[日本と海外] 

これまで荒川さんの歩いた海外や国内でのアマチュア無線の世界を紹介してきた。アマチュア無線が"仕事"のような活動振りを伝えたいために、こまごまとしたことまで書いてきた。荒川さんが東南アジアの様子を日本に伝えたころは、日本では海外の様子がはっきりとわからず、興味をもって雑誌に載ったレポートが読まれたはずである。

それから約40年、世界は狭くなり日本からも大勢のハムが海外に出掛け、また、海外からも多くのハムがやってくる時代となった。しかし、それでも荒川さんの歩いてきた道は他のハムにはない道であった。地元に溶け込み、一緒になって活動してきたからである。その荒川さんに日本と海外とのアマチュア無線との違いを聞いてみた。

ロンドンのIEEE本部にあるファラデーの銅像

荒川さんが現在でも加入しているアマチュア無線の団体は18である。加えて、現在は退会しているが居住した地域のクラブが10近くあったもようである。なぜ、これほどまでに関わりあったのか。荒川さんは「探求心もあったし、団体に加入してその国のハムと同じ目線で活動したかったため」と言う。また、地域のクラブの場合は「メンバーのやさしさであり、異国人としていっさい差別をしない活動に感激した」ためでもある。

荒川さんが加入している会員のリスト

[インターナショナル性] 

欧米のアマチュア無線団体とかクラブは日本とどう違うのか。荒川さんは「基本的には大きな差はない」といいながらも「海外ではインターナショナルな活動が目立つ」と言う。日本に比較してアマチュア無線のスタートが早かったこともあるが「米国や英国は世界共通言語である英語を駆使して、組織づくりをし、したがって機関紙も他国でも良く読まれている」という。

米国のARRLは会員であれば「特別に申請しなくとも機関誌のQSTを海外にまで送ってくれる」という。あたかも世界中が自分のテレトリーと考えているようだ。また、英国のハムも「世界の7つの海は大英帝国時代から自分達のものという気概をもって、無人島などに気軽に出かけている」と、日本との差を解説する。またアマチュア無線の国の制度でも「包括免許制に代表されるように諸手続きが簡便である」と指摘するが、その点についてはこれまでの連載で紹介してきた。

[地域社会とつながるクラブ] 

地域のクラブについては「日本と同様にメンバーの高齢化が進んでいる」と指摘する。ただし「クラブの数が多く、活動は熱心」と言う。「日本ではクラブは親睦的な色彩が強いが、欧米ではクラブの目的がはっきりしているため、熱心に討議する」ことについてもこれまでにいくつかの例を紹介してきた。

その理由の一つとして「クラブの集りにフリーマーケットを併設するなどビジネスにつながっている面があるため」とも指摘する。また、地域社会と結びつき、地域に貢献する活動も盛んである。「地域の催しにはハンディ機をもって積極的に協力している。非常通信に対しては日頃から訓練しており、それがハムの使命であるとの心構えが浸透している。そのため日本と比較すると社会もアマチュア無線を知っており、その活動を認めている」とも分析する。

英国ワイト島の西端にあるニードル半島が見える高台。マルコーニの最初の無線通信所が置かれた地点

[押しつけは反対] 

今後の日本のアマチュア無線はどうあるべきか。荒川さんは「やはりハムの数は増えて欲しい」と言う。ただ「無理に増やす必要はない。作為的に増やそうとした場合、一人のハムを生み出す努力、労力は大変なもの。アマチュア無線は楽しく、格好のよいものであるところを見せて、自分もそうなりたいと勉強してくれることに期待したい」という考えである。

そのため「子供たちに面白さを伝え、興味をもってもらう東京のハムフェアや関西で行われている関ハム、さらに地方でも開かれているイベントは大事な役割を果たしている。アマチュア無線は趣味の一つであり、自分が楽しければよいのかもしれない。が同時に楽しい趣味を子供たちに知ってもらうのも大切なこと」と言う。

多方面で活動してきた荒川さんであるが「今後はアマチュア無線とアマチュア無線の切手のコレクションと、アマチュア無線に絞っての活動を続け、時間的な余裕を見つけてアンティークラジオのコレクションの整理もしたい」と抱負を語る。連載の最後に、荒川さんが現在メンバーとなっている国内外のアマチュア無線団体のリストを記しておく。

米国マサチューセッツ州のケープコッドにはマルコーニの無線通信所があった