[遠方にも遠征]

近場である近畿や東海の駅が埋まってくると、次第に遠方に足を伸ばすようになるが、どうしても自家用車で自走していけない道の駅がある。北海道と沖縄、それに離島にある駅である。まず北海道は、青森まで自走して青函連絡船に乗って函館に渡った。しかし1回の遠征では、北海道のすべての駅を回りきれないため、柳原さんは、これまでにもう6回も北海道遠征を行っている。

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北海道の道の駅の各スタンプ。(クリックで拡大)

次に沖縄であるが、1回目の遠征は、神戸からフェリーに乗って自家用車で渡った。フェリーへの乗船代は往復で16万円かかったが、飛行機で飛んでレンタカーを借り、ホテルに泊まれば同じくらいの費用はかかると考えたからだ。さらに、レンタカーだとバッテリーからの電源をうまく車内に引き込めるかどうか、車を借りてみなければ分からないという不安もあった。そのため、自分の車で行くことを決断した。しかしいざ沖縄に行ってみたところ、いくらでも安宿があることを知り、2回目の沖縄遠征では飛行機で飛んでレンタカーを借りて回ったという。

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自家用車で沖縄遠征中にJS6EOG渡嘉敷さんとアイボールQSO。

[車中泊]

柳原さんは、遠征を始めた頃、3晩に1回くらいはホテルに泊まっていた。理由は、洗濯物がたまるからである。そのため、ホテルに泊まったときにまとめて洗濯を行っていた。さらに、その頃は、千鶴子夫人(ex JA9EGZ、JH3AGR)も同行していたため、毎晩車中泊では申し訳ないと考えたことも理由であった。しかし、その後は千鶴子夫人が同行しなくなり、柳原さん1人で遠征に行くようになった。洗濯もコインランドリーで対応するようになり、今では全日程車中泊を行っている。

コインラインドリーは、電波でローカル局に尋ねたり、持参するノートパソコンをインターネットに接続し、検索して見つけている。しかし、コインランドリーを利用している時間が惜しいので、必ず昼食と平行してコインランドリーで洗濯を行い、時間の無駄を極力抑えている。

[鉢合わせ]

柳原さんが移動運用を始めた2004年当時は、まだ道の駅から運用する局は少なかったが、次第に人気が高まって、土日などには、駅で他局と鉢合わせするケースも起こってきた。柳原さんは、「基本的に、先に車を停めてアンテナを張った人に優先権がある」と言うように、道の駅に到着した際にすでに他局が運用している場合は、その局が運用を終えて帰るのを待つか、近所の駅を先に済ませまた戻ってくるという。

到着時間が遅い場合は、その日は運用を行わずに宿泊だけして、翌朝に運用するようにしている。泊まり込みで運用する局はほとんどいないので、次の朝には必ず運用する時間があるという。また、泊まる局はたいがい知り合いなので、その場合は話し合いで時間調整もする。そのため、「鉢合わせによるトラブルはこれまでに一度もありません」と話す。

[アンテナの条件]

道の駅からの運用者が増えるにつれて、マナーの悪い運用者も現れるようになった。道の駅では、自分の駐車スペース内なら、宿泊しても良いし、食事をしても良いし、アンテナを展開しても問題はない。しかし、駐車スペースからはみ出してワイヤーアンテナを展開する、キャンピングテーブルなどを車外に持ち出して駐車スペース外で食事を行う、さらには、自動販売機用のコンセントから盗電する運用者もおり、他の利用者や道の駅に迷惑がかかるケースが出てきた。「マナーを守って運用して欲しい」と柳原さんは言う。

ワイヤーアンテナを使った場合は、支柱こそ駐車スペース内に立てられるが、ワイヤーの先端はどうしても枠からはみ出してしまう。駅の柵を使うこともダメ。柵は国の施設でガードレールと同じ扱いになるため、個人的に使うことは許可されない。柳原さんは、北陸3県を回っていた頃からよく調べており、道の駅での固定アンテナの設置は無理だと判断し、アンテナが駐車枠から一切はみ出さないよう、すべてホイップアンテナでの運用を行っている。そのため、柳原さんは、「これまでに注意されたことは一度もありません」と話す。

[ロングホイップ]

現在使用しているのは、グラスファイバーの釣り竿を使用した3.5/7M用の全長5mのロングホイップアンテナで、ルーフキャリアにセットしている自作の金具を使い、わずか2分でアンテナを設置できる。金具を起こして振り出した竿を突っ込み、同軸をつなぐだけの構造である。3.5Mと7Mの切り替えは、ローディグコイルのタップ位置の切り替えで対応しているが、これもワンタッチでできるように工夫してある。

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3.5Mと7Mが切り替えられる自作のローディングコイル。

「パソコンを立ち上げる時間を入れても、駅に着いて5分もあったら波が出せます」「今のアンテナに落ち着くまで4、5回はアンテナを作り替えました。できるだけずぼらできるように考えました。」「アンテナの設置や撤収に時間がかかると、雨の時に困ります。今のアンテナなら、少々雨が降っても、すぐに立てられるのでなんとかいけます」と柳原さんは話す。

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システムキャリアに取り付けた自作の可倒金具。

1.9MHzを運用する際は、塩ビのパイプを継ぎ足し全長10mにしてマッチングできるようにしてある。もちろん、1.9MHzへのバンドチェンジも独自の設計で、1分足らずで完了できる。このように、アンテナの設置時間をできる限り短くすることで、短時間の滞在で効率よく運用ができるように工夫してある。それでも、バンドチェンジのためには一旦車外に出る必要があり、雨の日はやはり大変なため、トラップ式の3バンドアンテナへの変更を考えているという。

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1.9MHz用の10m長ロングホイップで運用中。(JARL岡山総会へ参加)

また、駅から駅への移動中は、市販のモービルホイップを使って、バンドワッチを行い、コンディションのチェックや、目的の駅に運用者がいないか、さらには空き周波数の確認まで行い、駅に着いたらすぐにロングホイップを設置し、最短時間で波を出せるようにしている。

1つの駅に滞在する時間は、アンテナの設置撤収、スタンプの押印、写真の撮影、コーヒーを1杯飲む時間を入れて、平均1時間半程度。そのため、実質運用時間は、1時間くらい。このパターンで、1日複数の駅から運用を行っている。