[新駅での運用]

柳原さんは、2007年にパーフェクトを達成した際の、「パパスランドさっつる」駅をはじめ、新駅オープンの日に何度か移動したことがある。オープンの日の運用にはコツがあるという。というのは、新駅オープンの日には必ずセレモニーがある。そのため、セレモニー中は関係者以外入場できないことが多い。たとえば、午前中に新駅に到着しても「セレモニー中なので、一般車両は午後からしか入場できません」と断られてしまうケースがある。

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オープン間もない石川県の「内灘サンセットパーク」駅で運用中。

柳原さんも何度か入場を断られたことがあり、ある方法を考えた。それは、関係者よりも早く入ってしまうことである。2006年5月、兵庫県丹波市の新駅「丹波おばあちゃんの里」駅のオープンの日、柳原さんは朝5時に現地に到着し、関係者より早く入場した。早々に運用を開始し、セレモニーが始まる前にはすでに運用を完了していた。

道の駅から移動運用を行っているのは柳原さんだけでなく多数いるので、セレモニー中に全国から何局も運用しにやってきたが、予想どおり駅には入れてもらえなかった。すでに運用を終わっている柳原さんは、駅がオープンしてからゆっくりとスタンプを押して、退出した。

[追っかけ]

道の駅アワードは、柳原さんのように自局が移動して駅を回る部門の他に、自宅などから全国の道の駅から運用する局と交信してアワード規定を達成する部門がある。どちらかというと後者の方が圧倒的に参加局が多い。それ故、柳原さんらが、道の駅から電波を出すと、全国からパイルアップになるのである。それら、追いかける側ももちろん全国パーフェクトがあって、上位は激しい競争になっている。

追いかける側の全国パーフェクトがかかっている局は、新駅と交信したら一刻も早くQSLカードが欲しい。そのため、QSLカードは通常のJARLビューロー経由ではなく、それらの局はダイレクトでQSLを請求してくる。中には、返信用封筒に速達分の切手を貼って請求してくる局もいるという。さらには、新駅と交信する以前に、先に、柳原さんにQSL送付用封筒を送ってきて、「交信後は直ちにQSLを発行して欲しいと頼んでくるマニアも居ます」と話す。それらマニアは、新駅がオープンすれば、必ず柳原さんが移動運用に行くことが分かっているからである。

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沖縄県の道の駅の各スタンプ。(クリックで拡大)

[ライバル]

移動部門でパーフェクトを達成したのは柳原さんが全国初であるが、柳原さんの後にもうひとりパーフェクトを達成している。吹田市のJM3CSR澤田さんである。澤田さんは柳原さんより1歳年上で、リタイアした後に移動運用を楽しんでいる。もちろん、澤田さんも新駅には必ず行くため、柳原さんはときどき鉢合わせになるという。基本的には先に駅に到着した方に優先権はあるが、知り合いなので、お互いに譲り合って運用している。「おそらく、現在は澤田さんがトップだと思いますが、パーフェクトではないので、復活パーフェクトは私が先に達成したいと考えています」と柳原さんは抱負を話す。

[パソコン]

柳原さんは、ログの記載にパソコンを使用し、ハムログに入力している。手書きの紙ログでは、QSO記録の整理や、QSLカードの発行が大変だからである。パソコンの電源は、車のバッテリーから取っているが、パソコンの入力電圧の仕様が12Vなので、直接接続している。「ノートパソコンは19Vで動く機種が多いですが、最近は12V動作の機種もあり、これは直接つなげて都合が良く助かっています」と話す。

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12V仕様のパソコンを使って運用中の柳原さん。

さらに柳原さんは、モバイル用のネットワーク接続カードを使って出先からインターネットに接続し、様々な情報を取得している。道の駅関係の情報、各局のオンエア情報(クラスター)、天気予報などである。もちろんEメールの受信や出先からの発信も行っている。「道の駅でインターネットにつながらないことはまずありませんが、それでも最近は山の中に新駅ができて、携帯電話もインターネットもつながらず困る事が時々あります」と話す。

「月4000円程度の接続料は高いとは思いません。ちなみにスカイプを使うことも時々ありますが、音が詰まることがあって、光ファイバーが来ている自宅で使うように快適とは言えません。新方式のハイスピード・モバイルが使えるようになると最低4Mbpsぐらいのスピードが出るでしょう。それが実現すれば、HRDを使って、出先から坂井市の固定シャックをリモコン運用できるようになります」と続ける。

[温泉]

道の駅では温泉を併設したところも多くある。温泉そのものが道の駅になったところもある。新潟県岩船郡関川村にある駅「関川」もそのひとつで、「あそこは道の駅と言うよりも温泉そのものです」と柳原さんは話す。柳原さんが、遠征時に宿泊する際は、温泉が併設されている駅か、あるいは温泉が近くにある駅で車中泊することにしている。理由は、寝る前にお風呂に入りたいからだが、遠征先で温泉に入ることも移動運用の楽しみにしている。

最近何年かは、JARL総会への参加に併せて、移動運用の行程を組んでいる。JARL総会は、1年前に開催場所が発表されるので予定が組みやすい。本年2009年は釧路で総会が開催されたが、柳原さんは、総会の1週間前に神戸を出発し、陸路青森まで走り、そこで青函連絡船に乗船して函館に渡り、北海道内の新駅をつぶしてから釧路総会に参加したという。「移動運用の醍醐味はやはりパイルアップを浴びられることです」、「これからも新駅ができれば必ず遠征に行きたいと思います」と話す。