと、将来家族に迷惑が掛かるので順次処分しよう」と考え、整理を始めているという。中古機として処分し、得られたお金に不足分を補充して、最新セットへの入れ替えを計画している。

また、「今後、機器を自作する気もないので、測定器を始め、真空管(リニアアンプ用の大出力管、メタル管、GT管など合計150本以上)や、真空管式リニアアンプのための部品などが大量にあるので、ついでに処分するつもりです。最終的には、コンテストに必要な、3セット(トランシーバー+リニアアンプ)にしたいと考えています」と話す。

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整理中の無線機器、測定器類。

これは、アンテナの構成と、シャックの規模から、HRSではマルチオペレーター・マルチトランスミッターでの運用はできないので、マルチオペレーター・シングルトランスミッターでのエントリーを考えると、ランニングステーション用に1セット、マルチステーション用に1セット、これにバックアップ用の1セットを加えた合計3セットあれば十分というのが、その理由である。

[アンテナの強化]

アンテナ系では、14MHz以上のハイバンドはとりあえず問題ないので、1.9MHzを含むローバンドのアンテナを強化したいと野瀬さんは考えている。1.9MHz用の逆Vダイポールアンテナは、エレメントの端が雑木林に入っているので、まずはこれの張り直しと再調整。3.5/3.8MHzで拡張された新周波数帯への対応。それに、本年3月末に拡張される見込みの7.1〜7.2MHzへの対応である。

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少し見にくいが、一番上の2エレメント八木アンテナがAFA40。

特に7MHzについては、米国の局とSSBで交信するのに、従来はスプリットによる運用を余儀なくされたが、バンド上端が7.2MHzまで拡張されると、同一周波数で交信できるようになる。「ブラジルで参加したWRTCの時、痛い目にあったのでよく覚えていますが、ここに出られるのと出られないのでは、スコアに大きく影響します。現用のAFA40は、この周波数帯には対応していませんので、まずはこれを何とかしないといけません。もちちん、リグも対応させないといけませんし、やることは多いです」と野瀬さんは話す。