[大型アンテナ自作のノウハウ]

円間さんは電波伝播性能の上でアンテナの役割をきわめて重視する。市販のアンテナを使わず自作にこだわり、しかも台風による被害を受けても何度も自作に挑戦する。それだけに、自作アンテナについてはいくら語っても語りきれないノウハウをもつ。これまで製作してきた大型アンテナについて、円間さんに課題とその解決方法を聞かせてもらった。

まず、一般的に正三角形型が使用されているブームにあえて直角三角形型を使用したことについて「鉄塔のマストにマストクランパを介して強固に取り付けられる」「エレメントを2本のブームに2点支持で水平に取り付けられる」「エレメントの垂れ防止用の垂直小柱が取り付けられる」「一辺が直角のため歪を少なく組立てできる」と利点を指摘する。

ブームの組立てでも2人で出来るように工夫をしている。その段取は(1)2本の底部用のパイプを地面に置き、連結金具で梯子状にする(2)上部になるパイプを金具を介して取り付けて直角三角形にする(3)エレメント垂れ防止用の垂直小柱をエレメントの取り付け位置のブームにUボルトで取り付ける、という方法である。

[地上ですべて組み立て]

アンテナのマストへの取りつけについては、前にも触れたが、アンテナマストを鉄塔側マストに1.5mほど挿入するようにしている。これは取りつけが簡単にできるようにするためである。実際の取りつけについても効率の良い方法を編み出している。まず、地面に穴を堀り、アンテナマストを埋めておいて、そこにブームとエレメントを取り付ける。

次いで、ブームとエレメントのゆるみ防止用のロープを張って形状を整えれば地上の作業は完了する。アンテナの取り付けはマストの先端にロープをかけてクレーンで吊り上げ、アンテナマストの下部を鉄塔マストの上部に差し込み、2本のマスト貫通ボルトで固定する。円間さんは「アンテナの全てを地上で組立て、鉄塔上の作業をほとんどなくしたこの方法は実に役立つものだった」と満足している。

さらに、円間さんは完成後の強風対策にも触れる。「エレメントの上下に対する揺れ防止、水平面の前後に対する揺れ防止に、いずれもロープを使用しました」という。一方、強風によりおきるアンテナとローテーター間のスリップについては「その都度、鉄塔に登り補正していたがそれが煩わしいため、強風でも回転しないようにロープで近くの電柱に固定したが、アンテナの横ぶれから激しい上下動に変化したためローテーターの上部カバーを破損してしまい、次ぎからはやめた」と、強風との戦いの苦労を語る。

地上での八木・宇田アンテナの組み立て。魚眼レンズで撮影した

[年間DXCCレースでトップ賞]

完成した7MHz・4素子のフルサイズ、モノバンドの八木・宇田アンテナは北陸では珍しい物であった。このため、たくさんの仲間が注目していた。「自作といううぬぼれを差し引いても実に良く飛んでくれた」と円間さんは強調する。DXが聞こえだした折りに、その周波数で国内の局同士が交信中であっても、国内局にほとんど迷惑をかけることなく、DX局と「頭ごし」に交信できることを体験している。

アンテナが出来上がったころ、円間さんは「CQ ham radio」で「年間DXCCレース」が行われるのを知る。期間は平成8年(1996年)の1月1日から12月31日までの1年間。アンテナの性能テストには絶好の機会と判断し参加を決める。円間さんは「交信目標はやや多めの250エンティティとし、CWを重点に早朝に欧州、アフリカ方面、週末の夕方から北米、南米、オセアニア方面との交信に徹した」と言う。

情報源にはいくつかのDXニュースを利用、出力も1kWに増力。QSOカードは国際ビューロー経由にせずにSASE(返信用封筒に返信料とQSLカードを同封する)を多くし、依頼文も付けた。「国内局は100%応えていただけたが、海外局は半数しかかなえてもらえず、さらに書留でも返信の無い局があり苦労した」と、当時を語る。

結局、円間さんは全40ゾーンと240エンティティと交信し、38ゾーンと227エンティテイのQSLカードが確認された。この時、コンピュータ・ログを使用したが「重複を避け、集計、検索などで便利だった」また「DXネットにチェックインしたことから珍局を紹介してもらった}と言う。成績は7MHz部門でトップとなったが、この227エンティテイ数は、マルチ部門のトップをも上回る快挙であった。

円間さんは「1年間で240エンティティと交信できたのは“低い打ち上げ角度と指向性”が発揮できる良きロケーションと良きアンテナによるものだと思っている」と語る。立地探しに苦労し、材料探しに時間を費やし、強風被害にもめげずに自作を続けた成果だけに「喜びは大きい」という。これらの一連のアンテナ自作、取り付けには福田隆永(JA9JA)さん、高橋一彌(JA9FR)さん、高本利一(JA9KU)さん、前川公男(JA9BOH)さんらが支援した。「皆さんに感謝している」円間さんの言葉である。

年間DXCCレースでの優勝盾

同レース優勝を記念して制作したQSLカード

同レースで交信した227エンティティ