[帰国] 

平成10年(1998年)5月、荒川さんは帰国してほどなく定年を迎えた。東南アジアへの駐在、米国への出向、さらに英国への出向と続き約20年の海外生活だった。定年を迎えたが、会社は海外での貴重な体験を社内に"移植"してもらうため、荒川さんは帰国後定年までの半年間「商品信頼性本部・品質戦略室」に勤め、定年後は「人材開発センター」の講師となる。

講師を4年間勤めるが、その間荒川さんはJSQC(日本品質管理学会)のメンバーとなるとともに、ISO9000、ISO14000の審査員に登録される。また、AOTS(海外技術者研修協会)の講師となりOVTA(海外職業訓練協会)に登録。AOTS、OVTAは内容が異なるが国内企業の海外技術者、海外企業の技術者支援を行うという点では似ている。

さらに、荒川さんはTQM(総合品質経営)セミナー、QCサークル研修、ISO9000・2000の研修を受講する。60歳を過ぎても荒川さんの勉学熱は衰えることが無く、その成果はJSQC関西支部での研究発表、品質管理の雑誌「クオリティマネジメント」に掲載された。また、関西大学工学部非常勤講師への道が開け、現在でもその仕事が続いている。

[地元の無線連絡協議会] 

一方、当然のことながら荒川さんはアマチュア無線活動も始める。英国への出向前に所属していた「国際交流センターラジオクラブ」のメンバーとなるとともに、荒川さんが英国滞在時代に発足した地元の「河内長野無線連絡協議会」に加わる。この「無線連絡協議会」は月例会を開くとともに、年1回の河内長野市シティマラソンの連絡網の役割も果たしている。

メンバーがマラソンコースに立ち、けがなどの緊急時の連絡に対処するものである。また、秋に開かれる文化祭には「アマチュア無線展」を開催したが、荒川さんはそれまで収集したアンテークのラジオや無線機、音響商品を出品した。来場者にとっては初めて見る商品がほとんどのため「好評だった」と言う。

河内長野市のアマチュア無線展に出品した蓄音機

[IOTAブース] 

平成12年(2000年)4月にはJAIGの年次ミーティングを湘南国際村で開催、ドイツから壱岐さんら20名のハムとその家族を迎え、数年ぶりにメンバーと再開。「日本で1度開催しよう、という意見が出て、初めての日本開催だった。その後ドイツからの一行は関西に来られ、京都、奈良、大阪を案内して楽しいひと時を過ごした」と荒川さん。6月には河内長野ハムネットの行事に参加して、サイパン島に出かけN2ATT/KHOのコールで交信。

ドイツからJAIGメンバーを迎えて、大阪国際交流センターでの懇親会

同じ6月には久しぶりにJARL関西地方本部主催の「関西ハムフェスティバル」に参加。IOTAのブースを出すことを計画、メンバーに相談して出展した。荒川さんはIOTAのディレクトリーを日本語に翻訳したこともあり「どうしても日本に紹介したかった」らしい。

日本国内のアマチュア無線のイベントでIOTAのブースが出現したのは初めてであった。IOTAが対象としている島や島のグループは「世界で1000数百。うち日本のエリアには26あり、全体の2%を占める。日本のハムももっと関心をもって欲しい」というのが荒川さんの思いでもある。会場ではJA9IFF/1中嶋さんがチェックポイントを設けQSLカードのチェックも行っている。

関ハムでのIOTAブース。左からJA9IFF/1中嶋さん、JA3AER荒川さん、JI3DST舟木さん

[ラジオスカウティング] 

7月には岡山県倉敷市で開かれたJAG(ジャパン・アワードハンターズ・グループ)の全国総会に参加。荒川さんにとっては初めての参加であった。8月には大阪の「807の会」に出席した後、横浜で開かれたJARL主催のハムフェアに参加。会場にはIOTAのほかJANET/JAIGのブースを出したが、久しぶりのハムフェフで「多くの方にお会い出来た」と楽しそうだ。

11月初めには勤務が続いている会社の出張で久しぶりにマレーシアに出かけたが、ペナン在住の河野(9M2KE)さんのシャックからゲストオペとして、9M2KEのコールサインで交信。中旬にはタイ国バンコック郊外のパタヤで開かれたSEANETコンベンションに参加して記念局のE27SEAを運用。12月には「南河内ヘンテナ同好会」主催のアンテナ製作講習会を見学。

[日本でも多忙] 

翌平成13年(2001年)は1月早々から東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開かれた「ラジオスカウティングイン東京」にオブザーバーとして参加。この催しは世界のボーイスカウトがアマチュア無線により交流を深めることを目的としたイベント。

ボーイスカウトによるアマチュア無線交信は、ボーイスカウトの行事のたびに行われるなど比較的活発であるが、荒川さんにとっては英国時代にガールスカウトのアマチュア無線運用を盛んに支援したこともあり「このイベントに参加してみたかった」と言う。

1月は大阪でも大阪国際交流センターのラジオクラブの新年会があったり、地元のアマチュア無線関連の行事に参加したり、日本での荒川さんは米国や英国時代同様に多忙なハム生活を送っている。ただ、長い間留守にしていただけに、初めて参加するイベントもあり、そこで海外から交信した仲間に会えることがうれしかったようだ。

N2ATT/KH0のQSLカード