[月面反射 無情な大雪] 

島さんら関西DXクラブのメンバーは、昭和50年(1975年)2月22日に滋賀県草津市新堂町の空き地に集まった。電波を月に反射させ、海外と交信するEME(EARTH-MOON-EARTH)に挑戦するためである。約1カ月前から準備を進め、巨大なアンテナ群はナガラ電子工業の協力ですでに組みたてられていた。交信相手の米国スタンフォード研究所(WA6LET)とも打ち合わせは終わっていた。

島さんら10名のスタッフは、その日朝から現地に集まり準備を始めた。設営されたアンテナは11エレメント4列4段が2面。合計352エレメントの巨大なものである。わが国初の実験だけに、NHKが実況中継する体制を取るなど、マスコミ各社も取材に集まった。月が水平線からのぼり出す午後2時に交信開始の計画であった。ところが、午後から降り始めた雪は大雪となり、アンテナエレメントに付着し始めた。

大掛かりなアンテナも積雪のため効力を発揮しなかった。

各エレメント接合用のフィーダー線にも付着した雪が極間を短絡させてしまった。スタッフは脚立を使い雪落しを始めた。島さんはテントの中で無線機の操作を担当していたが、どうしても電波は届いていない。懸命に雪溶かしを続けたが、5時間後にあきらめることになる。NHKはその失敗の場面を放送し続けた。

使うはずであった周波数は430MHz。それから6カ月後、隈本尭(JA6DR)さんが米国W6POと144MHzでEMEに成功した。これがわが国のEME第1号となった。ちなみにインターネットで「月面反射」を検索すると、愛媛県の佐々木保昌(JH5LUZ)さんが「EMEホームページ」をもっていることがわかった。

[大阪国際交流センターラジオクラブ] 

大阪・天王寺区上本町に国際交流センターがある。元大阪外語大の跡地に昭和62年(1987年)に創設されたもので、国際会議、シンポジウム、展示会など国際的なイベント会場として立派な設備をもっている。その1室に「大阪国際交流センターラジオクラブ」がある。クラブ局JI3ZAGをもち、国際的なボランティア活動を行い、また、海外から大阪を訪れるハムの窓口ともなっている。さらに、BBS(アマチュア無線によるパソコン通信)の東南アジアのセンター局にもなってる。

このクラブ局の目的は、アマチュア無線を通して国際的な親睦を作り上げることにあり、同センターに勤務していた下津富雄(JO3LZG)さんと近くにすんでいる三好二郎(JA3UB)さんが、働きかけて発足した。

会員の条件は、大阪に居住もしくは勤務先があり、3級アマ無線以上を操作できる。また、外国人との会話が可能でボランティア精神に富み、来日外国人のホスト役になれる人。さらに、同国際交流センターの活動を理解する人である。現在、会員数は約30名であり、島さんは中心的に活動している一人である。

今年(2002年)の8月9、10日の両日、この国際交流センターで「アマチュア無線再開50周年記念行事」がおこなわれた。この催しは同時にクラブが発足して15年を記念したものでもあった。自作通信機、関連写真、関連グッズが展示されたほか、各エリアのAAさんが集まり、庄野久男(JA1AA)さん、米田治雄(JA1ANG)さんが思い出を語るなど盛大なイベントだった。

[子供たちにアマチュア無線の夢を] 

毎年、春、夏、冬の小中学校の休みの間に、大阪府下で「ファミリー電波教室」の名称のイベントが開かれている。毎回、20組から30組みの親子が参加し、電波とは何か、電波の歴史、通信の歴史が語られ、通信の実験やエレクトロニクスの簡単な工作を行うことになっている。

「ファミリー電波教室」で熱心に工作する子供達。

主催しているのは「大阪府電波適正利用推進員協議会」であり、島さんはその会長である。一般の人達にも電波を知ってもらい、正しく使ってもらうことを目的に、同協議会はおおむね全国の都道府県単位に平成9年(1997年)に発足した。会員はエレクトロニクスメーカーや放送局、ハム達であり、ボランティア活動として続けられている。

同組織ができた時「実は何をしたらよいのかわからなかった。そのため、電波を正しく使いましょう、と呼びかけたティシュペーパーを街頭で配ることからスタートした。」と島さんは最初の頃を語る。「ファミリー電波教室」はそのような試行錯誤の中から昨年(2001年)の1月から始められ、参加者からは好評である。

エレクトロニクスの工作ではこれまで、鉱石ラジオ、乾電池、低周波発振機、ワイヤレスマイクのキット組み立てを行ってきた。島さんは「幼少の頃から科学に興味をもってもらうことが大事であり、それをねらって始めたわけですが、親子揃って物づくりをする光景もすばらしい。それ以上に、子供達の目が生き生きと輝いているのがうれしい」という。もちろん、その会場ではアマチュア無線の楽しさも伝えられ、興味をもつ子供達も少なくない。