[50年後にアマチュア無線はあるか] 

今年(2002年)の8月に大阪で「アマチュア無線再開50周年記念行事」が行われたことは何度か触れた。また、11月15日にはJARL主催の「JARL創立75周年/再開50周年」記念式典と祝賀会が東京で開かれた。島さんは、参加された人達を見て「若い人の姿がないことに改めて愕然とした」という。たしかに、アマチュア無線関連のどのイベント会場でも若い人が少なくなった。

8月に大阪で開かれた「アマチュア無線再会50周年」記念式典に集まった「AA」ハム。左から3AA(島伊三治)、1AA(庄野久男)、5AA(久米正雄)、9AA(円間毅一)、0AA(阿部功)の各氏。

「JARL関西支部が、事務所に本部局JA3RLを開局した30年近く前は、入門者の若者で溢れかえっていた」と島さんは思い出す。その時、20歳の若者も今では50歳近くになっている。ハムになる若者が年々減っている現状を憂い「後50年経ったらどうなるのだろか。このままの傾向が進むと、30年後、50年後にはアマチュア無線は衰退してしまうのでは」と心配する。わが国のハム人口は、昭和27年(1952年)の免許再開から33年後の昭和60年(1985年)には、約60万人に達した。翌61年から開局は急増し、この年は約10万6千局増加したが、その後も毎年10万局前後の増加となり、ついに平成7年には136万4千局となった。ところが、その後は減少に転じ、現在は90万局を割っている状態だ。

それ以上に深刻なのは、島さんの指摘したハムの高齢化である。今からわずか22年前の昭和55年(1980年)にはJARL会員の51%は30歳以下であった。ところが、今年(2002年)10月現在では30歳以下の比率は3.5%にしか過ぎない。40歳以下の比率で比較すると昭和55年が80%なのに対し、現在は18%である。もっとも、この年齢構成比はJARL会員であり、ハム局全体のモデルにはなりえない。新しくアマチュア無線を開局した人のJARL加入の比率が大きく減少している一方で、JARLを脱退することのない終身会員が約2万5千人もいるからである。いずれにしても、若いハムの減少が現在の島さんの最大の悩みである。

それを防ぐためにはどうしたら良いのか。島さんらが実施している小中学生の親子を対象とした「ファミリー電波教室」は、次代のハムを育てるねらいもある。このため「大阪国際交流センターラジオクラブ」のメンバーもボランティアとして熱心に活動している。「年3回、少ない人数が対象であるが、一家揃って参加されるケースもあり、何度も来られる姿を見ていると、わずかながらも将来が明るくなってくる」との希望をもつ。

[輝かしき未来のために] 

島さんがこれまで交信した局数は延べ約16万局。電波監理局、近畿移動無線センターをリタイヤしてから一段と活発となり、現在でも、年に延べ1万局と交信している。「アマチュア無線のおかげで国内外に何でも相談できる友人ができ、また、毎日充実した生活を送ることができている。それを若い人にも知ってもらいたい」と、島さんは強調する。 現在の若い人達は、複雑なパソコン、携帯電話、電子ゲーム機を使いこなしているが、科学知識をもって使っているわけではない。島さんはそれを「実験の時間が減っている学校教育の弊害ではないか」と指摘する。そして「幸い、各地域で“鉱石ラジオづくりのブーム”が起きていると聞いている。物を実際に作るということはすばらしいこと」もっと物づくりの教育が必要と提案する。

島さんは、また、現在のアマチュア無線を取り巻く環境についてもいくつかの提言をもつ。例えばハムへの道を簡素化するための「包括免許制度」の実施である。現在、日本では従事者免許をとり、その後、局免許を取得する必要がある。「この免許を一本化しているのが米国である。わが国ではそれが無理としても、局免許を1度取れば機器を替えるのを自由にしたらどうか」と強調する。

「包括免許制度にすることにより、無線機も自由に買い求めて使用できるようになるし、他人の無線機でも使えるため、交信できる場所、機会が広がることになる」という。さらに「現在の5年間での更新期間を10年に延期したら良い」と考えている。実は、5年更新手続きの時に皆苦労するのは、更新文書への記入。申請時のデータを残しておかない場合は、総合電気通信局に出かけ、依頼して申請時の文書を見せてもらわなければならない。更新時にその面倒さを嫌って更新をしないハムが少なくない。それも、ハム人口減少のひとつである。

このようなこと以上に島さんが心配しているのはハムバンドが削られてしまう恐れがあることだ。「無線通信が多様化し、必要な周波数が不足してきている。アマチュア無線はこれまで長い間かかって、徐々に周波数の拡大を図ってきた。しかし、ハムバンドの利用が少なければ他の通信に周波数を渡さざるをえない事態も起こりうる。ハム皆でハムバンドを守らなければならない」と力をこめる。

奈良で行われた国際YL会議。 --- 島さんらはボランティア活動の一環として、国際的なボランティア会議を支援している。