最盛時には、約137万局あったアマチュア無線局の数は現在110万局にまで減少している。最大の原因は携帯電話の普及や趣味の多様化である。かって「キング・オブ・ホビー(趣味の王様)」と呼ばれていたアマチュア無線はどうなるのか。JARLを初め各地のハムの関心事である。長谷川さんもアマチュア無線の将来を真剣に心配している人の一人である。その長谷川さんが普及を狙っているのが「電子QSLシステム」である。昨年(2000年)10月にKDCF(関西デジタル通信フォーラム)が実験を開始、今年の7月には新バージョンへと切りかえられた。

KDFCが提唱している「電子QSLシステム」の概念図。

QSLカードは交信を交わした人がそれを証明するため、交信した人に渡すものであり、直接郵送したり、また、各国の関係機関が仲介してまとめて交信相手に送ったり、交信相手から届いたカードをまとめて送ってくれる。このため、各国にはQSLビューローがあり、日本ではJARL(日本アマチュア無線連盟)がその役割を果たしている。

長谷川さんらが組織したKDCFはQSLカードを電子化し、インターネットを通じてパソコン上でやり取りしようというものである。この機能を利用するためには、TurboHAMLOG/Win(ハムログ)と、電子QSLサーバ接続ソフト QSObank.EXEが必要となる。ただし、ハムログのバージョン4.48以上をインストールすると、接続ソフトも同時にインストールされる。

もう少し細かく機能を紹介すると、①交信相手の電子QSLカードをハムログ画面で一括して受信して管理できる、②交信相手に発行する電子QSLカードへの記載内容(コールサイン、メールアドレス、交信データ、所在地など)はハムログで細かく設定可能、③交信中に相手局の電子カードを画面表示できる。また、カードのデザインはあらかじめ内蔵しているデザインやオリジナルデザインを合わせて最大20種類まで登録でき、その中から指定して使用可能。作成したカードは、交信した何局分でも一括して電子QSOサーバに送信する。サーバでは、交信相手のデータと照合し、一致分のみのリストが一覧表示され、画面選択によりカードが送られてくる仕組み。

必要分はプリントアウトができ、また、リストは交信記録として記録させておくことができる。当面、このシステムへの登録者5000人を目標にあらゆる機会にPRしている。長谷川さんは「カードの手書き、郵送する手間が不要となり、また、交信相手同士のデータが照合されるため信頼度も高まる。積極的に普及させていきたい。」という。また、世界的なシステムとするため、海外にもシステムの特許申請を始めた。

長谷川さんは「アマチュア無線の発展のためには、新しい技術を待つ必要はない。今ある技術を活用して新しいことをやろう」という。「ヨットを持ちたいという夢を語りながら、ついに60才を越してしまったという人も少なくない。賢い奥さんは、冷蔵庫にあるものを活用しておいしい食事を作り出す。わざわざ、食材を買いに行かなくても工夫次第」と例えを語る。長谷川さんは、スリランカに行った折に、願望していた「2001年宇宙の旅」の作者であるアーサー・クラークさんに会っている。クラークさんは「近い将来の予測は難しくない。今ある情報を丹念に集めれば将来は見えてくる」という言葉に感激し、一段と今の技術、情報を大事にするようになった。

アーサー・クラークさんを訪問した長谷川さん(左)

「アマチュア無線をやっている人には賢い人が多い。必ず、何らかの活性策が生まれてくる」と強調する。