[RAE受験] 

5月、スペインのバルセロナとドイツのハンブルグに出張。ハンブルグでは佐々木和彦(DC0HR、DD5CI)さん夫妻のシャックを訪ねた荒川さんはDL/JA3AERのコールサインで交信。「ドイツからの交信は久しぶり」だった。日本との相互運用協定を利用した短期免許による運用であったが「もし英国の免許をもっていれば、短期訪問の場合は免許や許可の申請を必要としないのに」と荒川さん。

ハンブルグでDC0HR佐々木さんと(右荒川さん)

免許や許可の申請が必要ないのは当時26カ国(当時)が加入しているCEPT(郵便と通信運営に関する欧州協定)によるもので、どこかの1カ国で免許を取得すれば、協定を結んでいるどこの国でも運用できるからである。そこで、荒川さんは5月13日にレクサムで実施されたRAE(アマチュア無線試験)を受ける。

6月4日、18日にはWARSのミーティングに出席。クラブコールサインでの運用、食材を持ち寄っての屋外料理などが行われたが「このようなミーティングはこの夏にもう1回計画されており、小さなクラブであるが活動が活発なのに感心する」と荒川さんは驚いている。その間の16日には荒川さんはメンバーとなったBVWS(英国骨董無線機協会)の年次ミーティングに参加。

[G7KTA] 

7月下旬、RAEの合格通知が届く。CWを受けてないためBクラスの免許であるが、荒川さんはライセンシングユニットに電話し、コールサインの交渉をする。地元のハムがG7JMLをもらっていたため「G7JPNを要望すると、Kまで進んでしまっている、車の登録番号と同じG7RFMの要望にはそんな先までは予約できない、ということでG7KTAで我慢することにした」と言う。

GW7KTAのシャック

正式には文書でなければ受け付けないと言われ、荒川さんは「G7KTAが第1候補、次いでG7KVAさらにG7LDNが希望」と申請書を送る。8月になって免許が届く。第1希望のイニシャルを入れたG7KTAだった。「希望のコールサインをくれる日本では考えられないサービス。しかし、Bクラスなので144MHz以上にしか出れずJAとの交信は当分GW0/N2ATTの長いコールでやることになる」と決めている。

[マン島] 

米国時代、荒川さんはいささかオーバーにいえば暇さえあれば、全米のアマチュア無線の世界を駆け巡った。英国でも同様である。コールサイン待ちの間もWARSの公開運用に協力し、世界第2位の巨大パラボラアンテナがあると聞き、早速訪ねている。「とても大きなアンテナだったが通信用ではなく宇宙からの電磁波観測用だった」と言う。

7月23日から3日間はマン島に出かけている。マン島は100年の歴史をもつオートバイレースで知られており、イギリス本土と北アイルランドの中間に位置する淡路島とほぼ同程度の面積をもつ。独自の法律、議会をもち住民はイギリスとマン島の両方のパスポートをもつ権利がある。アマチュア無線ではDXCCでは別カントリー。

マン島へはリバプールまで車で行きフェリーで4時間。「ハムらしきアンテナをいくつか見たものの活動的ではないらしい。ホテルの許可を得て窓から突き出した簡単なダイポールアンテナを使い、GD0/N2ATTで交信した」結果、JANETとJAIGにチェックインし、JAを含めた25局と交信できた。「ロケーションは最高でした」と荒川さんはいう。

マン島のホテルからGD0/N2ATTで運用する荒川さん

[グラスゴー/エジンバラ] 

8月初めにはDXCCでは別カントリーでもあるスコットランドのグラスゴーとエジンバラに出かけている。144MHzのポータブルで、エジンバラ郊外居住の村上 満(GMφNJP)さんと交信しながらシャックに誘導してもらい「家族の方々と楽しいひと時を過ごした。これで、英国在住のアクティブな日本人ハム全員とお会いしたことになる」とほっとしている。

11月には「北ウェールズ・ラジオ・電子機器展示会」と呼ばれるラリー(フリーマーケット)やWARSのミーティング、12月には有名な古本屋の町ヘイオンワイへ奥さんと出かけている。クリスマスには職場のパーティがあり、また近くの家庭に招待され、正月にはその人たちを招待するなど1991年から翌年にかけてもあわただしく過ぎている。

年が明けた1992年、荒川さんは日本ではあまりない体験をしている。一つは電磁気を発見した「ミシェール・ファラディ」のセミナーである。1月にリバプールで行われたセミナーに出席した荒川さんは、このセミナーが1924年以来、IEE(電気技術研究所)が始めたことを知る。毎年、企業や学校が主催してのものであるが、各地を巡回して行われている。

日本でもこの種の学会レベルのセミナーは毎年開かれているが、演劇やコンサートのように全国を巡回するようなことはまずない。荒川さんの出席した時の会場は劇場であり「若い学生を含めて500人程度で満席だった」と言う。

もう一つは2月に行われたWRASのミーティングであった。「参加者が2組に分かれて会長が出題するクイズを楽しんでいた」と言う。机の上のボタンを押し、早く押した組みが答える仕組みであり「問題はもちろん無線や電気通信に関するものではあるが、毎年1回はこのようなゲームが計画されているらしい」と荒川さんは感心している。日本ではアマチュア無線クラブのミーティングで、このように楽しい企画を組んでいるところはあまりなさそうだ。

「ファラデー・セミナー」の一こま