毎回の「ラジオ組み立て教室」では「子供たちが熱心に組み立てに取り組み、完成したラジオが音声を出すのを感激して聞く、喜びの姿を見るのが楽しい」と、長谷川さんはいう。約40年前の自分の姿が思い出されるからであろう。ところが、子供と一緒に来られたお母さんの会話でしばしばその思いは壊わされてしまう。次のような対話が交わされるのが常だからである。

母 親:     「ありがとうございました。それで、組み立てたキットはいくら位するものでしょうか。」
長谷川:     「1500円ですよ。」
母 親:     「そうですか。この間、もっと性能の良いラジオが900円程度で売ってました。」
長谷川:     「そうなんですよ。キットの方が高いのですよ。でも、お子さんは楽しそうに組み立てていましたし、何よりもこれがきっかけとなって科学する心がめばえますから。」
母 親:     「はあ、そうですか。」と、目的を理解されていない母親が多い。

昭和30年代前半までにハムになった人はほとんどが、自作の送受信機を使用して交信した経験を持つ。この世代までのハムの中には、交信よりも自作することに喜びを感じていた人も多かった。そして、その中の多くの人達がその後、日本のエレクトロニクス産業を支える技術者になった。『ラジオ組み立て教室』は、その喜びを知り電気や電波に興味を持ってもらおう、との狙いがある。そのため、この教室では同時に電波についての楽しい話なども紹介される。

今年(2001年)の「関西ハムの祭典」でもラジオ組み立て教室が開かれた。

一方、長谷川さんの海外への支援では先に触れた中国に次いでスリランカへの無線機プレゼントがある。長谷川さんら関西のハムの有志は今年(2001年)6月初旬から中旬にかけて、同国を訪問しアイコム(株)のHFオールバンド+50MHz+144MHzトランシーバーIC-746を寄贈した。この通信機はコロンボのマディワラ・ロード・タラワッゴタに「ランカ・ケビィテボラ・ジャパン」局と名づけられて設置された。長谷川さんらは、日本を立つ前から同国での免許を申請していたこともあり、11名に対しその日の内に免許がおり、現地で3日間国内外との交信を行なった。これらの活動は参加有志の負担で行なわれているが、長谷川さんは「できれば今後もこのような催しを拡大していきたい」という。

スリランカでのDXペディションでは、団体のQSLカードを作った。

OVERREVのホームページには自社の案内、営業関連のコンテンツと並んで、三宅島の子供たちのための「三宅島応援団」の紹介がある。愛知県一宮市でアマチュア無線用アンテナを製造・販売している愛知タワーの堀部謙次社長が事務局長を務めるボランティア団体の活動「いちまいのはがき」運動に協賛したものである。長谷川さんは若いハムが困っていると手を差し延べることも多い。「これからのアマチュア無線を発展させるのは若者だから」という思いからである。