[ビンテージ探索] 

荒川さんのビンテージ(骨董品)熱は英国に来てからますます高まってきた。もちろん、その中心はラジオなどの無線通信機器、電子製品であるが、米国に比べるとはるかに歴史の長い英国だけに、古いものを大事にする風土が育っており、見学するだけでも楽しいらしい。6月にはレクサム郊外のプラッシーで開かれた「ビンテージマシナリーショウ」で、汎用蒸気機関、乗用車、バイク、軍用車を見学。「レクサムアマチュア無線クラブが特別局を設けたり、道案内をしていた」と言う。

レクサムのビンテージマシナリーショウに出品された蒸気機関自動

7月にはチェスター市のスティーブ・ハリスさんの「私設ラジオ博物館」を訪ねている。「鉱石セットからのラジオの歴史、昔のラジオ店の店頭、戦時中の防空壕でのラジオ受信風景、戦場での軍事通信など興味深い内容」と感心している。北ウェールズのデンビー市長デーブ・ジョーンズさんに招待され、ラジオのコレクションを見ている。「放送局BBCにも勤めたこともある方で、暇をみつけては修理・整備をしている」などの話しを聞いている。

英国住まいが長くなると、海外からハム仲間の来訪も増え出した。京都から郷原夫妻、オーストラリアからビル(VK4LC)夫妻が訪ねてきた。1週間後には香港で知り合ったドレークさん(VS6EK)が、やはりオーストラリアから訪ねてきたため、元香港のハムで英国に住んでいるデニス(VS6EN)さんに連絡すると、駆けつけてきて「タイゾウお前はまだ背が低いな」と冗談を言いながら握手を求めた。

オーストラリアから訪ねてきてくれたex.VS6EKドレークさん(右)と中部イングランドから駆けつけたex.VS6ENデニスさん(左)

[島巡り] 

夏の休暇。荒川さん夫妻はアテネとエーゲ海のミコノス島、ロードス島の旅行に出かけた。日本旅行の団体ツアー「神々のアテネと紺碧のエーゲ海」に加わっての旅であった。「電波の伝播状態の良くない時期だけに欧州とのQSOが中心となった」と残念そうだった。先に紹介したIOTAの推奨周波数では「北米からのコールもありパイル・アップになった」と言う。

ロードス島では144MHzで連絡の取れたマイク(SV5DDS)さんがホテルに迎えに来てくれた。近くの丘から「144MHzのモービル局の運用をしてみせてくれたが、クレタ島やイスラエルのレピーターにつながることを知らされた」と言う。ちなみに荒川さんは10月にはロンドン郊外で開かれた恒例のRSGB HF&IOTAコンベンションに参加している。

ロードス島(SV5)で訪問したSV5DDSマイクさん(左)のシャックで

新しい年、1995年は無線電波が初めて飛んでから100年目に当たる。ロンドンで正月行事を楽しんだ荒川さんは1月14日にRSGBの新会長クリブ(GW4YKL)さんの就任式に参加。3月にはJAIGの第11回ミーティングに参加するため、旧東ドイツを訪ねる。「西ドイツを訪問した1983年ころは東ドイツへの旅行などは考えられなかった」と荒川さんは感慨深げである。

[再びビンテージ] 

5月にはバーミンガムで開かれたNVCF(ナショナル・ビンテージ・コミュニケーション・フェア)に出掛け、その主催者であったジョナサン・ヒルさんのイングランド・バンプトンの自宅博物館を6月に訪ねる。「バンプトンミュージアム」の看板を掲げ、ラジオと電話機の展示が大半を占めていた」と言う。

その後、レクサム郊外で開かれた恒例の「スチームおよびビンテージマシナリーショウ」に参加し、レクサムアマチュア無線クラブの特別局で運用を手伝う。荒川さんは手に入れたバーチカルアンテナの実験をしたが「結果は期待したほどではないものの3.5MHzから28MHzまでカバーする点では貴重であり、今後の移動運用に使う」ことを決めている。

同じ6月にはロンドン郊外のビンテージ・ワイヤレス・ミュージアムで開かれた「英国ビンテージ・ワイヤレス協会」のガーデンパーティに参加。翌日には、ハーペンデンのオークションに出かけ、さらに1周間後にはコスフォード空軍基地のオープンデーに行き、隣接の航空宇宙博物館を見学。「第2次大戦時の連合国側の戦闘機と並んで日本の戦闘機3機が展示されていた」と言う。

[ラジオ100年] 

秋9月3日、テルフォードで開かれたハム・ラリーに出かけた。ウェールズの各無線クラブが協力してスタンドを設け、RSGBも専用スタンドで会員サービス、書籍販売を実施。5日から3日間、ロンドンのIEE本部で「ラジオ100年記念国際コンファレンス」が開かれ、関連機器の展示が行われるとともに数々の講義もあった。日本の若井登さん(東海大学教授)も講義を受け持ち、国際色豊かなものとなった。

8日からの3日間、ロンドン郊外ウインザーでのRSGB HFコンベンションに参加し、3人の日本人ハムと会っている。「日本のハムフェアでは恒例となっているDXCCのQSLカードチェックサービスが初めて実施された」とレポートしている。

ラジオ100年にちなんで、荒川さんは北ウェールズにあるマルコーニの初期送信所跡についても、日本の雑誌に報告している。荒川さんが訪ねた時には地元のスポーツクラブに変っていたが、受付で「数年前までに無線機の残がいがあった」と聞いている。「1918年、ここからの信号がオーストラリアのニューサウス・ウェールズで受信されたそうだ」と荒川さんは感慨深げである。

残っている史蹟は、建物2階の入り口の「マルコーニクラブ」と記した石の文字、敷地内に残っているアンテナの基台程度。「現在では、地元のハムクラブがマルコーニの記念日に無線機を持ち込んで運用している」と、伝統が引き継がれていることに荒川さんはほっとしたと言う。

ギリシャはアテネのホテルで運用するSV1/GW0RTA/P荒川さん